近年は、国内でも様々なイベントでドローンショーが実施されるようになりました。
数多くのドローンが放つ光が織りなす感動的な光景を楽しめるドローンショーですが、その演出や操縦はどのように行われるかはご存知でしょうか。
今回はドローンショーにおける操縦方法や演出方法、使用されるプログラミング言語など、詳しく解説いたします。
ドローンショーをより楽しめる知識がつく記事となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
ドローンショーとは?
ドローンショーとは、上空に100~数千機ものドローンを飛ばして様々な演出を披露するショーのことです。
各機体に搭載されたLEDライトを点灯させて、上空にイラストやロゴなど次々と作り出します。
その光景は打ち上げ花火にも似ていますが、大きな音や煙などは立たないことが特徴です。
環境に優しいだけでなく、音楽との組合せしだいでさらに演出の幅が広がります。
世界で初めて行われたドローンショーは、2013年にロンドンで開催された、映画「スター・トレック」のプレミア上映会です。
以降は世界各国のイベントでドローンショーが実施されるようになり、日本国内でも普及が拡大しています。
以下より、国内でドローンショーが行われた有名なイベントの事例をご紹介いたします。
事例①ポケモンワールドチャンピオンシップス2023
2023年8月11日~14日にかけて、横浜みなとみらいにて開催される「ポケットモンスタースカーレット・バイオレット」などの世界大会に伴いドローンショーが実施されました。
800機のドローンがピカチュウやリザードンなどおなじみのポケモンの他、ホゲータ・ニャオハ・クワッスなど最新のポケモンたちを夜空に描き、大人から子どもまで楽しめる構成になっています。
他にも、ポケモン関連のドローンショーは国内外で複数回開催されています。
ポケモンのドローンショーの詳細は、以下の記事でご紹介していますので併せてご覧ください。
事例②東京ディズニーリゾート・スペシャルドローンショー
2024年7月~10月にかけて全国各地で開催される花火大会にて、東京ディズニーリゾートの魅力を届ける「東京ディズニーリゾート・スペシャルドローンショー」が行われました。
総数1,500機ものドローンを使い、ディズニーのキャラクターや名シーン、新しくオープンしたテーマポート「ファンタジースプリングス」のイメージイラストなどが夜空に描かれ、映画のように多彩な世界観で観客を魅了しました。
東京ディズニーリゾート・スペシャルドローンショーの詳細や口コミなどは、以下の記事でご紹介しています。
事例③東京オリンピック開会式
2020年7月に開催された東京オリンピックの開会式では、総数1,824機ものドローンを使用したドローンショーが実施されました。
東京オリンピックの市松模様エンブレムが地球儀に変化するなど、ダイナミックながら緻密に計算された動きでドローンが織りなす光景は、国内外で大きな話題に。
インテル社が開発した、340gと比較的軽量でありながら優れた性能を持つドローンそのものにも注目が集まりました。
ドローンショーの仕組みを解説
ドローンを用いて夜空にイラストを描くという演出は、どのようにして実現できているのでしょうか。
ここでは、ドローンショーにおける演出の仕組みを解説いたします。
プログラミングで多数のドローンを操縦
ドローンショーではあらかじめプログラミングによりドローンの動きを設定し、多数の機体を一斉に上空へ飛ばせるようにしています。
この「自律飛行」はドローンショーのみならずホビー用・産業用ドローンも対応している機種が多く、操縦者が直接コントローラーで操縦しなくてもドローンを簡単に飛ばすことができる機能です。
使用するプログラミング言語は?
ドローンの自律飛行では、以下のようなプログラミング言語が使われます。
- Python
- C言語
- C++
- Scratch
- Java
- Swift など
特にC言語やC++はドローンにおいて代表的なプログラミング言語で、世界的ドローンメーカー「DJI」の機体にも用いられています。
ドローンの位置を制御する仕組み
ドローンショーでは基本的にプログラミングに沿った動きでドローンが飛行しますが、全自動で精密な演出を実現しるにはプログラミングコントロールしきれない部分が出ています。
機体同士の衝突や動きのズレなどのトラブルを避けるため、GPSによる位置制御・姿勢制御を行うと同時に、本番では人の目による監視も行われます。
機体にLEDライトを搭載して演出
ドローンで夜空にイラストやロゴなどのモチーフを描くには、機体にLEDライトを搭載している必要があります。
シーンに応じて色や光の方向を変えながら飛行させることで、描写のバリエーションが増えるだけでなくCGのように「動く3Dイラスト」を描くことも可能になります。
ショーで使われるドローンの台数
ドローンは1つ1つが小型なため、地上にいる観客にも分かりやすく、印象的な演出を実現するには多数の機体が必要になります。
そのためドローンショーでは少なくとも数百台のドローンが使われており、多いと1,000台を超えることもあります。
なお、世界で最も多くのドローンを使用したドローンショーは中国共産党創立100周年のイベントです。
総数にして5,200台ものドローンが使われており、ギネス世界記録にも認定されています。
ドローンショーで表現できるデザイン
ドローンショーは、使用台数しだいで多様なデザインを表現することができます。
打ち上げ花火でも描かれることが多いキャラクターのイラストや企業などのロゴはもちろん、QRコードや3Dイラストなどの描写も可能です。
表現方法の自由度の高さも、上空を自由自在に飛べるドローンならではの特徴といえます。
ドローンショーでかかる費用
100機程度のドローンでショーをする場合、屋内なら100万円以上、屋外なら500万円以上が相場です。
ドローンショーの実施に必要な費用は、使用するドローンの機種や台数、実施する場所などによって変わります。
費用の内訳としてはアニメーション制作費やリハーサル費、進行管理費、許認可申請費などが含まれています。
ドローンショーで可能な演出
ドローンショーで可能な演出のバリエーションは、企画・制作を担うクリエイター次第で無限大に広がります。
ここでは、実際のドローンショーで行われた画期的な演出の例をご紹介します。
点灯/消灯や点滅による変化の演出
先ほどの事例でもご紹介した、2024年7月から開催された「東京ディズニーリゾート・スペシャルドローンショー」の演出です。
ただイラストを上空に描くだけでなく、ライトの色を絶え間なく変化させたり、点滅させたりすることで各シーンに臨場感や華やかさを与えています。
機体の移動による動きの演出
360°全方位に移動できるドローンなら、上空でキャラクターを形づくりながら動かす「アニメーション」も可能です。
2023年に開催された「STARDANCE in 横浜・八景島シーパラダイス 2023」では、立体的に描かれた「EVA初号機」と「使徒」による戦闘シーンが巨大なアニメーションで再現されています。
光を花火を組み合わせた演出
ドローンショーはしばしば打ち上げ花火と比較されますが、近年は花火を搭載した機体を使い、打ち上げ花火とドローンの魅力を掛け合わせたショーの試みも実施されています。
株式会社レッドクリフは日本初の花火搭載ドローンを使ったテスト飛行を実施しており、燃え盛る翼で上空を飛ぶ巨大な鳥を表現しました。
ドローンショーを実施する流れ
ドローンショーは、企画から実施までに数々のステップ踏みながら準備を進める必要があります。
ドローンショーを実施するまでの基本的な流れは、以下の通りです。
まずはドローンショー制作会社へ問い合わせのうえ、どのようなショーをどの程度の規模で実施したいのかなどの希望を伝えます。
開催場所に問題がなけばアニメーションが制作されると同時に、航空局などから許可を得るための申請手続きも行います。
許可を取得し、リハーサルでアニメーションに不備がないかを確認したらいよいよ本番です。
アニメーション制作や許可申請の結果が出るまでの日数などを考慮すると、少なくとも数ヵ月以上の期間を要すると考えて良いでしょう。
ドローンショーで使用される主な機種
ドローンショーでは、エンターテインメントに適した設計の専用機種が用いられていることもあります。
ここでは、ドローンショーで使用される機種の例をご紹介いたします。
Shooting Star(intel社)
Intel社といえばCPUや半導体を中心とした開発事業のイメージが強いですが、ドローンの開発・製造も行っています。
そのうちの1つである「Shooting Star」は、LEDライトを搭載したドローンショー専用の機種です。
Intel独自のソフトウェアにより、数百~数千台の同時飛行でも精密な制御を可能としています。
先述した東京オリンピック開会式のドローンショーにも使われており、一躍有名となりましたが一般販売はされていません。
unika(ドローンショージャパン)
unikaは、株式会社ドローンショー・ジャパンが独自に開発したドローンショー専用機種です。
「親しみやすくドローンそのものを好きになってもらえること」を目指して設計されており、丸みのあるフォルムが特徴的です。
スタッキングが可能な仕様になっており、機体を積み重ねて設置・撤収作業を効率的に行えます。
TAKE(レッドクリフ)
TAKEは株式会社レッドクリフが販売している、屋外ドローンショー専用機種です。
レッドクリフによる700台規模のドローンショーで実際に使われた実績を持ち、多彩な動きと発光パターンで複雑なアニメーションや立体キャラクターの表現も可能としています。
民間企業・イベント業者・自治体向けに講習付きパッケージで販売されており、導入に際して実際に飛ばすところまでサポートしてもらえます。
EMO(レッドクリフ)
同じく株式会社レッドクリフによる独自開発のドローン専用機種、EMOは2022年開催の「Inter BEE」で初披露されました。
飛行性能・LEDライト・安全性能などすべてにおいて従来機種から進化しており、長時間飛行も可能になっています。
また、予備機を空中で待機させておくことで、一部の機体が離陸できなかった場合も即座に再配置して「ドット抜け」を防止できます。
ドローンショーの仕組みに関するよくある質問
最後に、ドローンショーの仕組みでよくある質問について解説いたします。
ドローンショーが行えない場所は?
ドローンショーは、航空法の規制により以下の場所では実施できません。
- 人口集中地区(DID地区)
- 空港周辺
- 催し物開催場所
- 人や物と30m以内の距離
また、夜間の飛行や目視外飛行も航空法で規制されています。
ただし国土交通省など、各機関に許可申請を行うことでドローンショーを実施できるようになります。
ドローンショーの実施時間はどれぐらい?
ドローンはバッテリーによる給電で飛行しているため、ドローンショーを実施できる時間にも限りがあります。
具体的な時間は使用する機種によって変わりますが、多くの場合10~20分程度が限度です。
屋内でもドローンショーはできる?
使用可能なドローンの台数は限られますが、屋内でもドローンショーの実施が可能です。
ショーの規模にもよりますが、20m四方・高さ5m以上のスペースを確保できる場所ならドローンショーを実施できます。
屋内の飛行は航空法の規制対象外であるため許可申請も不要で、屋外ショーに比べてハードルが低いです。
ドローンショーを手がける会社は?
ドローンショーを手掛けている主な国内企業は、以下の3社が挙げられます。
- 株式会社ドローンショー・ジャパン
- 株式会社レッドクリフ
- オリジナルラボ株式会社
- 株式会社スペースワン
- 東洋音響株式会社
なお、各社で屋外ショーへの対応可否や実施可能なショーの規模は異なります。
まとめ
ドローンショーとは、多数のLED搭載ドローンを一斉に飛行させてイラストやアニメーションなどを表現する新しい空のエンターテインメントです。
プログラミングなどによる緻密な制御でドローンを動かしており、光の点滅と組み合わせて多彩な世界観を演出しています。
本記事で解説した仕組みを理解したうえでドローンショーを観れば、ただ「美しい」と感じるだけでなく技術的な視点からも楽しめることでしょう。
今後も国内の様々なイベントでドローンショーが行われると見込まれるため、興味を持った方はぜひ会場へ足を運び、ドローンが織りなす近未来的かつ幻想的な世界をその目で見てみてください。
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