ドローンメーカーといえば、業界最大級のシェアを誇る「DJI」が有名ですが、ドローンの歴史に深く関わる「Parrot」も忘れてはならない存在です。
今回の記事では、Parrotとはどんなメーカーなのか?ドローンの歴史にどう関わった企業なのか?などについて詳しく解説すると共に、代表的な機種もご紹介いたします。
一時期話題となった「ミニドローン事業からの撤退」についても解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
- Parrotとは
- Parrotの代表的な機種
- Parrot 直近の新製品発表の動向
Parrotとは
Parrot社は、1994年に創業したフランスのドローンメーカーです。
元々エンジニアリング集団として有名な企業でしたが、後に発売を開始した民間ドローン「AR.Drone」で社名が世界中に広まりました。
民間ドローンのパイオニア的存在でもあり、ホビー向けのドローンも多数開発してきたのですが、2019年にはミニドローン(ローエンド)事業を撤退しています。
そのため、現在ではプロ向けのハイエンドドローンを主体とした事業に転向しています。
ミニドローン徹底の理由は?
Parrotがミニドローン市場から撤退した理由は、ライバル会社のDJIにあります。
Parrotも世界シェア4位になるほどの競争力はあったのですが、世界最大のシェアを誇るDJIを相手に戦い続けるのは現実的ではありませんでした。
シェア率の差は、Parrotが2.5%なのに対して、DJIは76.1%と歴然であり、圧倒的な競争力に対抗する術がなく、業界から撤退せざるを得なくなったと考えられます。
現在では、Parrot社の持つ技術力を活かした高性能ドローンを中心に開発しており、セキュリティの観点から軍用ドローンとして使用されることも増えています。
参考:https://droneii.com/drone-market-shares-usa-after-china-usa-disputes
Parrotの歴史
Parrotは1994年、フランスのアンリ・セイドゥ氏により設立された企業です。
当初は端末を手に持たずとも通話ができるハンズフリー製品を展開しており、その他にも音響特化のワイヤレス周辺機器に定評がありました。
しかし、2010年にWi-Fi経由で操縦が可能な民間ドローン「AR.Drone」を発表したことを機に、Parrotは一躍世界的に有名な企業となります。
そんな「AR.Drone」は、今では当たり前となったスマホと連携して機体を操縦するミニドローンの先駆けとなりました。
AR.Droneは、iPhoneやiPadをコントローラーとして使い、コンピューターによる自動姿勢制御を機体に搭載することで、一般の人でも簡単に飛ばせる操作性を実現しています。
先進的な機能性を備えている上に、軍事用ではないドローンを初めて販売したParrotは、国内外でドローンの認知度を急速に高めた存在となりました。
世界・日本から見るParrotの現在の立ち位置
最初の民間ドローン「AR.Drone」は、独特のフレーム形状をしていますが、、発売当初はこの形状がドローンとしてのスタンダードとして認識されていました。
一時は世界トップクラスのドローンメーカーという位置づけにありましたが、DJIの台頭によってその座を譲ることとなります。
日本においてもParrotは知名度が高いドローンメーカーのひとつで、複数の国内企業と正規代理店契約を交わしています。
そのため国内でもしっかりとしたサポートの元で購入することができ、日本人にとってもParrot製ドローンは身近な存在といえるでしょう。
Parrot製ドローンの特徴
Parrot製ドローンは、他社製ドローンと比較して、ユニークなデザインが特徴です。
近年流通しているドローンは、DJI製の機体を意識した直線的な印象のあるデザインが多い傾向にあります。
一方で、Parrot製ドローンは、航空宇宙や軍事における設計の流れを汲んでおり、フランスにおけるドローン業界の文化が垣間見える独特な形状をしています。
さらに、スマホへのリアルタイム映像伝送が可能な他、自動姿勢制御がもたらす高い安定性も魅力です。
また、固定翼の採用により動力を抑え、長時間の連続飛行を実現した機種もあります。
Parrot製ドローンの価格帯は、現在2万~13万円程度となっています。
カメラ付きドローンの相場としてはやや安価な傾向にあり、ある程度操縦を覚えてきた方で、もうワンランク上の空撮ドローンを欲しいと考えている初心者~中級者におすすめです。
Parrotを代表するドローン機種
Parrotを代表するドローンを紹介します。
各機種がどのような特徴を持っているのか詳しく見ていきましょう。
1.AR.Drone 2.0
「AR.Drone 2.0」は、世界初の民間ドローンと言われる「AR.Drone」の後継機です。屋外用ハルと屋内用ハルが1つずつ付属しており、飛行させる環境に合わせて着脱できます。
屋内用ハルは、4つの大きな円が繋がって四角形となったような、曲線的かつ独特な形状になっています。
大きさの割に軽量ですが、丈夫な作りで高い安全性も魅力です。
機体の前方に搭載されているカメラは720p/30fpsのHD画質に対応しており、静止画・映像の撮影が可能となっています。
前機種から引き継がれた超音波高度計の他に気圧計も搭載し、障害物が多い条件下でも正確に高度を検知できます。
また、前機種と同様にiPhoneやiPadを使った操縦も可能です。
サイズ | 350×250×110mm |
重量 | 380g |
カメラ | 720p 30fps HDカメラ |
飛行時間 | 36分 |
操作可能距離 | 50m |
充電時間 | ー |
2.ANAFIシリーズ
ANAFIシリーズは、Parrot製ドローンの中でも特に人気が高い機種で、4K HDR対応カメラを搭載している空撮ドローンです。
カメラはソニー製の1/2.4型センサーを備えており、明暗の差が激しい環境下でも黒つぶれ・白飛びが少ない鮮明な映像を撮影することができます。
同社製「Bebop」にはない3軸補正機能付きジンバルを搭載しているため、映像のブレも大幅に抑えられています。
最新機種は4Gインターネットへの接続が可能な「ANAFI-Ai」で、価格は約60万円と高額です。
その他にも、アメリカ軍向けに開発された「ANAFI-USA」が開発されるなど、Parrotの人気シリーズはプロ向けドローンとしての地位を築いています。
サイズ | 320 x 440 x 118mm |
重量 | 898g |
カメラ | 1080p 60fps 4K UHDカメラ |
飛行時間 | 32分 |
操作可能距離 | ー |
充電時間 | 約2時間 |
※ANAFI-Aiの場合
3.bebop 2
「Bebop」シリーズの現行モデルとなる機種で、FPV飛行に対応している空撮ドローンです。
本体・プロポ・バッテリーの他にFPVゴーグルも付属しており、FPV飛行に必要な物がすべて揃っています。
前機種と同じく1400万画素の魚眼レンズを採用した特別設計のカメラを搭載していますが、調整可能な角度が広がったためよりイメージに近い映像撮影を行えるようになりました。
機体設計は前機種から一新されており、従来よりもプロペラサイズが大きくなった一方で軽量化を実現しています。
そのため、従来の倍近くである25分間間の連続飛行を可能としました。
また、プロペラを変更したことで最高速度は水平方向で時速60km・垂直方向で時速21kmを実現している他、わずか18秒で高度100mへの到達が可能という優れた飛行性能も兼ね備えています。
世界的に有名な山、モンブランの標高3,300m地点で動作テストが行われており、過酷な環境下にも耐えうる性能も実証されています。
サイズ | 380 x 330 x 90mm |
重量 | 525g |
カメラ | 1080p 30fps フルHDカメラ |
飛行時間 | 25分 |
操作可能距離 | ー |
充電時間 | ー |
4.Mamboシリーズ
Mamboシリーズは、重量100g未満の軽量なドローンシリーズで、用途に合わせて「FLY」 「PILOT」 「MISSION」 「FPV」の4種類から選ぶことができます。
どの機種にもEasy・Drift・Racingという3つの飛行モードが搭載されており、レベルに合わせて段階的に操縦技術を身に付けることが可能です。
4種類のMamboは、以下の通り付属品に違いがあります。
- FLY:本体+プロペラガード+バッテリー+USBケーブル+クリップ+ユーザーガイド
- PILOT:本体+FLYの付属品+専用プロポ
- MISSION:本体+PILOTの付属品+アーム+スナップ+砲台+プロペラ+スマホサポート
- FPV:本体+FLYの付属品+FPVカメラ+FPVゴーグル
シンプルに操縦だけを楽しむならFLYやPILOT、遊び心のあるドローンを求めるならボールを飛ばしたり物を掴むことができるMISSION、これからFPV飛行にチャレンジしてみたいという方はFPVがおすすめです。
サイズ | 180 x 180 mm |
重量 | 63g |
カメラ | ー |
飛行時間 | 9分 |
操作可能距離 | ー |
充電時間 | 30分 |
※MAMBO FLYの場合
5.Rolling Spider
Rolling Spiderは、機体重量がわずか55gの軽量な小型ドローンです。
最大の特徴は機体の上部に装着できる車輪のような大型パーツで、装着したまま飛行すれば障害物から機体が守られる他、天井や壁を駆け上がることができます。
Rolling Spiderには3軸速度計や3軸ジャイロスコープが搭載されており、機体の動きや傾きを測定・分析しつつ、垂直カメラが捉える地上の画像を元に移動速度を制御しています。
高機能な姿勢制御システムで優れた安定性を実現しつつ、機体の軽量さを活かして高速飛行や素早い宙返りなど機敏性に富んだ飛行が可能なことも特徴です。
また、本体を空中に放り投げるとセンサーが作動して自動的にモーターが起動し、ホバリング状態となる機能も付いています。
iPhoneまたはAndroidによる操縦が可能で、ワンタッチ操作による離着陸の他にもスマートフォンを傾けて移動させることができます。
サイズ | ー |
重量 | 55g |
カメラ | 対応 |
飛行時間 | 8分 |
操作可能距離 | 20m |
充電時間 | 90分 |
6.DISCO FPV
DISCO FPVは一般的なドローンとは違い、固定翼で飛行機のような形状となっている機種です。
発売当初の価格設定は18万円でしたが、後に13万円程度まで値下げされました。
垂直プロペラがないため本体を投げて離陸させる必要があり、上空に放たれると機体後方のプロペラが回転し、自動で姿勢を制御しながら飛行を開始します。
自動着陸機能も搭載されており、機体を一定の高度まで下げてからボタンを押すだけで、自動的に最適なポイントを探して着陸することが可能です。
着陸時は操縦者に向かって移動しますが、ヘッドレス機能はないため通常時と逆方向の操作となるため慣れが必要です。
DISCO FPVは名前の通りFPV飛行に対応しており、付属のFPVゴーグルを装着して楽しむことができます。
常に旋回しながら飛行するドローンなので、本物の鳥に近い視点を体験することができるのは他のドローンでは味わえない魅力です。
サイズ | 1150 x 580 x 120mm |
重量 | 750g |
カメラ | 1080p フルHDカメラ |
飛行時間 | 45分 |
操作可能距離 | 2km |
充電時間 | ー |
Parrot 直近の新製品発表の動向
Parrotにおける最も新しい機種は、2021年1月に発売された「ANAFI Ai」です。
ドローンは機体とプロポの通信をWi-Fi回線で行うケースが一般的でしたが、ANAFI Aiは4Gモジュールを搭載し、上空LTE回線を利用した4G回線での通信が可能となりました。
これにより通信範囲が制限されることはなく、低遅延で映像を伝送することができます。
さらに、カメラ性能も向上しており、4K60fpsの鮮明な映像を撮影することもできますし、48MPの1/2CMOSセンサーの採用により、高倍率ズームでも画像のクオリティが保たれます。
撮影した写真を元に、「FreeFlight 7」というアプリを使って検査や測量の実施も可能です。
ハイエンドドローン事業に方針転換を遂げたParrotらしく、業務活用にも申し分ない機能性と時代に適合した技術を組み込んだドローンを開発していることが分かります。
2019年ミニドローン事業から撤退後は商用ドローンに注力
ホビー向けのドローンも多数ラインナップしていたParrotですが、2019年にミニドローン事業から撤退します。
世界最大手DJIの壁は高く、年々売上が低下していたのが理由と言われています。
現在では、商用ドローンを専門に開発しており、B2B分野で高い評価を得ています。
軍用の偵察ドローンの開発も積極的に行う
ミニドローン撤退後、Parrotが力を入れている事業の1つが軍用ドローンです。
2019年には、米軍の偵察ドローンを開発する契約を結び、「ANAFI-USA」の開発に繋がりました。
安全保障と防衛の市場を専門に開拓している「ANAFI-USA」は、NATO諸国のさまざまな機関で採用されています。
能登震災にはParrot製のドローンが災害後の調査に使用される
日本でもParrot製のドローンが活躍しており、2024年1月に発生した能登半島地震では、災害後の調査に「ANAFI AI」が使用されました。
「ANAFI AI」を活用して被災状況の調査をすることで、被災者の生活再建に役立てられています。
このように公共性の高い事業に関しては、セキュリティの観点から、Parrot社のドローンが採用されることがあるようです。
絶滅危惧のウミガメの救助にParrot製のドローンが使用される
Parrot製のドローンが、絶滅危惧種のウミガメを救助するために役立てられています。
人が立ち入るのが難しいエリアで、気温低下の影響を受けて気絶したウミガメの創作活動を行っています。
これらの調査が行われることで、ウミガメ保護のための資源の確保を目的としています。
参考:https://www.parrot.com/en/newsroom/proteger-les-tortues-marines-en-danger-avec-anafi-usa
Parrot製のドローンが海洋汚染に取り組む
Parrot社とThe SeaCleanersは共同で海洋のプラスチック汚染問題に取り組んでいます。
海の上を浮遊するプラスチック破片をドローンを使って上空から検出することで、海洋汚染の改善と生態系の保護を目指しています。
参考:https://www.parrot.com/en/newsroom/parrot-and-seacleaners-tackle-oceans-pollution
Parrotに関するよくある質問
最後に、Parrotに関してよくある質問を回答と一緒にまとめました。
Q1.Parrotはどこの国のドローンメーカーですか?
Parrotはフランスのドローンメーカーで、元はハンズフリー製品やワイヤレス音響機器など無線機器に関わる製品の開発を得意としていました。
航空宇宙や軍事における設計の流れに基づいた機体デザインが特徴で、現在はハイエンドドローン主体の事業を展開しています。
Q2.Parrotはミニドローン事業から撤退したのですか?
Parrotは2019年にミニドローン事業から撤退しています。
現在はハイエンドモデルの「ANAFI」を中心に高性能なドローンの開発・販売に集中しており、新たなミニドローンは開発されていません。
Q3.Parrot製ドローンはプログラミング学習にも使えますか?
Parrot製の「Mambo」はプログラミングに対応しており、「Swift Playgrounds」や「Scratch」などでプログラミングをすることができます。
Q4.Parrot Mamboの重さはどれくらいですか?
「Mambo」の重量はアクセサリー類を装着していない状態で、63gとなります。
100gに満たないため、飛行前に機体登録をする必要はありません。
Parrot製ドローンの購入方法は?
以前までは正規代理店からの購入が可能でしたが、Parrot社がミニドローン事業を撤退してからは、販売が終了しています。
ECサイトでも販売を終了していることがほとんどなので、メルカリやヤフオクなどで中古品を購入するしか選択肢はありません。
まとめ
Parrotは無線機器に関わる製品開発を得意とするフランスの企業で、民間ドローンにおける歴史に深く関わるドローンメーカーと言っても過言ではありません。
世界初の民間ドローン「AR.Drone」の他、「ANAFI」など有名なドローンの数々を生み出しています。
当初はミニドローン・ハイエンドドローンのどちらも開発していましたが、現在はミニドローン事業から撤退してハイエンドドローンをメインとした事業を行っています。
老舗ドローンメーカーとして培ってきた技術を、時代に合わせて進化させながら画期的なドローンの開発を続けるParrotの動向に、今後も注目していきたいところです。
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