ドローンを使ったスマート農業を解説!農業用ドローンの主な用途とは?

更新日: 2024.12.06 公開日: 2024.12.09
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少子高齢化による人手不足が問題視されている農業分野においては、先端技術を農業に取り入れる「スマート農業」の重要性が高まっています。

スマート農業の一環として、作業の一部にドローンが活用されていることはご存知でしょうか。

今回はスマート農業の内容や取り組むことのメリットに加え、農業にドローンを活用する方法や農業用ドローンのメーカーもご紹介いたします。

農業にドローンを活用したい方、労働力不足に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

目次

スマート農業とは

スマート農業とは、「先端技術を活用する農業」を指します。

ロボット・AI・Iotなどの技術を取り入れて作業の自動化・省力化を図ると共に、あらゆる情報をデータ化することで作物管理の適正化・効率化にもつなげる取り組みです。

農業分野では慢性的な人手不足が問題視されており、少子高齢化が進む日本では労働力の確保や作業負担の軽減が急務とされています。

そこで政府はスマート農業の本格的な社会実装に向けて情報を発信したり、スマート農業技術活用の促進に関する法律を整備したりといった取り組みを行っています。

参考:スマート農業技術活用促進法について

スマート農業のメリット

スマート農業を取り入れることの主なメリットは、以下の通りです。

作業の省力化

スマート農業における最大のメリットは、作業の省力化です。

従来、農薬・肥料散布や田植えなどはすべて人の力で行われてきましたが、体力的な負担が大きいだけでなく時間もかかります。

スマート農業の一環としてドローンなど手軽に扱える技術を導入すれば、作業負担を大幅に軽減されるため少人数でも作業に対応できるようになります。

労働力不足の問題解決には、スマート農業による作業の省力化が欠かせません。

品質の向上

どんな農作物にも、病害・虫害・獣害による品質低下のリスクは付きものです。

また、同じ作物でも生育のばらつきが発生しているケースも珍しくなく、1つ1つ確認のうえ対処する手間も生じます。

スマート農業を取り入れれば、作物の生育状況をデータ化のうえ元管理することもできます。

これにより、品質低下の原因やリスクの迅速な特定につながり、早期に栽培方法の最適化へ取り組むことが可能です。

結果として作物の品質向上と均一化が実現し、収量の安定に期待できます。

スキル継承の簡略化

スキル継承が難しい農業においては、後継者不足も問題視されているポイントです。

農業は長年の経験に基づく技術や勘に頼る要素も大きく、ベテランの農業従事者と同等のクオリティで仕事をこなすには相応に期間をかけて実務経験を積む必要があります。

農作物から熟練者のノウハウまで様々なデータを可視化・管理できるスマート農業なら、未経験の状態からでも簡単にスキルを身につけて農業に従事できるようになります。

就農ハードルを下げる

スマート農業では、新規参入のハードルが下がるというメリットも得られます。

IT技術の普及拡大に伴い、ドローン操縦やセンシング技術を身につける若者は増加傾向にあります。

つまり、ITスキルを活用できる場としてスマート農業へ興味を持ち、就農に踏み出す人の出現にも期待ができるということです。

また、スマート農業による作業の省力化により、体力に自信がない人や女性も活躍しやすくなります。

環境負荷の軽減

スマート農業の1つに、「センサーで取得したデータに基づく精密作業の実現」があります。

本当に農薬が必要な範囲をピンポイントで特定できるため、農薬の過剰使用を避けて土壌や水質の保全につなげることが可能です。

また、土壌の状態をリアルタイムに把握のうえ必要な量だけ水を供給でき、水の無駄遣いも抑えられます。

生産コスト削減

上述した、スマート農業による農薬や水などの消費量の削減は、環境負荷軽減だけでなくコスト削減にもつながります。

また、作業を外部委託する場合も、スマート農業で省力化・効率化を実現すれば人件費の無駄も削減できます。

各コストの削減に併せて、データを活用した品質の安定化により、収益性の向上にもつながります。

ドローンを使ったスマート農業の事例

スマート農業の施策としてドローンの活用は代表的ですが、具体的にどのような活用方法があるのでしょうか。

以下より、農業分野におけるドローンの主な活用方法をご紹介いたします。

農薬や肥料の散布

ドローンに農薬や肥料を搭載し、飛行させながら圃場に散布するという活用方法は最も多く見られます。

活用する機種にもよりますが、ドローンなら一般的に1haあたり約10分というペースでの散布が可能です。

自律飛行に対応しているドローンなら、飛行中の機体を監視しているだけで散布作業を完了できるため、大幅な省力化・効率化につながります。

播種や受粉作業

ドローンは、水田への直播や作物の受粉作業にも活用できます。

直播では水田の上空から機体に搭載した種を等間隔に打ち込むため、苗立ちの均一化や倒伏の軽減という効果が得られます。

受粉作業に関しては果樹やトマトなどで実証実験が行われており、機体に搭載されたAIを併用して受粉可能な花を識別し、対象の花へ花粉を撒きます。

これにより、受粉作業の効率化だけでなく結実率の向上と収量安定化へつなげることが可能です。

圃場の監視

ドローンにはカメラやセンサー類も搭載できるため、圃場の監視に活用して害獣や害虫による被害を防止する効果も得られます。

例えば赤外線カメラを搭載したドローンで圃場を監視し、周辺にいるイノシシなどの害獣の数・分布を分析のうえ、結果をもとに環境整備などの対策を取るという活用方法です。

また、可視光カメラで撮影のうえ専用ソフトウェアと連携させれば、寄生虫が発生している箇所も特定できるようになります。

生育状況のセンシング

農業におけるセンシングとは、センサーによって作物の育成状況・土壌・病虫・雑草の発生状況などを分析する技術のことです。

機体にマルチスペクトルカメラを搭載し、圃場の見回り作業に活用します。

目視による見回りでは圃場全体を歩いて回る必要がありましたが、ドローンなら圃場全体の状態を俯瞰して把握できるだけでなく、センサーにより人の目には見えないものの計測も可能です。

生育のムラなどをいち早く検知し、対策できるため収量の増加・安定化につながります。

農作物の運搬

農業ではただ作物を育てるだけでなく、収穫した作物を運搬する作業も発生します。

しかし圃場からトラックへ重い作物を運ぶには体力的な負担が大きいだけでなく、山間部や傾斜地だと移動に時間を取られることも多いです。

ドローンなら機体に荷物を搭載しながらの飛行が可能なため、どんな地形の圃場からでも楽に運搬作業を行えます。

ドローンを使ったスマート農業の課題

ドローンを使ったスマート農業は多くのメリットがある一方で、国内の農家におけるドローンの所有率は低い状態が続いています。

ドローンの導入に伴う、いくつかの課題が障壁となっているからです。

以下より、ドローンを使ったスマート農業の主な課題と解決策を解説いたします。

スマート農業に対応した人材が不足している

農業にドローンを活用する場合、現場に有効な活用方法を策定するための知識やドローンの操縦技術といったスキルが必要になります。

また、航空法の規制や申請手続きが必要な飛行場所・飛行方法についても知っておく必要があります。

しかしドローンの運用に対応できる人材が不足しており、スマート農業に踏み出せないというケースは多いです。

自分でドローンを運用する場合は、プロによる指導を受けられる講習で知識と技術を習得することが大切です。

また、ドローンの農業活用に対応している業者へ委託するという手もあります。

導入費用が高い

農業に活用できる農薬散布ドローンやその他産業用ドローンは、数十万円~数百万円の初期費用がかかります。

さらに、ドローンを使うためのスキルの習得にスクールへ通えば受講料も必要になります。

決して小さな出費では導入できないことも、ドローンの普及が進まない原因の1つです。

ドローン導入の費用負担を抑えるなら、各種補助金・助成金制度の活用がおすすめです。

農業へのドローン導入に使える補助金・助成金制度としては、以下のようなものがあります。

  • 人材開発支援助成金
  • 農地利用効率化等支援交付金
  • 産地生産基盤パワーアップ事業
  • 担い手確保・経営強化支援対策  など

目視ほど細かくは観察できない

ドローンを使った圃場の監視や生育状況のモニタリングなどをする場合、一般的なカメラが備わっただけの機体では高精度な分析ができません。

葉の裏や根元の近くなどの細かな箇所は、人が手でかき分けて目視した方がチェックしやすい場合もあります。

より高精度なチェックを可能とするなら、別途赤外線カメラなどの用意が必要です。

使用可能な農薬が限定される

ドローンでは、農林水産省の登録を受けた農薬しか使用できません。

ドローンに搭載できる薬剤タンクの容量は小さく、高濃度かつ少量散布が可能な農薬を使う必要があるからです。

すべての農薬散布にドローンを活用できない点には注意しましょう。

なお、登録済みの農薬は農林水産省のホームページより確認できます。

主な農業用ドローンのメーカー

農業に活用できるドローンは、国内外の様々なメーカーで開発・製造されています。

ここでは、主な農業用ドローンメーカー6社の特徴や代表的な機種をご紹介いたします。

マゼックス

マゼックス(MAZEX)は、農薬散布・防除・林業・設備業などに特化した産業用ドローンのメーカーです。

安全かつ手軽に導入できるドローンの開発・製造を行っており、比較的リーズナブルな価格設定になっています。

マゼックスの代表的な機種は、農薬散布ドローンの「飛助」シリーズです。

複数のサイズが展開されており、圃場規模に最適な性能を発揮するドローンを選べます。

ヤマハ発動機

ヤマハ発動機はオートバイのメーカーとして有名ですが、他にも除雪機・発電機・無人システムなど多種多様な製造事業を手掛けています。

無人システムに関しては、産業用無人ヘリコプターを開発したノウハウを凝縮した農業用ドローンも展開しています。

農業用ドローンの中でも代表的な機種は、農薬散布ドローンの「YMR-08」です。

スムーズな操縦をサポートする便利な機能に加え、力強いダウンウォッシュにより株元までしっかりと薬剤を散布できます。

クボタ

クボタは、農業機械や建設機械を中心とした産業機械メーカーで、近年は農薬散布用ドローンの開発・製造も手掛けています。

農業散布用ドローンの中ではフラッグシップモデルの「T25K」が有名で、最大72kg/分の量で吐出可能なノズルと圃場マップのリアルタイム作成を可能とする自動測量機能などが搭載されています。

ドローンを使った営農から機体の稼働状況のモニタリングまでサポートしてくれる、手厚いサポート体制も特徴です。

DJI

DJIは世界最大手クラスのドローンメーカーで、一般向けの空撮ドローンから産業用ドローンまで幅広く展開しています。

農業用ドローンの開発・製造も手掛けており、代表機種である「AGRAS」シリーズは水稲・果樹・野菜などあらゆる農作物への農薬散布が可能です。

また、リモートセンシングにも活用できる「Phantom」シリーズも有名です。

XAG JAPAN

XAG JAPANは、農業の完全自動化・スマート農業の発展を目指す農業用ドローンメーカーで、中国に本社を構えています。

2024年時点で4種類の農業用ドローンを販売しており、その中でも「P40」は人気です。

RTK測位システムによる高精度な自律飛行と、AI技術の活用による作業の完全自動化を可能としています。

NTT e-Drone Technology

NTT e-Drone Technologyは、NTT東日本・オプティム・WorldLink & Companyの三社合弁で設立したドローン専業のメーカーです。

産業用ドローンの開発・製造の他、ドローンスクールの運営やドローン運用受託事業も手掛けています。

NTT e-Drone Technology製の農業用ドローンとしては、「AC101」があります。

軽量かつコンパクトで操縦をアシストする機能も備わっており、初心者からプロまで幅広い層に愛用されています。

ドローン以外のスマート農業は?

ドローン以外にも、農業では様々なIT技術を活用することができます。

以下より、スマート農業に役立つIT技術の種類と特徴をご紹介いたします。

ロボット技術

農業では、無人で稼働できる農薬散布ヘリや自動走行トラクターといったロボット技術の導入も進んでいます。

ドローンの活用もまた、ロボット技術によるスマート農業の一環です。

例えば自動走行トラクターの場合、カメラやセンサーで自動的に判別しながら収穫や播種などを行うことができます。

また、人やドローンでは運搬できない重い荷物・大きな荷物の運搬も可能にするロボットもあります。

ビックデータ

ビッグデータとは、一般的なソフトウェアでは処理できないほどの大きなデータの集合体です。

機器の活用を通じて取得した圃場の状況や各種計測結果などのデータを解析し、栽培方法の適正化やリスク予測が可能になります。

また、気象データや人工衛星によるビッグデータから、過去の作物の生育における傾向を分析し、成熟した作物を確実に収穫できるという効果もあります。

AI

AIに長年にわたり人の手で行われてきた農作業を学習させることで、ベテランの勘に依存するノウハウの継承も容易になり、未経験者でも農業へ従事しやすくなります。

また、過去の気候情報や圃場の情報といったデータを組み合わせて、どんな土地でも作物の栽培が可能になるという効果にも期待されています。

Iot

Iot(Internet of Things)は様々なモノをインターネットに接続する技術のことで、「モノのインターネット」とも呼ばれています。

インターネット上の情報を取り入れることができるため、市場の動向や消費者のニーズも容易に把握できます。

これによりニーズに最適な産物の生産が可能となり、効率的に収益を上げられる農業が実現します。

まとめ

スマート農業とは農業分野における先端技術の活用であり、近年は様々な分野で普及が拡大している「ドローン」を使った農作業もスマート農業の一部です。

ドローンを農業に活用することで、作業の効率化・省力化が見込める他、属人化の防止や栽培リスクの予防といったメリットも得られます。

ただし、ドローンを導入するにあたって初期コストやスキル習得といったハードルが立ちはだかるのも事実です。

補助金・助成金制度やドローンスクールをうまく活用し、中長期的に見て持続可能性や収益性の見込める農業の実現を目指すことが大切です。

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