世界規模で行われる家電製品の祭典「CES」で特に注目を集めたメーカーとして知られている、「Yuneec」をご存知でしょうか。
実はあのIntelも機体開発に協力しているドローンメーカーで、強いブランド力を持つDJIやParrotなどに引けを取らない技術力を持っています。
今回はYuneecとはどのようなメーカーなのかを、歴史や世界における立ち位置、各機種に共通する特徴など様々な視点から徹底解説いたします。
Typhoonシリーズなどの代表的な機種や新製品情報もご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
- Yuneecとは
- Yuneec製ドローンの特徴
- Yuneecの代表的なドローン
Yuneecとは
Yuneec(ユニーク)とは、中国の江蘇省に拠点を置くドローンメーカーです。
元はアメリカのホビー製品メーカーであるHorizon Hobbyなど、他社ブランドを通して製品を販売していたラジコン模型航空機のメーカーでした。
その後は世界トップクラスの半導体メーカーIntelの協力を得ながら、民生用ドローンの製造・販売に転換しています。
2016年に開催された世界規模の家電製品イベント「CES」、同年に幕張メッセで開催されたドローンの祭典「JAPAN DRONE 2016」に出展されたYuneec製ドローンはひときわ注目を集め、その名を世界に知らしめるきっかけともなりました。
Yuneecの歴史
1999年に設立されたYuneecは他のドローンメーカーと比較して歴史のある企業ではありますが、当初は主に無人・有人航空機の製造を行っていました。
2010年には大規模な電動航空機のイベントWorld Electric Aircraft Symposiumにて、同社製の有人航空機「E430」が賞を獲得したという実績も残しています。
Yuneecが民生用ドローンの製造に注力をし始めたのは2014年のことで、「すぐに飛ばせるドローン」としてクアッドコプターのTyphoon Q500を発表しました。
さらに2015年、世界でトップクラスのシェア率を誇る半導体メーカーIntelより、6,000万ドルもの投資を受けたことで大きな話題となっています。
また、2019年にはドイツに本社を構える有名カメラブランドLeicaと共同開発を行いプロカメラマン向けのドローンも発表しました。
Yuneecは世界の有名メーカーと協力しながら、今日に至るまで産業用途を中心に幅広いニーズに応える高性能ドローンを生み出し続けています。
世界・日本から見るYuneecの現在の立ち位置
Yuneecは香港・上海・ロサンゼルス・ハンブルグなど海外にも複数の支社を構え、事業を世界規模で展開しています。
2021年にDrone Industry Insight社が発表したアメリカのドローンシェアランキングによると、全体に対し2.6%のシェア率を獲得しており3位にランクイン。
日本国内ではあまりYuneecの名を目にする機会が多くありませんが、中国・アメリカを中心に、海外ではDJIに匹敵するほどの知名度を得ているメーカーです。
Yuneec製ドローンの特徴
Yuneecは主な事業を民生用ドローン分野へ転換してからは、一般消費者向けドローンを中心に製造していました。
現在は産業用途を前提としたドローンの製造・販売をメインとしていますが、当初から
ブラックやシルバーを基調とした無骨でクールな機体デザインは共通しています。
IntelやLeicaの技術提供を得ているだけあり、各機種における性能の高さも折り紙つきです。
Yuneecを代表するドローン機種
Yuneec製ドローンの中でも、特に有名な機種をご紹介いたします。
1.Typhoon Q500 4K
2016年に「Typhoon Q500」の上位モデルとして発売された、4Kカメラ搭載の撮影用ドローンです。
当時はホワイトハウスや首相官邸へのドローン墜落事件など国内外でドローン関連の事件が続けざまに発生しており、業務用ドローンに対する安全性への懸念が強い時期でした。
そのような状況を踏まえ、Typhoon Q500 4KはGPSの内蔵により法律で定められた飛行可能地域を超えないように制御できる機能が搭載されました。
もちろん撮影用ドローンとしての性能も申し分なく、4K映像や12メガピクセルの写真撮影に対応しています。
さらに映像を撮影しながら25分間と長時間の飛行が可能なこと、被写体を自動で追尾するフォローミー機能が搭載されていることも特徴です。
液晶が内蔵された送信機や手持ちジンバルも付属しており、誰でも本格的な映像・写真撮影を行えるラインナップでありながら価格は約15万円と比較的抑えられています。
2.Typhoon H
2016年に発売された撮影用ドローンで、「もっと高度な機能を搭載したドローンが欲しい」というユーザーの声に応え、衝突回避を含めハイエンドなプロ向けの機能を複数搭載していることが特徴です。
当時としては新しいCGO3+カメラを搭載した360°ジンバルカメラは、4K映像と12メガピクセルの写真撮影に対応。
「Point of Interest」「Orbit」「Curved Cable」など多彩な飛行・撮影モードも搭載し、思い描いた通りの撮影を実現しやすくなっています。
Typhoon Hには「通常仕様」と「プロ仕様」という2種類のバージョンがありますが、後者にはIntel社の自動衝突回避システムが実装されていることも大きな特徴です。
革新的な安全機能の数々に加え、モーターが停止しても飛行の安定感を保つフェイルセーフシステムを併せ持っています。
Typhoon Hは6つのローターを搭載したヘキサコプターでありながら、ライバル機のPhantom4よりもやや大きい程度のサイズ感で折りたたみも可能です。
カーボンファイバーを採用した付属のハードケースは頑丈かつ軽量で、撮影場所への持ち運びが容易となっています。
3.TORNADO H920
映像作家や写真家などのプロ向け撮影用ドローンシリーズ、「TORNADO」の1作目となる機種です。
大型なドローンですが機体には非常に軽く頑丈なカーボンファイバーを採用しており、格納式の着陸用ギアや折りたたみ可能なアームを採用し、使用時以外はコンパクトに収納することができます。
ホームポイントへの自動帰還・着陸機能が標準搭載されている他、複数の別売りカメラの装着が可能な点も特徴です。
その中でもTORNADO H920用に設計された4Kカメラ「CGO4」では、高精細な写真・映像撮影を実現します。
他にも、Yuneec製V18カメラやPanasonic製のGH4、SONY製のα7Rも装着可能です。
大容量バッテリーで最大40分以上もの長時間飛行が可能となっており、写真・映像作品の制作だけでなくスポーツイベントの撮影や建造物の点検、土地の検査など幅広い業務に活躍する機種です。
4.H520
2017年に発売された、Yuneec初の産業向けドローンです。
明るいオレンジ色の本体と6つのローターが特徴的な機体で、産業・商用環境での使用を前提とした設計になっています。
カメラはYuneec製ハイレゾカメラ「E90」の他、E50やCGO-ETの搭載にも対応。
E90は20メガピクセルで1インチのSony ExmorセンサーやAmbarellaのH2高速画像プロセスチップを採用しています。
非常に鮮明な写真・映像を撮影することができ、2D・3Dのマッピングや映画製作に適したカメラです。
焦点距離が中距離なハイレゾカメラのE50は点検作業や番組撮影、CGO-ETのdual thermal-RGBカメラは救助・捜索活動や太陽光検査での使用に適しています。
各カメラは機体の電源が入ったまま交換が可能なため、業務における時間短縮につながることもポイントです。
また、H520は「チームモード」と呼ばれる2つのプロポによる操縦にも対応しています。
1人の操縦者が機体の動きを制御する一方、もう1人の操縦者はカメラ部分のみの操作を行うといった活用方法も可能です。
5.H850
H850は建造物の検査や測量、救助活動、公安用途などを前提に設計されたヘキサコプターの産業用ドローンです。
従来のドローンと比較して動力性能・安全性・安定性・ペイロードなどが大幅に向上しており、より重さのある装備品を搭載しても安全に飛行しながら業務を実行できるようになりました。
さらに、H850を通して取得したデータの漏えいも防ぐセキュリティ性も強化されていることも特徴です。
ペイロードや気象条件によっては最大で65分間の長時間飛行が可能で、万が一飛行中に1つのローターが故障しても5つのローターだけで飛行を続け、安全に着陸することができます。
6.Mantis Q
Yuneec製ドローンの中でも低価格かつコンパクトサイズな、一般消費者向けドローンです。
機体に搭載されたカメラは4K画質またはフルHD画質の30fps・60fpsで映像を撮影することができ、フルHD画質の場合のみ電子スタビライザーが作動します。
通常時は最高速度25km/hで約33分間の連続飛行が可能ですが、「スポーツモード」の使用時は約72km/hで飛行することができます。
折りたたみ可能なアームと全体的な機体デザインが相まってライバル機のDJI Mavicシリーズを思わせる外見ですが、程よい高さのスペックで手が届きやすい価格を実現している機種です。
カメラを安定させるためのジンバルがなく、代わりに搭載された電子スタビライザーは4K撮影時に作動しないというデメリットはあるものの、本格的な空撮にチャレンジしたい一般的なユーザーであれば申し分ない性能と言えます。
Yuneec直近の新製品発表の動向
2023年3月現在、Yuneecから新製品の情報に関して公表されている情報はありません。
最後に発表された製品は2020年1月に発売となったH520用ズームカメラ「E30Z」で、それ以降は製品に関わる情報が更新されていない状況です。
Yuneecに関するよくある質問
最後に、Yuneecに関してよくある質問を解答と一緒にまとめました。
Q1.Yuneecのドローン「breeze」は販売されていますか?
Yuneec製のセルフィ―ドローンである「breeze」は、販売終了となっています。
Q2.日本にYuneecの正規販売代理店はありますか?
Yuneecと正規販売代理店契約を交わした国内企業としては「株式会社SDC」がありますが、現在も販売している旨の情報は確認することができていません。
Q3.Yuneec製ドローンの操縦に免許は必要ですか?
Yuneec製ドローンは基本的に5.8GHzの電波帯を使用しているため、「無線免許」の取得と開局申請が必要になります。
また、公式オンラインショップや海外の通販サイトから購入した場合、技適認証を取得した証明となる「技適マーク」がない場合が多いです。
技適マークは個人で取得することが難しく、未取得のまま国内で使用すると法律違反となるため注意しましょう。
まとめ
Yuneecは中国に本社を構えるドローンメーカーで、中国やアメリカを中心に海外で高い知名度を誇ります。
特にアメリカではドローンシェアランキング3位に獲得したこともあり、多くのファンを抱えていることが伺えます。
IntelやLeicaなど世界的に有名なメーカーから技術提供を受けているYuneec製のドローンは、性能の高さはもちろん主に男性に好まれやすい無骨なデザインも特徴的です。
製品ラインナップとしては写真家や映像作家などプロのカメラマンに役立つ本格的な空撮ドローンや、点検・建造物検査・救助活動など幅広い分野で活躍する産業用ドローンがメインです。
日本国内でYuneec製ドローンを目の当たりにできる機会は滅多にないものの、世界の産業用ドローン市場で活躍する有力なドローンメーカーとして今後の動向に注目を続けていきたいところです。
この記事と一緒によく読まれている記事
-
ドローンショーの仕組みを解説!演出や操縦はどうやっている?
-
ドローンを使ったスマート農業を解説!農業用ドローンの主な用途とは?
-
ドローンの免許(国家資格)の取得には年齢制限がある?何歳から取得できる
-
水中ドローンの操縦に免許は必要?水中ドローンに関する資格を解説
-
ドローンの操縦に無線技士の資格は必要?必要なケースや資格の取得方法を解説!
-
ドローン測量管理士とは?新しく登場したドローン測量の資格を取得する方法を解説!
-
海でドローンを飛ばす際の規制や必要な許可申請は?海で飛ばす時のルールを解説
-
ドローン国家資格の取り方を解説!取るまでの手順や取得期間はどれぐらい?
-
ドローン国家資格の難易度は高い?試験の合格率や勉強時間はどれぐらい?
-
ドローンを使った橋梁点検とは?メリット・デメリットや橋梁点検で使用される新技術を解説!
-
ドローンの目視外飛行は飛行許可が必要?目視外飛行を行う条件や練習方法を解説!
-
100g未満のドローンを飛ばせる場所を解説!チェックすべき法律や飛行ルールは?