「猟師とドローン」
この2つには一見何も関連性がないように見えますが、実は現在、猟師がドローンを使って動物の生態調査をする試みが行われています。
なぜそのようなことが行われているのか、詳しく見ていきたいと思います。
年間200億円を超える鳥獣被害
日本の農業が抱える問題の一つが「鳥獣被害」です。
農林水産省によると、鳥獣による農作物の被害額は年間200億円を超えると言われており、現在深刻な問題となっています。
本来は人目に付かない山奥にいる鳥獣、たとえばクマやイノシシ、シカ、タヌキなどが人間の生活エリアにまで行動範囲を広げ、畑を荒らしたり、糞尿をまき散らしたりしているのです。
これは害獣のえさ場や隠れ場となる耕作放棄地の増加、少雪化や暖冬傾向による生息適地の拡大、猟師の減少など、様々な要因が考えられます。
そこで、この問題を解決する手段として、いま「ドローンの活用」が検討されています。
ドローンを使った動物の夜間生態調査
野生鳥獣の保護を行う「大日本猟友会」は、2016年より、ドローンを活用したニホンジカやイノシシ等の夜行性の鳥獣生態調査に乗り出しました。
従来の生態調査では、日中に人が目視で生態を確認するという方法をとってきましたが、今回の調査ではドローン本体に赤外線カメラを搭載させて夜間に飛ばし調査を行っています。
これまでは、鳥獣の目撃数や捕獲数といったデータからの推測が中心だったため、正確な生態予測ができませんでした。しかし、ドローンを活用して上空から生息数を確認することで、より正確なデータを得ることができ、野生鳥獣による被害を食い止められるのではないかと期待されています。
また、ドローンに音を出す仕掛けを加えれば、クマやイノシシなど人に危害を加える動物を追い払うこともできます。
海外では絶滅危惧種保護のために活用
国内では生態調査でドローンを活用することが検討されていますが、海外では絶滅危惧種保護のためにドローンが使用されています。
2016年、アメリカの地質調査チームは、ドローンとピーナッツバターを使って絶滅危惧に瀕している「クロアシイタチ」を救うための作戦を実行しました。
クロアシイタチは、プレーリードッグを主食とするイタチで、現在では個体数が数百匹まで減った、保護対策が急がれる動物です。
今回の作戦では、直接クロアシイタチを保護するのではなく、その餌となるプレーリードッグにワクチンの接種を試みました。
なぜなら、プレーリードッグはペスト菌に感染しやすく、その感染が広がると、結果としてプレーリードッグを食べるクロアシイタチもたくさん死んでしまうからです。
作戦ではドローンを使って、ワクチンが入ったピーナッツバター味の錠剤を運び、プレーリードッグが生息する場所の周辺に散布を行いました。
結果、60~90%のプレーリードッグが錠剤を食べ、実験は成功しています。
なお、これによるクロアシイタチの増減結果はまだ判明していません。
今回は、ドローンを使った動物の生態調査について見てきました。
ドローンの活用は、生態調査を助けることは間違いありませんが、指摘されている「動物へのストレス」についても考える必要があります。動物たちにストレスを加えないためにも、飛行音が静かな小型ドローンの開発を進めていく必要があるでしょう。
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