海外のドローンメーカーといえば、「DJI」や「Parrot」などをイメージする方が多いことでしょう。
現在は事業から撤退していますが、アメリカ企業「3D Robotics」もかつては上記2社と並んで3強メーカーと称されるほどの大手ドローンメーカーでした。
今回は、3D Roboticsとはどのような企業なのかを詳しく解説すると共に、代表的なドローン機種もご紹介いたします。
- 3D Roboticsとは?
- 3D Roboticsのドローンの特徴
- 3D Roboticsの代表的なドローン
- 3D Roboticsの直近の動向
3D Roboticsとは
3D Roboticsは、アメリカの有名な雑誌「Wired」の編集長を長年務めていたクリス・アンダーソン氏が創業した企業です。
マーケティング分野でも知名度が高かったアンダーソン氏が創業したこと、そしてドローンメーカーとしてはかなり早い時期の創業であったことから、その社名は瞬く間に広く知れ渡りました。
3D Roboticsは一般消費者向けドローンの開発・製造や販売を行う一方で、ネット上でドローン用DIYの無料コミュニティサイトも運営。
ドローンの販売とコミュニティサイト運営のどちらも一時は順調であり、非常に高い成長率で伸び続けていました。
しかし一般消費者向けドローン市場の競争は年々激化していき、2015年頃から売り上げに不調が見え始めました。
競合であり強敵でもあるDJIの勢いに後れを取り、3D Roboticsはドローンの製造販売事業から撤退することとなります。
その後は一般消費者向けドローンの製造販売から、ソフトウェア開発の事業へと方向転換を発表しました。
3D Roboticsの歴史
2009年、クリス・アンダーソン氏はホルディ・ムノス氏と共に3D Roboticsを創業しました。
ムノス氏は独学でドローンの仕組みを覚えたメキシコ移民の若者で、ドローンに関する彼の知識にアンダーソン氏が感銘を受けたことが3D Robotics創業のきっかけと言われています。
創業後もアンダーソン氏はWired誌編集長の職を続けていましたが、2012年に退職し3D Roboticsの仕事へ専念するようになります。
2015年春までにはアメリカの有力ベンチャーキャピタル「トゥルー・ベンチャーズ」などから、総額にして約1億ドルの資金調達を実現。
一時、3D Roboticsの企業価値は3億6,000万ドルにまで達するという成長ぶりを見せました。
しかしその一方で中国のDJIもまた一般消費者向けドローンのパイオニアたる立ち位置を確立し始め、アメリカにも事業進出を遂げます。
後に消費者向けドローンのスタンダードとなるDJI製品「Phantom」の登場に対抗し、3D Roboticsは「Solo」と呼ばれる高性能ドローンを発表しました。
しかしDJIの勢いに勝ることは叶わず、3D Roboticsは市場競争にて苦戦を強いられることとなります。
2016年になるとドローンの製造・販売ではなく、ドローンで撮影した画像分析ソフトウェアの開発を手掛けるようになり、やがて事業の完全な方向転換を発表しました。
3D Robotics製ドローンの特徴
3D Robotics製ドローンは、操作性・安定性・空撮能力において優れた機能を備えています。
さらに代表的機種のひとつである「Solo」においては、操縦者に過失がない場合の故障は無償修理の制度を設けたり、実際に試して気に入らなかった場合の返金制度を設けたりといった、類を見ない手厚さのサポート体制を整えていたことも特徴です。
先述の通り、創業者のアンダーソン氏はドローンDIYのコミュニティサイトも運営していました。
そのコミュニティサイト上に寄せられたユーザーのリアルな意見、そしてマーケティング分野に精通している彼自身の知見を活かし、どのメーカーよりもユーザビリティが高いドローンを世に送り出していたことで高い評価を得ていたのです。
3D Roboticsを代表するドローン機種
3D Roboticsが過去に生み出した、代表的なドローン機種をご紹介いたします。
1.Solo
3D Robotics製ドローンの中で、最も有名と言っても過言ではない機種がSoloです。
ライバル機であるDJI製Phantomと形状が似ているものの、Phantomとは対照的にブラックで統一されたカラーリングとなっています。
機体にカメラは搭載されておらず、GoProを搭載しながらの使用がポピュラーなものとされていました。
機体とカメラが別物であるがゆえに操作性が悪いというイメージを持たれがちですが、送信機や専用アプリからGoProカメラを自由にコントロールすることが可能という画期的な機能を備えています。
また、本体に埋め込まれた「Linuxベースシステム」とは別に、コントローラーにもCPUが搭載されていることも大きな特徴です。
2つの頭脳を持つSoloは、ドローン本体とジンバルのどちらも自動化することができます。
コントローラーにはフライボタンやホームボタン、その場で静止するポーズボタンといった、機体の操縦を簡単にしてくれるボタンも搭載。
Soloはハイエンドモデルとしての優れた機能性を備える一方で、初心者でも簡単に操縦することができる操作性の良さも兼ね備えているのです。
さらに、カメラアングルをキープしたまま被写体との距離を調整したり、旋回したりといった自動飛行も可能です。
Soloはオープンソースとなっているため、技術があればニーズに適したカスタマイズをすることもできます。
拡張性の高さ、そして先述した手厚いサポートといったソフト面における強みは、ライバル機のPhantomでは成し得なかった特長を創り出しました。
2.H520-G
中国のドローンメーカー「Yuneec」と共同開発された、ヘキサコプター型の産業用ドローンです。
アメリカ政府公認モデルとされており、TAAガイドラインに基づきセキュリティに関して厳しい基準をクリアしています。
機体はシステム上の脆弱性を診断するSiteScanに対応している他、トップクラスの性能を誇るE90も搭載。
E90は広角のハイレゾカメラで、20メガピクセル・1インチのSony ExmorセンサーとAmbarellaのH2高速画像プロセスチップを採用しています。
高解像度で撮影する映像はリアルタイムでモニターに伝送されるため、建設現場の点検やエンジニアリング、公共プロジェクトなどに最適な機種となっています。
3.Iris+
Iris+は世界的に有名なオートパイロット機能を搭載しており、自動飛行に対応可能なカメラドローンです。
GPS機能も採用し、Android端末を自動で追跡しながら飛行することもできます。
Iris+が発売されたのは2014年のことで、動く被写体からカメラを離さず一定の距離間で撮影を続けるという機能は当時とても先進的な機能とされていました。
さらに3D Robotics製アプリ「DroidPlanner」を使えば、スマートフォン上でドローンの飛行ポイントを設定し、フライトプランを思うままに描くことができます。
2軸ジンバルスタビリゼ―ションでカメラをしっかりと固定し、安定した飛行と共にブレのない映像制作をサポートしてくれることも特徴です。
同社製「Iris」の後継機とされたモデルであり、機体の向きを分かりやすくするために各アームにLEDを装備したり、飛行時間を延ばすためにアームの軽量化や電源システムの強化が施されています。
3D Robotics直近の動向
2015年以降、3D Roboticはリソースを全面的にSoloの製造販売へ集中させていました。
当時、3D RoboticとしてはDJIと異なる産業用ドローン市場をSoloが埋めつくす可能性を予想していたからです。
しかし実際のSoloはGPSシステムが正しく作動しない不具合が発生したり、カメラの安定装置の生産遅延に伴いアドオン無し販売を実施したりといったトラブルが発生。
これらが影響してか予想に反してSoloの売り上げは振るわず、やがてコストと資金が釣り合わなくなりました。
結果としてアンダーソン氏は、「我々はもうSoloを生産することはなく、他のドローンも作っていない。我々はソフトウェアとサービスの面に注力する」とコメントしました。
このコメント通り、3D RoboticはSolo発売以降に新たなドローン(ハード)の製造・販売はしていません。
なお、3D Roboticにおける活動が最後に確認されたのは2019年のFacebook上での投稿です。
2023年2月現在、3D Roboticの公式サイトはアクセスすることができず、現時点での動向を掴むことができない状況にあります。
3D Roboticsに関するよくある質問
最後に、3D Roboticsに関してよくある質問を回答と一緒にまとめました。
Q1.3D Roboticsの読み方は何ですか?
3D Roboticsは、「スリーディーロボティクス」と読みます。
英語表記の社名を略し、「3DR」と呼ばれることもあります。
Q2.3D Robotics製ドローンはどこで購入できますか?
2023年2月現在、3D Robotics製ドローン「Solo」についてはAmazonでの販売が確認されています。
以前は「芝本産業株式会社」や「日本スカイフロント株式会社」といった国内正規販売代理店にて購入することができましたが、Soloの生産終了に伴い代理店からの購入ができなくなっています。
Q3.3D Roboticsの「pixhawk」とは何ですか?
3D Roboticsの「pixhawk」は2013年から販売開始となった、オリジナルのオープンソースソフトウェアが搭載されたフライトコントローラーです。
2015年には最新版として「pixhawk2」も発売されており、Intelの「Edison」とクアルコムの「Snapdragon 600」という2つのCPUが搭載されています。
Q4.3D Roboticsはすでにドローン事業から撤退していますか?
3D Roboticsは2015年に発売した「Solo」を最後に、ドローン(ハード)の製造販売事業から撤退しています。
撤退後はドローンメーカー向けのソフトウェア開発事業を推進する方針を示していましたが、2023年2月時点における活動の動向は不明です。
Q5.3D Robotics以外ではどのドローンメーカーがいいですか?
ドローンメーカーは国内外に多数ありますが、その中でもおすすめな主要メーカーは以下の通りです。
- DJI
- Parrot
- Hubsan
- HolyStone
- PRODORONE
- 京商
- mazex
上記のうち、子供から大人まで幅広い層が気軽に楽しめるトイドローンを製造しているのは「Parrot」「Hubsan」「HolyStone」「京商」です。
「PRODORONE」や「mazex」はどちらも国内ドローンメーカーであり、農薬散布や測量など業務活用に最適な産業用ドローンを製造しています。
そして最も有名な「DJI」は、一般消費者向けから産業向けまで幅広いニーズに対応した高機能ドローンを製造しているドローンメーカーです。
まとめ
「Solo」などの高機能ドローンで有名な3D Roboticsは、かつてアメリカを本拠地としていたドローンメーカーです。
3D Robotics製ドローンは、創業者が運営していたドローンDIYコミュニティサイトを参考にしたからこそ成し得たユーザビリティの高さがあり、オープンソースソフトウェアのドローンで拡張性も高めているという特徴があります。
しかし2015年にはDJIなどの競合他社に押されるかたちでハード面の製造販売事業から撤退し、ソフトウェア開発事業への方向転換を遂げました。
社会において少しずつドローンの存在が当たり前になろうとしている昨今、国内外では数多くのドローンメーカーが台頭してきています。
現在はその名前こそ目にする機会がなくなってしまいましたが、画期的な機能を備えるドローンを早い時期から生み出した3D Roboticsというメーカーは、民間用ドローンの過去を語るうえで欠かせない存在です。
この記事と一緒によく読まれている記事
-
ドローンショーの仕組みを解説!演出や操縦はどうやっている?
-
ドローンを使ったスマート農業を解説!農業用ドローンの主な用途とは?
-
ドローンの免許(国家資格)の取得には年齢制限がある?何歳から取得できる
-
水中ドローンの操縦に免許は必要?水中ドローンに関する資格を解説
-
ドローンの操縦に無線技士の資格は必要?必要なケースや資格の取得方法を解説!
-
ドローン測量管理士とは?新しく登場したドローン測量の資格を取得する方法を解説!
-
海でドローンを飛ばす際の規制や必要な許可申請は?海で飛ばす時のルールを解説
-
ドローン国家資格の取り方を解説!取るまでの手順や取得期間はどれぐらい?
-
ドローン国家資格の難易度は高い?試験の合格率や勉強時間はどれぐらい?
-
ドローンを使った橋梁点検とは?メリット・デメリットや橋梁点検で使用される新技術を解説!
-
ドローンの目視外飛行は飛行許可が必要?目視外飛行を行う条件や練習方法を解説!
-
100g未満のドローンを飛ばせる場所を解説!チェックすべき法律や飛行ルールは?