ドローンは基本的に無資格でも操縦が可能ですが、特定のケースにおいては「無線技士(無線資格)」の取得が必要です。
また、無線技士は大きく分けて2種類があり、ドローンを飛ばす目的によってどちらを取得すべきかが変わります。
本記事ではドローンの操縦に無線技士の資格が不要なケースと必要なケースをご紹介するとともに、2つの無線技士資格の詳細も解説いたします。
取得方法も記載していますので、ぜひ参考にしてみてください。
ドローンの操縦に無線技士の資格は必要?
結論から述べると、航空法の規制に抵触しない場所・方法でドローンを飛ばすだけなら特別な資格は不要です。
ただし場所・方法にかかわらず、どんなドローンを使用するのかによっては、「無線技士」の資格を取得する必要があります。
詳細は後述しますが、無線技士とは特定の電波を発する無線設備の使用を認める資格のことです。
「陸上特殊無線技士」と「アマチュア無線従事者」の2種類があり、どんな目的で対象の無線設備(ドローン)を使用するのかでどちらを取得すべきかが変わります。
該当のドローンを無線技士の資格なしで使用すると、電波法違反として罰則を受ける可能性があるため注意が必要です。
無線技士の資格が不要・必要なケース
ドローンの操縦において、無線技士の資格が必要かどうかは機体に使用されている電波帯によって変わります。
ここでは、ドローンに使用されている主な電波帯ごとに、無線技士の資格が不要か・必要かを解説いたします。
2.4Ghz帯+技適マーク有のドローンは資格不要
一般的なホビー用ドローンには、2.4Ghz帯の周波数が使用されています。
2.4Ghz帯の周波数を使用しており、送信電力10mw以下のドローンであれば無線技士資格の取得は不要です。
ただし、同じ2.4Ghz帯のドローンでも「技適マーク」がついていないドローンは日本国内で使用できません。
技適マーク(技術基準適合証明)とは、国内の電波法で定められた技術基準に適合している無線機に付与されるマークです。
並行輸入品のドローンなどは技適マークがついていない場合もあるため、海外製ドローンを購入する場合は特に注意して技適マークの有無を確認しましょう。
5.7GHz帯を使用するドローン
産業用ドローンやレース用ドローンの中には、5.7GHz帯の周波数を使用している機種もあります。
5.7GHz帯の周波数を使用するドローンの使用には、無線技士の資格が必要です。
操縦だけでなく、メンテナンスなどのために電源を入れることも無資格ではできません。
5.8GHz帯を使用するドローン
FPVドローンやレース用ドローンの多くは、5.8GHz帯の周波数を使用しています。
また、米国・欧州など海外では5.8GHz帯のドローンの方が広く普及しています。
5.8GHz帯のドローンを使用する場合も同様に、無線技士の資格が必要です。
ただし、用途によってはアマチュア無線従事者の資格でも操縦が認められます。
ドローンの操縦に必要な無線技士の資格は?
同じ無線技士の資格が必要なドローンでも、周波数やドローンの用途によって必要な資格が変わる点に注意しましょう。
ここでは、各ケースで必要な資格の種類を解説いたします。
FPVドローン(5.8GHz帯を使用)を飛ばすなら「アマチュア無線従事者4級以上」が必要
FPVドローンなど、5.8GHz帯のドローンを趣味目的で使用する場合は「第四級アマチュア無線技士」以上の資格が必要です。
アマチュア無線とは個人的な趣味で行う無線通信のことで、この無線通信を行うにあたって必要な資格がアマチュア無線従事者の資格です。
産業用ドローン(5.7GHz帯を使用)を飛ばすなら「陸上特殊無線技士3級以上」が必要
産業用ドローンなど5.7GHz帯のドローンの操縦には「陸上特殊無線技士3級以上」の資格を取得します。
また、5.8GHz帯のドローンも、個人的な趣味ではなく事業(金銭上の利益)目的で操縦する場合は陸上特殊無線技士の資格が必要です。
例えば、FPVドローンを使用した空撮動画による広告収入やドローンレースの賞金なども事業目的とみなされる恐れがあります。
利益が生じることに該当のドローンを使うなら、「陸上特殊無線技士3級以上」を取得しておくと安心です。
陸上特殊無線技士とは
ここでは、産業用ドローンや事業目的のFPVドローンに必要な「陸上特殊無線技士」という資格の詳細を深掘りしていきます。
陸上特殊無線技士とは日本の電波法で定める無線従事者資格のひとつであり、総務省所管の国家資格です。
取得により、陸上に開設する業務無線局に従事することが認められます。
なお、陸上特殊無線技士には第一級~第三級という3つの区分があり、使用する無線設備の条件に対応したものを取得する必要があります。
第一級陸上特殊無線技士
第一級陸上特殊無線技士は、「陸上の無線局 (空中線電力500W以下) の多重無線設備・30MHz以上の周波数の電波を使用するもの」の技術操作が認められる資格です。
例えばテレビ局の中継局や携帯電話の基地局といった、多重無線設備の操作も可能になります。
それに加えて、第二級・第三級の対象となる技術操作も認められます。
陸上特殊無線技士の中でも最上位の資格であるだけに、取得のハードルも比較的高いです。
第二級陸上特殊無線技士
第二級陸上特殊無線技士は、以下の技術操作が認められる資格です。
- 電気通信業務用の多重無線設備のVSAT等小型の地球局の無線設備
- 1,605kHz~4,000kHzの電波を使用する、空中線電力10W以下の固定局・基地局・陸上移動局等(多重無線設備を除く)
例えば、衛星を使用したテレビの中継車の設備や防災行政無線、タクシー無線などの技術操作が該当します。
取得に際して、第三級よりも高度な技術と知識が求められます。
第三級陸上特殊無線技士
第三級陸上特殊無線技士は、以下の技術操作が認められる資格です。
- 25,010kHz~960MHzの電波を使用する、空中線電力50W以下のもの
- 1,215MHz以上の電波を使用する、空中線電力100W以下の固定局・基地局・陸上移動局等
第三級陸上特殊無線技士は主に、事業にドローンを活用するために取得するケースが多いです。
従来は需要が低い資格でしたが、近年のドローン市場の拡大に伴い取得者が増加傾向にあります。
アマチュア無線技士とは
個人的な趣味目的で5.8GHz帯のドローンを使用する際に必要な、「アマチュア無線技士」の資格について詳しく解説いたします。
アマチュア無線技士とは、先述の通り個人目的のために行われる無線通信「アマチュア無線」の使用に必要な国家資格です。
使用目的は限られていますが、陸上特殊無線技士よりも幅広い周波数帯の電波を使うことができます。
第一級~第四級という4つの区分があり、どれを取得するかで使用可能な無線設備の範囲が変わります。
第一級アマチュア無線技士
第一級アマチュア無線技士は、すべてのアマチュア無線局の無線設備の操作が可能になる資格です。
アマチュア無線技士において最上位の資格であり、国内向けの無線機ならほぼすべて扱えるようになります。
第二級アマチュア無線技士
第二級アマチュア無線技士は、「アマチュア無線局の空中線電力200W以下の無線設備」の操作が可能になる資格です。
また、第三級・第四級で操作が認められる無線設備も扱えるようになります。
アマチュア無線局において使用できる空中線電力は制限されていますが、周波数に限りはありません。
第三級アマチュア無線技士
第三級アマチュア無線技士は、「アマチュア無線局の空中線電力50W以下の無線設備で、18MHz以上または8MHz以下の周波数の電波を使用するもの」の操作が可能になる資格です。
第四級よりも使用可能な範囲は広がりますが、空中線電力だけでなく周波数も制限されています。
第四級アマチュア無線技士
第四級アマチュア無線技士は、以下の操作が可能になる資格です。
- 空中線電力10W以下の無線設備で、1MHzから30MHzまでまたは8MHz以下の周波数の電波を使用するもの
- 空中線電力20W以下の無線設備で、30MHzを超える周波数の電波を使用するもの
※どちらもモールス符号による通信操作を除く
趣味目的で5.8GHz帯のドローンを操縦するなら最低限必要な資格であり、取得のハードルは高くありません。
第三級陸上特殊無線技士の取得方法
5.7GHz・5.8GHz帯のドローンを事業で操縦するだけなら、上位の資格を目指さなくとも第三級陸上特殊無線技士を取得するだけで問題ありません。
第三級陸上特殊無線技士を取得する方法は、以下の3通りがあります。
国家資格を受験する
独学で勉強し、公益財団法人日本無線協会が年間を通じて開催している国家試験を受験する方法です。
試験はCBT方式で行われ、法規12問・無線工学12問の4択問題が出題されます。
難易度としては中学校程度で、十分に試験対策を行えば合格できることが多いです。
なお、受験の際は受験者専用サイトで申し込みを行います。
申し込みには規格に適合した顔写真と5,600円の試験手数料が必要になるため、あらかじめ用意しておきましょう。
養成課程を受講する
より早く資格を取得したい場合は、養成講座・講習会・通信講座の受講も検討しましょう。
各団体が提供している養成課程を修了のうえ、修了試験に合格すれば、受講したその日に資格を取得できます。
特に通信講座(eラーニング)はインターネット環境とデバイスがあれば場所を問わず受講できるため、資格勉強・受験の時間を確保しにくい方には特におすすめです。
ただし受講料がかかるため、独学よりも費用総額は高くなります。
大学などで単位を取得する
総務大臣の認定を受けた大学・短期大学・高等専門学校・高等学校などの学校で、無線通信に関する科目があればそれに受講するという手もあります。
学校から指定された単位を取得することで、第三級陸上特殊無線技士の資格を得ることができます。
第四級アマチュア無線技士の取得方法
趣味で5.8GHz帯のドローンを使用したい場合に取得すべき、第四級アマチュア無線技士の取得方法は2通りあります。
国家資格を受験する
第四級アマチュア無線技士も、陸上特殊無線技士と同じく日本無線協会が開催する国家試験に合格すれば取得できます。
試験はCBT方式で、法規12問・無線工学12問の4択問題が出題されます。
規格に適合する顔写真と試験手数料5,100円を用意のうえ、受験者専用サイトから受験を申し込みましょう。
講習を受講して修了試験を受ける
一般財団法人日本アマチュア無線新興協会(JARD)などの団体が行っている、講習会や通信講座を受講のうえ修了試験に合格するという方法でも資格を取得できます。
日本アマチュア無線新興協会の講習会の場合、2日間の講習のあとに修了試験が行われます。
一般の方は25,950円、18歳以下の方は13,850円の受講料が必要です。
資格取得に加えて「開局申請」が必要
陸上特殊無線技士またはアマチュア無線技士の資格を取得しても、すぐに5.7GHz帯・5.8GHz帯のドローンを使用できるわけではありません。
実際に使用する際は、事前に「開局申請」を済ませる必要があります。
開局申請とは、無線局を開局する許可を国から得るための手続きです。
5.7GHz・5.8GHz帯のドローンを使う場合も、同様に開局申請で許可を得なければなりません。
ドローンに内蔵されているVTX(送信機)は電波を発しており、無線局に該当するからです。
開局申請の流れ
開局申請は、電子申請または書面の提出で手続きを行います。
電子申請の際は、「電波利用 電子申請・届出システムLite」で手続きが可能です。
ドローンを使用する場合の開局申請は、基本的に以下のような流れとなります。
申請に必要な書類は、以下の通りです。
- 無線技士の免許証
- 無線局免許申請書
- アマチュア局の無線設備の開設保証願書
- 無線局事項書及び工事設計書
- 返信用封筒(110円切手付き)
- 電波使用料 前納申出書
なお、VTXはドローンの購入先によってはドローンに付属している場合もあります。
国内の一部ショップではVTX系統図を付属してもらえるため、申請準備の手間を省きたい場合はドローンを購入する際にVTX系統図の有無を確認しておきましょう。
電子申請のやり方については、電波利用 電子申請・届出システムLiteの操作説明を参考にしてください。
ドローンの無線技士資格に関するよくある質問
最後に、ドローンの無線技士資格に関してよくある質問について解説いたします。
第三級陸上特殊無線技士の難易度はどれぐらい?
第三級陸上特殊無線技士試験の合格率は、平成30年度から令和3年度にかけておおむね80%以上の合格率といわれています。
計算問題がほとんどなく、あったとしてもごく簡単な公式を用いるのみであるため、難易度は高くありません。
そのため、基礎を十分に学んでおけば合格できる可能性が高いです。
第四級アマチュア無線技士の難易度はどれぐらい?
第四級アマチュア無線技士試験における2020年度の合格率は80%と高く、アマチュア無線技士の中で最も難易度が低い資格です。
第三級陸上特殊無線技士と同じく、十分な試験対策を行っていれば合格は十分に望めます。
特に、講習会はプロの講師が分かりやすく解説してくれるため知識が身につきやすく、国家試験よりも合格率が高いといわれています。
無線技士の取得にかかる費用はどれぐらい?
国家試験を受験する場合、陸上特殊無線技士なら5,600円~6,300円、アマチュア無線技士なら5,100円~9,600円の試験手数料がかかります。
講習の受講で取得を目指す場合は講習元の団体によって異なる受講料がかかりますが、相場としては18,000円~50,000円程度です。
なお、実際に5.7GHz帯・5.8GHz帯のドローンを飛ばす場合は、7,000~8,000円程度の開局申請費用もかかります。
無資格でドローンを飛行させた場合の罰則は?
陸上特殊無線技士またはアマチュア無線技士の資格が必要であるにもかかわらず、対象のドローンを飛行させると、電波法違反として1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
また、資格を取得していても技適マークがついていないドローンを使用すると電波法違反となるため注意が必要です。
まとめ
あらゆる無線通信を正常に行うため必要な電波は公共の財産でもあり、一部の電波を発する無線機器・設備を使用するなら電波法に則り無線資格の取得が必要です。
ドローンの操縦においても同様で、5.7GHz帯または5.8GHz帯の周波数を使用するドローンを操縦する前に、陸上特殊無線技士またはアマチュア無線技士の資格しないと、電波法違反となります。
なお、どちらを取得すべきかは周波数の他、ドローンの使用目的によって異なるため注意しましょう。
さらに資格取得とは別に必要な開局申請にも手間がかかるため、余裕をもって準備のうえ着実に進めていくことが大切です。
この記事と一緒によく読まれている記事
-
ドローンの操縦に無線技士の資格は必要?必要なケースや資格の取得方法を解説!
-
ドローン測量管理士とは?新しく登場したドローン測量の資格を取得する方法を解説!
-
海でドローンを飛ばす際の規制や必要な許可申請は?海で飛ばす時のルールを解説
-
ドローン国家資格の取り方を解説!取るまでの手順や取得期間はどれぐらい?
-
ドローン国家資格の難易度は高い?試験の合格率や勉強時間はどれぐらい?
-
ドローンを使った橋梁点検とは?メリット・デメリットや橋梁点検で使用される新技術を解説!
-
ドローンの目視外飛行は飛行許可が必要?目視外飛行を行う条件や練習方法を解説!
-
100g未満のドローンを飛ばせる場所を解説!チェックすべき法律や飛行ルールは?
-
ドローンの高さ制限を解説!ドローンを飛ばせる高度はどこまで?
-
ドローンサッカーってどんな競技?ルールや始め方を詳しく解説
-
東京ディズニーリゾートがドローンショーを開催!ショーの中身や見た人の反応は?
-
ドローン操縦士の仕事はない?ドローンの求人数や仕事を得るのに必要なこととは?