
航空法って名前からして難しそう…

必要なのは航空法の中でもドローンに関連する部分だけです。
わかりやすく解説していきます。
日本国内でドローンを飛ばす場合、航空法をはじめとするさまざまな法律を守って安全な飛行を実施しなければなりません。
そこで今回は「航空法」で定められたドローン飛行に関わる規制について解説していきます。
- 航空法とは
- ドローン飛行に必要な航空法の知識
- 航空法で定められたルール
- 航空法で禁止されたエリア・飛行方法
を初心者にもわかりやすく解説しています。
飛行禁止区域や飛行方法のルールなど、飛行前に確認必須な情報を記載していますので是非ご覧ください。
ドローンに関わる日本の法律「航空法」とは
ドローン飛行を行う場合、「航空法」という法律によりルールが定められています。
航空法とは
航空法(こうくうほう、昭和27年7月15日法律第231号)は、民間の航空機の航行の安全及び航空機の航行に起因する障害の防止などを目的としている日本の法律である。
Wikipedia
上記に記載のある通り、航空法とは航空機が安全に飛行できるように定められた法律です。
全員が安心して空を利用できるように守るべきルールとなります。
航空法におけるドローンの定義
2015年に航空法の一部が改正され、「無人航空機の飛行」において許可が必要な空域・飛行方法について制定されました。
「小型無人機」とは、
飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの(200g未満の重量(機体本体の重量とバッテリーの重量の合計)のものを除く)です。いわゆるドローン(マルチコプター)、ラジコン機、農薬散布用ヘリコプター等が該当します。
国土交通省 飛行ルール(航空法第9章)の対象となる機体
航空法における無人航空機の定義とは、「人が乗ることができない飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって、遠隔操作または自動操縦により飛行させることができるもの」です。
そのため、ドローンを始めラジコン機や農薬散布用ヘリコプターなども無人航空機に含まれます。
重さ200g未満のドローンは「模型航空機」に分類される
機体本体とバッテリーを合わせた総重量が200g未満のドローンは、無人航空機ではなく「模型航空機」とみなされます。
模型航空機は航空法に記されている無人航空機の飛行に関する規制は適用されません。
ただし、空港周辺や一定の高度以上に及ぶ飛行については許可申請が必要となるので注意しましょう。
航空法でドローンに該当する箇所は「第九章 第132条」
航空法でドローンに関するルールが記されているのは、第九章 132条「飛行の禁止空域」と第九章 132条の2「飛行の方法」の項目。
「飛行の禁止空域」は、無人航空機を飛行させてはならない場所が記載されています。
具体的な飛行禁止空域や飛行方法については、次項より解説していきます。
航空法(第132条)に記されるドローンの飛行禁止区域
航空法に記されているドローンの飛行禁止区域は、次の通りです。

規制対象①:空港等の周辺の上空の空域
空港やヘリポートなどの周辺上空は、飛行機やヘリコプターと衝突することを避けるためにドローンの飛行が規制されています。
具体的には、以下のような空域のことを指します。
- 航空機の離着陸直後や進入の最終段階において、安全を確保するために必要な表面(進入表面)の上空または下の空域
- 空港周辺で旋回など低空飛行をした際、安全を確保するために必要な表面(水平表面)の上空
- 着陸のための進入を誤り、側面へ方向転換してやり直す際の安全を確保するために必要な表面(転移表面)の上空または下の空域
すべての空港やヘリポートにおいて概ね6キロメートル以内の範囲がこれに該当します。
一部、羽田や成田、大阪国際、那覇など主要空港周辺では24キロメートルに及ぶ範囲が規制されていることもあります。
また、主要空港周辺においては以下のような空域もドローン飛行規制空域として指定が可能です。
- 「精密進入方式※」による、航空機の最終直線進入の安全を確保するために必要な表面(延長進入表面)の上空
- 航空機の大型化・高速化に伴い拡大した飛行経路や、精密進入方式以外の方法で進入する際の経路の安全を確保するために必要な表面(円錐表面)の上空
- 航空機が精密進入方式で着陸するまでの飛行経路の安全を確保するために必要な表面(外側水平表面)の上空
※「精密進入方式」:2種類の誘導電波(進入方向・降下経路)による指示を受けて、悪天候時でも所定のコースに沿って正確な進入着陸が可能となる方法。
航空法対象外の「重量200g未満」のドローンでも国土交通省の許可が必要
先ほどは重量200g未満のドローンは航空法における飛行規制の適用外とお伝えしました。
しかし、航空法134条の3・第1項と第2項「航空機の飛行に影響を及ぼす恐れのある行為を禁止する」という規制は適用されます。
※参考
- 無人航空機(ドローン、ラジコン等)の飛行に関するQ&A (Q1-4)
- 航空法 (134条の3 第1項・第2項)
重量にかかわらずドローンを空港周辺で飛行させるということは、航空機の飛行に影響を及ぼすことが考えられるため、国土交通大臣の許可が必要となるのです。
空港周辺でドローンの飛行を計画している場合は、必ず国土交通省の地方支分部局である地方航空局へ許可申請を行わなければなりません。
規制対象②:地表又は水面から150メートル以上の高さの空域
地上や水面から150メートル以上の高さの空域でドローンを飛ばすことも規制されています。
飛行機やヘリコプターとの接触の恐れ、万が一制御不能となり落下した際、衝撃が強くなることが理由です。
この空域についても、空港周辺の空域と同様の理由から重量にかかわらずすべてのドローンが規制対象となっています。
ただし、200g未満のドローンに関しては許可申請ではなく「国土交通大臣への通報」が必要です。
規制対象③:人口集中地区の上空の空域
人口集中地区(DID地区)の上空も、ドローン飛行が制限されています。
人口集中地区とは、5年に一度実施される国勢調査の結果をもとに定められた「人家の密集地域」です。
なお、人家が密集していない河川敷や海岸が含まれている場合もあるので飛行前に確認しておきましょう。

※地理院地図「人口集中地区 平成27年」より
人口集中地区は、国土地理院HPより公開されている「地理院地図」から閲覧可能です。
航空法(第132条)に記されるドローン(無人航空機)の飛行方法
航空法では飛行する場所だけでなく、ドローンの飛行方法として次のルールが決められています。
飛行規則①:薬物および飲酒時に飛行させてはいけない
アルコールまたは薬物の影響により安全な飛行を実施できない恐れがある場合、ドローンの飛行が禁止されています。
アルコールが含まれる飲食物(濃度の程度にかかわらない)、麻薬・覚せい剤・医薬品を摂取した状態でドローンを飛ばすことはできません。
飛行規則②:飛行は日出から日没までの間
安全のためドローンは見通しの良い日中に飛ばすことが義務付けられています。
日の出や日没の時刻は国立天文台が発表している時刻となるので、地域によって飛行可能な時間帯が異なります。
飛行規則③:目視の範囲内で飛行させる
位置や姿勢、人や障害物などにより、ドローンを常時目視できない環境下で飛行させることも禁止されています。
双眼鏡やモニターを通して監視する場合や、補助者による監視も「目視」には含まれません。
操縦者本人の目でしっかりと監視できることが求められています。
メガネやコンタクトレンズは、着用した状態でドローンを視ることができれば「目視」に含まれます。
飛行規則④:第三者の30m未満の距離に入る飛行
ドローンから第三者または第三者が所有する物まで、30m未満の距離になるまで接近することも禁止されています。
「第三者」とは、ドローンの操縦者や補助者といった関係者以外の人を指します。
そのため、操縦者または補助者以外の人物や第三者が所有する物(建物や車など)から30m以上の距離を取って飛行させなければなりません。
飛行規則⑤:イベント会場上空での飛行は禁止
野外フェスティバルや祭礼、展示会など多くの人が集合する催しを開催している間は上空でドローンを飛ばすことは禁止されています。
イベントの開会~閉会以外の時間については個別の判断となるため、国土交通局との相談が必要です。
飛行規則⑥:危険物の輸送は禁止
凶器・毒物類・火薬類・引火性の液体など、爆発性または易燃性を有する物や他の物件を損壊する恐れのある「危険物」をドローンで輸送することはできません。
真に必要と認められる事情がある場合のみ、危険物の輸送に適した装備や補助者などを用意したうえで許可申請を行う必要があります。
飛行規則⑦:飛行中に物件を投下させない
ドローンを飛行させている状態で、機体から物件を投下することも禁止されています。
「物件の投下」とは固形物を落とすだけでなく、液体や霧状のものを散布する行為も含まれます。農薬の散布もこれに該当します。
飛行規則⑧:飛行に必要な準備が整った上で飛行させる
飛行させる場合は、以下のポイントを踏まえつつ、安全な飛行を行うための準備を整えておくことが大切です。
- 十分な性能を備えた機体を用意すること
- 操縦者が十分な飛行経歴・技能・知識をもっていること
- 気象状態は安定しているかを確認すること など
また、許可が必要な場所で飛行する場合は早めに許可申請を行うなどの準備を怠らないようにしましょう。
飛行規則⑨:他人に迷惑を及ぼすような飛行をしないこと
地上や水上の人または物件に対して、安全を損なうような方法で飛行をしないようにしましょう。
ドローンの空撮では、周囲の人や車した撮影には注意しましょう。人の顔やナンバープレートが映った動画や画像をインターネット上にアップすると、プライバシーの侵害とみなされる可能性があります。
航空法の規制外でも私有地など飛行禁止区域が存在する
ドローンの飛行が禁止されている区域は、上記でご紹介した航空法により定められている場所だけではありません。
他にも「小型無人機等飛行禁止法」により国会議事堂など国の重要施設周辺、他人が管理・所有している私有地なども無許可でドローンを飛ばすことは禁止されています。
また、東京都ではすべての都立公園でドローンの飛行が禁止されているように、地域によって独自の条例が定められている場合もあります。
飛行禁止区域を飛行可能人にする「許可申請」
航空法で飛行禁止と定められた区域でも、地方航空局や空港事務所へ許可申請を行い承認を得ることができれば飛行が可能となります。
また、禁止されている飛行方法についても「薬物および飲酒時」以外については国土交通大臣から承認を得ることで飛行ができます。
飛行場所や飛行方法によって申請方法や申請先が異なるので、まずはドローンに関する法律をよく理解したうえで適切に申請を行いましょう。
航空法に違反するドローン飛行をした場合はどうなる?
航空法で定められた飛行禁止区域内、または飛行方法でドローンを無許可で飛ばした場合、「無人航空機の飛行等に関する罪」が適用されます。
違反者には、50万円以下の罰金が科せられることがあります。
知らなかったでは済まされない事態に陥る恐れがあるため、航空法についての知識を十分につけておくことが重要です。
実際に航空法に違反してドローンを飛ばした人が逮捕されたという実例もあるため、ドローンに関する規制を守らないと厳しく処罰されることが考えられます。
<実例>
京都区検は18日までに、許可なく住宅地でドローンを飛ばしたとして、航空法違反罪で京都市中京区の男性会社員(35)を略式起訴した。8日付。京都簡裁は9日に罰金20万円の略式命令を出した。
産経ニュース
国土交通相の許可を受けずにドローンを禁止区域で飛ばしたとして、福岡県警は3日、北九州市戸畑区西大谷1丁目の会社員塩川貢志容疑者(58)を航空法違反の疑いで逮捕し、発表した。
朝日新聞デジタル
ドローンの法整備は着々と。直近の改正航空法の内容とは
2015年に航空法が改正されてからというもの、ドローンの進化や普及率は上昇の一方です。
そんな中、2020年12月に国土交通省の航空局より「無人航空機レベル4の実現のための新たな制度の方向性について」という資料が公開されました。
現在のルールでは実施不可能な「有人地帯における補助者なし目視外飛行(レベル4)」を2022年に実施するため、規制の見直しや追加を行うという航空法の改正案が記載されています。
法改正の内容は「ドローンの登録制度」「免許・ライセンス制度」「機体認証制度」の追加や「航空法対象ドローンの拡大」の4つが挙げられます。
2020年の法改正で決定。100g以下も航空法の対象機体に含まれる
2020年12月に発表された資料の中でも特に注目したいポイントが、「航空法対象ドローンの拡大」です。
政府はこれまで200g以上としていた航空法の規制対象ドローンを、100g以上に変更する方針を固めました。
近年普及が進んでいる200g未満のドローンは小型でも飛行速度の速い機体が多いだけでなく、手軽に入手できるようになり危険性が増していることを踏まえての変更とのことです。
100g以上のドローンは通販サイトなどで数多く販売されており、施行予定とされている2022年以降は市場に大きな影響が見られることが予測されます。
まとめ
今回は航空法の中で定められている、ドローン飛行のルールについて解説いたしました。
航空法についてまとめると以下のようになります。
- 航空法とはドローンを含む航空機の離着陸や航行の安全を確保するための法律
- ドローンの飛行には航空法第132項が適用される
- 航空法では3つの禁止区域エリアと9つの飛行方法が決められている
- 飛行禁止区域や飛行方法でも許可申請を行えば飛行可能になる
他にもドローンを飛行するうえで確認しておくべき法律はいくつもあるので、法律に違反して罰則を受けないようにしっかりと知識を身に着けておきましょう。
航空法以外の法規制については以下の記事をご参考ください。
法律で禁止と定められていること以外にも、人や建物などに危害を加えないよう安全に飛行する準備を怠らないこともマナーです。2022年に予定されている航空法の改正に関する情報も随時チェックしながら、正しくドローンを活用していきましょう。
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