1人称視点のダイナミックな映像をリアルタイムに楽しみながらドローンを操縦する、「FPV飛行」。
単純に1人称視点の映像を楽しむだけでなく、ドローンレースでもFPV飛行のスタイルが採用されていることが多いです。
しかしFPV飛行を行うには、カメラ付きドローンの他に専用のゴーグルを揃える必要があります。
そこで今回は、ドローンとFPVゴーグルの関係性やゴーグルの種類など基礎的な知識を解説したうえで、FPVゴーグルの種類や選び方、おすすめのFPVゴーグルなどをご紹介いたします。
FPVゴーグルのセットアップ方法なども記載していますので、ぜひ初めてのFPV飛行に役立ててください。
- ゴーグルの種類や特徴
- おすすめのカメラ付きドローンとゴーグルの組み合わせ
- 低価格で購入できるカメラ付きドローンとゴーグルの組み合わせ
- ドローンとゴーグルのセットアップ方法
- ゴーグルを使った撮影のコツ
ドローンとゴーグルの関係とは?
YouTubeに投稿されているドローンレースの映像などで、ゴーグルを装着しながらドローンを操縦している人を見たことがある方も多いのではないでしょうか。
このゴーグルは、「FPV飛行」という方法でドローンを飛ばすために必要なアイテムです。
FPV(First Person View)とは1人称視点を意味する言葉で、FPV飛行では文字通り1人称視点の映像を見ながらドローンを操縦します。
その際、操縦者はドローンから伝送される映像を見るためにゴーグルを装着しているのです。
ドローンに搭載されたカメラの視点とゴーグルの視点をリンクさせることで、自分がドローンのコックピットに座りながら操縦しているかのような体験ができます。
ゴーグルの種類と特徴
ドローンと一緒に使うFPVゴーグルは、大きく分けて「単眼式」と「二眼式」の2種類があります。
単眼式とは本体に1つのモニターが搭載されており、それを両目で見るタイプのゴーグルです。
二眼式よりも価格が安い傾向にあり、FPV飛行初心者から選ばれることが多いタイプでもあります。
また、横幅が広い製品が多いためメガネを着用したまま使うことができます。
しかしサイズが大きく、持ち運びに向かないという点はデメリットです。
一方で二眼式は本体に2つのモニターが搭載されており、それぞれの目でモニターを見るタイプのゴーグルです。
少ない視点移動で映像の全体を確認することができるため、広範囲の様子を把握しやすいという利点があります。
機種によっては受信機の取り替えも可能なため、自分にとって使いやすい仕様にカスタマイズしたい中級者~上級者の方に多く愛用されているタイプです。
また、単眼式よりも形状がスマートかつ軽量なため、持ち運びもしやすくなっています。
デメリットとしては、単眼式よりも機能性・カスタマイズ性・携帯性に優れている分、価格も高い傾向にあるという点です。
初心者の方にはハードルが高く、エントリーモデルとしては適していません。
カメラ付きドローンとゴーグルの選び方
カメラ付きドローンと一緒にゴーグルを購入する際は、種類以外にも様々なポイントに注目しながら選ぶことが大切です。
ここでは、カメラ付きドローン・ゴーグル選びにおいてチェックするべき主なポイントをご紹介いたします。
ドローンのカメラの解像度や解像度
映像の美しさにこだわる場合、ドローンに搭載されているカメラの解像度に注目してみましょう。
4K動画の撮影に対応している空撮特化のFPVドローンも販売されており、より空を飛んでいるかのような没入感を味わうことができます。
ゴーグルのアスペクト比や解像度
ドローンのカメラにおけるアスペクト比は「4:3」と「16:9」の2通りで、前者は真四角に近い画像となり後者は横幅の広い画像となります。
ゴーグルのアスペクト比は、ドローンのカメラと同一の値となるようにしましょう。
ドローンのカメラとゴーグルのアスペクト比が一致していないと、映像が間延びしたり圧縮されたりするからです。
カメラ付きドローンとゴーグルの互換性
カメラ付きドローンとゴーグルを別々に購入する場合、互換性にも注目して選ぶ必要があります。
以前までドローンのVTX(映像信号をゴーグルに送信するパーツ)はNTSC/PAL形式のアナログビデオ信号を送信するタイプが主流でしたが、近年は独自のデジタル信号で送信する製品も多く登場しています。
デジタル方式はノイズが少なくクリアな映像を楽しめる反面、アナログ方式のゴーグルでは見ることができないため注意が必要です。
互換性で迷ったら、まずはカメラ付きドローンとそれに対応したゴーグルがセットになっている製品を購入しても良いでしょう。
おすすめのカメラ付きドローンとゴーグルの組み合わせ
個別に販売されているカメラ付きドローンやゴーグルの中から、おすすめの組み合わせを4通りご紹介いたします。
DJI Mavic 2 ProとDJI FPVゴーグルV2
DJIから販売されている人気のカメラ付きドローン「DJI Mavic 2 Pro」と、同社製ゴーグル「DJI FPVゴーグルV2」の組み合わせです。
Mavic 2 Proには老舗カメラメーカーのハッセルブラッド社が開発した、2000万画素1インチCMOSセンサーが採用されています。
なおかつ4K/30fpsの映像撮影に対応、F値の幅は2.8~11までの変更に対応しており、小型ながらDJIにおける名機「Phantomシリーズ」に匹敵するレベルでの空撮が可能です。
カメラ性能だけでなく、最大伝送距離8,000m・最高速度72km/hと優れた飛行性能も兼ね備えています。
プロの映像クリエイターも使用する、小型のカメラ付きドローンが映し出す美しい景色をFPVゴーグルで楽しんでみてはいかがでしょうか。
なお、DJI FPVゴーグルV2の電波帯は2.4GHzと5.8GHzの両方に対応しており、自動で周波数帯を選択する仕様となっています。
Autel Robotics EVO II と Fat Shark Dominator HDO2
Autel Robotics製の高性能カメラ付きドローン「Autel Robotics EVO II 」と、同じく映像の美しさに優れた高性能ゴーグル「Fat Shark Dominator HDO2」の組み合わせです。
Autel Robotics EVO IIは折りたたみ式ドローンとして世界最小クラスのサイズかつ、8K/6Kの動画撮影に対応したプロ向けモデルです。
カメラには1/2インチCMOSセンサーとF値1.8のレンズを搭載しており、ズーム倍率は1~8倍となっています。
最長40分間の飛行を可能とし、最大5.5km離れた場所でも映像とテレメトリーの送信を実現していることも特徴です。
Fat Shark Dominator HDO2は解像度1280×960の有機ELモニターを採用した、2眼式のFPVゴーグルです。
フォーカス調整ホイールで焦点距離の調整が可能なため、視力の悪い方でも調整用レンズなしで視力補正を行うことができます。
アスペクト比は4:3と16:9のいずれかに切り替え可能となっており、録画にも対応しています。
ただし受信機やFPVアンテナは付属していないため、別途購入が必要です。
Skydio 2とSkyzone SKY04X V2
アメリカのドローンメーカー、Skydio製のカメラ付きドローン「Skydio 2」と人気のFPVゴーグル「Skyzone SKY4X V20」の組み合わせです。
Skydio 2は3軸ジンバル搭載で4K/60fpsの動画撮影に対応したカメラを採用しており、角度は200°まで調整が可能です。
撮影用カメラに加えて障害物検知用のカメラが5台搭載されていることも特徴で、撮影した情報を瞬時にコンピューターが処理し、自動で回避してくれます。
飛行速度は最大58km/hと前モデルから約18km伸びており、バッテリーの持続期間も23分まで延長しています。
全モデルと比較して全体的にスペックが向上しているにもかかわらず、価格は半分以下というコストパフォーマンスの高さも魅力です。
一方でSkyzone SKY4X V20は、初心者から上級者まで幅広いユーザーに愛用されている人気の二眼式ゴーグルです。
Skydio 2と同じく60fpsの滑らかな映像を録画することができ、OLEDディスプレイの採用により鮮明かつ高コントラストな画質で楽しむことができます。
屈折度はマイナス6〜プラス6まで幅広く調節可能なため、近視の方と遠視の方のどちらも使うことができます。
DJI Phantom 4 Pro V2.0とEpson Moverio BT-300
DJIの代表的空撮用ドローンであるPhantomシリーズの現行モデル、「DJI Phantom 4 Pro V2.0」と、日本国内において有名な電機メーカーであるエプソン製のゴーグル「Epson Moverio BT-300」です。
Phantom 4 Pro V2.0のカメラは従来のPhantom4と同様に1インチ20MPのCMOSセンサーを搭載しており、4K/60fpsの映像撮影が可能です。
また、後方搭載されたデュアル・リア・ビジョンセンサーと左右の赤外線センサーが5方向の障害物を検知し、GPSがない環境でも障害物を自動で回避しながら安全に飛行することができます。
Epson Moverio BT-300は、一般的なFPVゴーグルとは異なりややフレームに厚みのあるメガネのような形状が特徴的です。
使用中はシースルーのグラスの一部に映像が表示され、ドローンから伝送される映像と現実の光景を同時に見ることができます。
目視外飛行とならないため操作がしやすく、同時に迫力満点なFPV映像を楽しめるため初心者の方にもおすすめです。
DJIがリリースしている専用アプリ「DJI GO –For products before P4」などを使うことで、Phantom 4 ProなどDJI製ドローンとの接続が可能になります。
お試しに最適!低価格で購入できるカメラ付きドローンとゴーグルの組み合わせ
高機能なカメラ付きドローンやFPVゴーグルは、それぞれ数万円〜10万円程度と決して安くはないコストが伴います。
FPV飛行を本格的に始めたい方に先述した機種はおすすめですが、気軽にFPV飛行で遊びたいという場合には不向きです。
ここでは、どちらもリーズナブルな価格で販売されているカメラ付きドローン・ゴーグルの組み合わせをご紹介いたします。
まずFPV飛行の感覚を試すことができる機種をお探しの方は、こちらを参考にしてみてください。
Potensic A20WとVR BOX 3Dメガネ
中国のドローンメーカーであるPotensic製のミニドローン「A20W」と、スマートフォンを取り付けてVRゴーグルにできる「VR BOX 3Dメガネ」の組み合わせです。
A20Wは手のひらサイズのコンパクトなカメラ付きドローンで、720PHD画質の映像を撮影することが可能です。
専用アプリをインストールしたスマートフォンとの連携に対応しており、スマートフォンの画面上に空撮映像がリアルタイムに確認できます。
一方でVR BOX 3Dメガネは、モニターの代わりに自分のスマートフォンを内部に装着してFPVゴーグルとして使うことができるアイテムです。
スマートフォンはA20W付属のプロポにも装着することができますが、VR BOX 3Dメガネを使えば視界全体に映像が広がるためより臨場感が増すことでしょう。
A20WとVR BOX 3Dメガネを合わせて6,000円もかからず、非常にコストパフォーマンスの高い組み合わせです。
Holy Stone HS210とSAMONIC VRゴーグル
世界各国で人気を集めている中国のドローンメーカー、Holy Stone製ミニドローンの「HS210」とスマートフォンを装着してFPVを楽しめる「SAMONIC VRゴーグル」の組み合わせです。
HS210は全方位型のプロペラガードを搭載した安全性の高いミニドローンで、機体に搭載されたカメラは720Pの映像撮影に対応しています。
スマートフォンと連携してリアルタイム映像を楽しむことができる他、スマートフォンをプロポの代わりにして操縦することも可能です。
SAMONIC VRゴーグルは、先述した「VR BOX 3Dメガネ」と同じく内部に自分のスマートフォンを装着して使用するFPVゴーグルです。
瞳孔距離・焦点距離の調節機能を搭載した本格的なモデルで、視力の弱い方も裸眼でFPV飛行を楽しむことができます。
HS210とSAMONIC VRのコストは合計で11,000円程度となり、コストを少し上げる代わりに機能性が充実した機種を使いたいという方におすすめです。
DBPOWER DC-014とSAMONIC VRゴーグル
中国の電化製品ブランドDBPOWER製のドローン「DBPOWER DC-014」と、「SAMONIC VRゴーグル」の組み合わせです。
DC-014のカメラは1920x1080PフルHD画質の映像撮影に対応しており、120°まで角度調整が可能なため高解像度かつ広範囲の風景を映像で楽しむことができます。
また、ヘッドレスモードが搭載されているため、ドローンの機首がどこを向いていても直感的に操縦することが可能です。
上記の「HS210」と同じく、専用アプリをインストールしたスマートフォンをSAMONIC VRゴーグルに装着すれば臨場感あふれる映像が視界いっぱいに広がります。
DC-014とSAMONIC VRゴーグルのどちらも揃えると、総額にして14,000円程度となります。
先述した2通りの組み合わせよりも、さらに映像・機能性のランクを上げたい方におすすめです。
カメラ付きドローンとゴーグルのセットアップ方法
カメラ付きドローンとゴーグルを購入したら、ドローンからゴーグルへ映像が伝送されるように接続をする必要があります。
また、快適に映像を楽しむためにゴーグルの設定も済ませておきましょう。
ドローンとゴーグルの接続方法
ドローンとゴーグルの接続方法は機種によって異なるため、付属の取扱説明書などを参考にしながら接続を行いましょう。
例えば先述した「Skyzone SKY04X V2」の場合、付属の受信用アンテナを取り付けたうえでバッテリーとゴーグルをケーブルで接続します。
あとはゴーグルの設定を行い、ドローンの電源を入れるとモニターにカメラが捉えた映像が映し出されます。
なお、「Fat Shark Dominator HDO2」など機種によっては受信機やFPVアンテナが付属していない場合があるため、別途用意のうえセットする必要があります。
ゴーグルの設定方法
2眼式ゴーグルの場合、IPD(瞳孔間距離)の数値を設定する必要があります。
瞳孔の間の距離は人によって微妙に異なりますが、日本人は男性なら64mm程度、女性なら60mm程度が平均値です。
実際にゴーグルの中を覗き込んで映像の見え方を確認しながら、本体に付属しているボタンなどを使って片目ずつ調整していきましょう。
ゴーグルを使ってドローン飛行する際の撮影テクニック
ドローンとゴーグルのセッティングが終わったら、実際にFPV飛行を楽しんでみましょう。
自分でFPV映像を楽しむだけでなく、作品として映像のクオリティを高めたい場合は以下のポイントを意識することが大切です。
ゴーグルでの風景撮影のポイント
ドローンで風景を撮影する際に重要となるのが、全体の構成です。
ただやみくもに撮影しただけでは、ストーリー性に欠けた作品となってしまいます。
特にドローンで撮影をすると俯瞰的なアングルが続き単調になりやすいため、カメラワークに変化を付けることが大切です。
「全身からの横移動」や「回転を加えつつ後退」、「目線の高さから徐々に高度を上げる」など、複数の動きで撮影した映像を組み合わせることで飽きの来ない映像にすることができます。
ゴーグルでの動画撮影のポイント
風景撮影においても通じるポイントですが、ドローンで動画を撮影する際は「一定の速度を保つ」ことが最も重要です。
急な減速や加速を行うと機体が振動し、映像の乱れにつながります。
撮影位置を決めたらプロポのスティックを一定の角度まで倒し、固定することを意識しましょう。
また、道行く人や街を走る車の流れなど、常に変化する光景を撮影する場合はホバリングの技術も役立ちます。
ゴーグルを使用してドローンを飛行させる際の注意点
ゴーグルを使ってドローンのFPV飛行を楽しむ場合、「電波法」と「航空法」のルールを遵守しなければなりません。
FPVゴーグルのほとんどは5.8GHz帯の電波が使われていますが、この電波を無断で使用すると電波法違反とみなされ罰則の対象になります。
日本国内で5.8GHz帯のドローンを使う場合、「アマチュア無線技師(4級以上)」または「陸上特殊無線技士(3級以上)」の免許取得が必要です。
さらに、どんな無線機を所有・管理しているのかを申告する「開局申請」も済ませてようやくFPV飛行を楽しむことができます。
また、ゴーグルを装着しながらのFPV飛行は航空法で規制されている「目視外飛行」に該当します。
ドローンの重量が100g以上かつ、屋外でFPV飛行を行う場合は国土交通省への飛行許可申請も必要です。
まとめ
ドローンは機体を見ながら飛行させる他に、専用のゴーグルを装着して1人称視点の映像を楽しむ「FPV飛行」もおすすめです。
FPV飛行に対応したカメラ付きドローンとゴーグルを揃える際は、解像度やアスペクト比、製品の互換性を必ず確認しておきましょう。
また、視力の弱い方は焦点距離調整機能の有無もチェックしておくことをおすすめします。
法規制に十分な注意を払いつつ、FPVゴーグルを通して空を飛んでいるかのような没入感を味わってみてはいかがでしょうか。
この記事と一緒によく読まれている記事
-
ドローンの免許(国家資格)の取得には年齢制限がある?何歳から取得できる
-
水中ドローンの操縦に免許は必要?水中ドローンに関する資格を解説
-
ドローンの操縦に無線技士の資格は必要?必要なケースや資格の取得方法を解説!
-
ドローン測量管理士とは?新しく登場したドローン測量の資格を取得する方法を解説!
-
海でドローンを飛ばす際の規制や必要な許可申請は?海で飛ばす時のルールを解説
-
ドローン国家資格の取り方を解説!取るまでの手順や取得期間はどれぐらい?
-
ドローン国家資格の難易度は高い?試験の合格率や勉強時間はどれぐらい?
-
ドローンを使った橋梁点検とは?メリット・デメリットや橋梁点検で使用される新技術を解説!
-
ドローンの目視外飛行は飛行許可が必要?目視外飛行を行う条件や練習方法を解説!
-
100g未満のドローンを飛ばせる場所を解説!チェックすべき法律や飛行ルールは?
-
ドローンの高さ制限を解説!ドローンを飛ばせる高度はどこまで?
-
ドローンサッカーってどんな競技?ルールや始め方を詳しく解説