ドローンの国家資格取得を目指すうえで気になるポイントが、試験の合格率です。
「国家資格」と聞くと難易度が高いイメージがありますが、実際の試験ではどのような問題が出題されるのでしょうか。
今回はドローンの国家資格に関して、難易度に焦点を当てて試験内容の例やおすすめの勉強法、受験時に注意すべき点などについて解説いたします。
今後、ドローンの国家資格を取得したいと考えている方はぜひ参考にしてください。
ドローン国家資格の難易度
ドローンの国家資格には、一等資格と二等資格という区分があります。
どちらも試験の合格率は公表されていませんが、基本的に二等資格は国土交通省の教則など基礎的な知識や操縦技術を身につければ取得できる難易度です。
一方で、一等資格は基礎的なスキルに加えより専門性の高い知識と飛行技術も求められるうえに、合格基準も厳しくなります。
そのため、二等資格取得者または取得者相当のスキルをもたない初心者が取得を目指すことは、かなり難しいといえます。
ドローン国家資格を取得する手順
ドローンの国家資格を取得できるかどうかは、どの方法で取得を目指すかによっても変わる可能性があります。
ここでは、ドローンの国家資格を取得する2通りの方法について解説いたします。
登録講習機関に通うパターン
登録講習機関とは、国土交通省から認定を受けたドローンスクールのことです。
一等資格向け・二等資格向けのカリキュラムがあり、それぞれに初学者向けと経験者向けのコースが設けられています。
登録講習機関は受講費用がかかりますが、プロによる指導で効率的にスキルを身につけられるだけでなく、国家試験のうち「実地試験」が免除されるというメリットがあります。
ドローンの国家資格取得の成功率を高めるなら、登録講習機関への受講がおすすめです。
直接試験を受けるパターン
独学で知識を身につけ、自主的に操縦練習を重ねてから試験に臨むことも可能です。
ただし試験対策はすべて自分で考えて行う必要があるため、登録講習機関を受講する場合よりも国家資格取得の難易度は高まります。
また、実地試験も免除されないため対策範囲が広がり、準備の段階から大きな負担を伴うことになります。
ドローン国家資格の試験内容
ドローンの国家資格の取得に際して対策すべきは、学科試験と実地試験です。
ここでは、学科試験と実地試験それぞれの試験内容について解説いたします。
学科試験
学科試験は三肢択一式で、一等資格は70問、二等資格は50問出題されます。
最低限必要な正答率は、一等資格は90%程度、二等資格は80%程度です。
実施方式はCBT(Computer Based Testing)で、コンピューターを使って回答します。
出題される内容は、一等資格・二等資格のどちらも「無人航空機の飛行の安全に関する教則」に準拠する内容となっています。
それぞれの問題例は、以下の通りです。
【一等資格】
問題 | 使用周波数が2.4GHz、送信側と受信側の距離が1,400mの場合のフレネルゾーン半径の60%の値(m)として、次のうち最も適切なものを1つ選びなさい。 ただし、光速は3×108m/sとし、 2=1.41、 3 =1.73、 5 =2.24、7 =2.65を用いてもよい。 電卓が使用可能である。 |
選択肢 | a. 4.0m b. 4.5m c. 5.0m |
正答 | a |
【二等資格】
問題 | 無人航空機操縦者技能証明及び機体認証を受けていない場合であっても航空法に基づく国の飛行の許可又は承認が不要な飛行として、正しいものを1つ選びなさい。 |
選択肢 | a. 日没後の飛行 b. イベント上空での飛行 c. 人口集中地区に該当しない地域での高度150m未満の飛行 |
正答 | c |
実地試験
実地試験では、机上試験・口述試験・実技試験という3つの課題で構成されています。
ただドローンを飛ばすだけでなく、ドローンの飛行体制などに関する知識も審査対象です。
一等資格・二等資格の試験範囲や減点基準は、無人航空機操縦士試験案内サイトに記載されています。
実地試験は持ち点100点から始まる減点方式となっており、一等資格は80点以上、二等資格は70点以上確保できれば合格です。
ドローン国家資格の実地試験で注意すべきポイント
先述したように、ドローンの実地試験は減点方式で進むため、うっかり合格基準を下回るまで減点されてしまうケースも珍しくありません。
ここでは、実地試験の際に減点されがちな5つのポイントを解説いたします。
スクエア飛行で経路を逸脱する
実際にドローンを飛ばす実技試験では、ドローン操縦における基本の「スクエア飛行」を行います。
離着陸地点の中心から8.5mの距離で操縦し、エリアを囲う減点区画・不合格区画に進入しないように、長方形を描くようにドローンを飛ばします。
減点区画に機体の半分以上が進入すると5点減点、不合格区画に機体の半分以上が進入すると不合格となります。
課題となっているどの飛行方法よりも範囲が広いため、機体との距離感が分からなくならないように注意が必要です。
飛行エリアの角などを目印に機体との距離感を意識すると、逸脱せず正確な長方形を描きやすくなります。
8の字飛行での不円滑
8の字飛行は、左右のスティックを同時に動かして複数の操作を行いながら機体で8の字を描くように飛行させるテクニックです。
左右のスティックをうまく連動させないと、ひとつひとつの動作で停止してしまい不円滑な飛行になってしまいがちです。
不円滑な飛行は1点の減点となるため、円滑に飛行できるよう繰り返し練習しましょう。
円の中心点を意識すると同時に、左スティックで方向転換する際に右スティックを少し入れると円滑に旋回しやすくなります。
安全確認不足
ドローンの飛行技術だけでなく、飛行前後の安全確認も審査されます。
離陸前に飛行空域や気象状況に安全上の問題がないことを確認せず離陸する、着陸前に着陸地点とその周囲に問題がないことを確認せず着陸することは、5点減点の対象になります。
特に、着陸時に安全確認が抜けてしまうケースは珍しくないため、常に意識しておくことが大切です。
指示と異なる飛行
試験員の指示と異なる手順で飛行させる、試験員の指示と異なる方向に機体を飛ばす、減点区画に進入した際速やかに飛行経路へ復帰させないなどの飛行した場合は「指示と異なる飛行」とみなされます。
指示と異なる飛行は、5点減点の対象です。
焦りから機体の方向を間違えたり、減点区画への進入に気がつかなかったりといったミスも起こり得るため、落ち着いて集中力を保ちながら飛行させましょう。
机上試験と口述試験で減点されない
実地試験では、最初に机上試験として飛行計画の作成に関する選択問題が4問出題されます。
1問間違えると5点減点され、全問不正解なら20点となるだけでなく、制限時間は5分のみとシビアな試験です。
また、口述試験として飛行前に「飛行前点検」、飛行後に「飛行後点検・飛行後の記録」「事故・重大インシデントの報告」も行う必要があります。
飛行前点検は確認・記載漏れや誤りが1つでもあれば10点減点、飛行後点検と事故・重大インシデントの報告は1問あたり5点減点、飛行の記録は10点減点です。
机上試験と口述試験はミスが続くと大幅な減点となる可能性があるため、十分に対策しておきましょう。
ドローン国家資格の取得におすすめの勉強方法
登録講習機関を受講する場合と独学で一発試験に臨む場合のどちらも学科試験は必須なため、自主的に勉強して知識を固めておくことが大切です。
ここでは、国家資格取得を目指すためにおすすめな勉強法を3つご紹介いたします。
教則をとにかく読み込む
先述したように、ドローンの国家試験は「無人航空機の飛行の安全に関する教則」に準拠した内容となっています。
教則を読み込み、ドローンの仕組みや安全に飛行させるための流れ、航空法に関する知識などを理解しましょう。
1度の読み込みですべてを覚える必要はないため、後述する「聞き流し」と合わせて少しずつ理解していきましょう。
Youtubeなどで聞き流し
YouTubeでは、様々な人が「無人航空機の飛行の安全に関する教則」の内容を解説した動画を投稿しています。
教則の本文は文章のみで分かりにくい部分もあるため、視覚的・聴覚的に情報を伝えてくれる動画も参考にするとより覚えやすいです。
1度動画の内容を確認したら、日常的に聞き流しましょう。
問題集を何度も解く
Amazonなどの通販サイトでは、ドローンの国家資格に合わせた内容の問題集も販売されています。
ただ教則の内容を覚えるだけでなく、実際に問題を解いてみると知識が定着しやすくなります。
繰り返し問題を解き、間違えた部分は「なぜ間違えたのか」を意識しながら解き直しましょう。
ドローン国家資格の試験当日に注意すべきポイント
試験内容だけでなく、当日の行動にもいくつか注意すべきポイントがあります。
当日に慌てるような事態を避けるためにも、以下2つのポイントに十分注意して試験に臨みましょう。
本人確認書類を忘れない
試験当日は、以下いずれかの本人確認書類を提示します。
- 運転免許証
- パスポート
- マイナンバーカード
- 在留カード又は特別永住者証明書
- 住民基本台帳カード
- 身体障害者手帳
- 写真付きの社員証+健康保険証
- 写真付きの学生証+健康保険証
以下いずれかの本人確認書類がないと、試験を受けることができないため注意が必要です。
時間に余裕を持って会場に着く
試験当日は受付時間が設けられており、試験開始の30分~15分前までに受付を済ませる必要があります。
受付に遅れると、試験を受けることができなくなります。
公共交通機関を使う場合は遅延、車を使う場合は渋滞など、不測の事態で所定の時間通りに目的地へ到着できなくなる可能性もあります。
そのリスクも考慮し、時間に余裕をもって当日のスケジュールを組むことが大切です。
ドローン国家資格の難易度に関するよくある質問
最後に、ドローンの国家資格の難易度に関してよくある質問について解説いたします。
ドローン国家資格を取得するのに必要な勉強時間は?
登録講習機関では、国家資格と受験者の区分に応じて以下の通り最低受講時間が定められています。
資格区分 | 受験者 | 最低受講時間(基本) |
---|---|---|
一等資格 | 初学者 | 18時間以上 |
経験者 | 9時間以上 | |
二等資格 | 初学者 | 10時間以上 |
経験者 | 4時間以上 |
一等資格と二等資格で難易度はどれぐらい違う?
ドローンの国家資格は、一等資格の方が取得難易度が高いです。
学科試験・実地試験ともに合格基準は一等資格の方が厳しいだけでなく、一等資格では飛行に関わる距離や燃料消費量などを求める計算問題が出題されます。
一等資格はドローンを安全に飛行させる操縦者としてより高い能力が求められるため、初心者がいきなり取得を目指すことは困難であると考えられます。
国家資格を取得するなら一等と二等どちらが良い?
二等資格の取得者は、第二種以上の機体認証を取得すると一部の飛行許可申請が簡略化・免除されます。
一方で一等資格の取得者は、一部飛行許可申請の簡略化・免除に加え、第一種機体認証の取得によりレベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)が解禁されます。
ドローンの二等資格を取得または二等資格取得者に相当するスキルを持っており、事業などでレベル4飛行を実施したい場合は一等資格の取得を検討しても良いでしょう。
一方で、レベル4飛行は実施予定がない人や初心者の場合は二等資格の取得を目指すことをおすすめします。
国家資格の取得が難しいなら民間資格を選んだ方がいい?
登録講習機関では初学者向けの国家資格コースも用意されており、基礎からしっかりと指導を受けることができます。
そのため、必ずしも民間資格からスタートすべきとは限りません。
国家資格には「一部飛行許可が免除される」という独自のメリットがあるため、そのメリットの必要性が高いと感じるのであれば国家資格の取得から目指しても良いでしょう。
ただし今すぐ国家資格は必要ないものの、将来的に国家資格を取得したい場合は、民間資格から取得を目指すのもおすすめです。
民間資格を取得していると、「少ない受講時間・費用で国家資格取得を目指せる経験者コースを受ける」という選択肢が生まれるからです。
ドローン国家資格の実地試験は登録講習機関で受けた方がいい?
登録講習機関を受講すると、実地試験にあたる審査は受講していた機関で行われます。
受講時に何度も利用した環境で審査を受けられるため、一発試験で実地試験を受ける場合よりは有利となる可能性があります。
まとめ
ドローンの国家資格の合格率は公表されていないものの、出題範囲や合格基準の違いから、一等資格は難易度が高く二等資格は比較的取得しやすいといえます。
とはいえ、学科試験・実地試験のどちらも、ちょっとしたミスの連続で不合格になるケースも珍しくないため、十分な対策が重要です。
独学では取得できる自信がない方、効率的に国家資格の取得を目指したい方は、登録講習機関(ドローンスクール)で指導を受けながらスキルを身につけていきましょう。
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