軍事用ドローンの問題点や今後の展望とは?現在実際に使用された機種も紹介

更新日: 2022.06.01 公開日: 2022.06.01
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近年、趣味・ビジネスの分野で多くの期待を集めているドローン。

開発技術が日々進歩し、人々をより便利な社会へと導いてくれるツールの一つと言えます。

しかし実のところ、ドローンのような無人航空機は元々軍事用として開発されていました。

現在も軍事用として使用事例のあるドローンですが、何の機種が具体的にどのような使い方をされているのでしょうか。

今回は軍事用ドローンの使用事例や実際に使用された機種、軍事用ドローンが抱える問題点、今後軍事用ドローンの普及が広がる可能性などについて解説いたします。

この記事でわかること
  • 軍事用ドローンとは何か?
  • なぜ軍事利用がされているのか?
  • 近年の軍事利用事例
  • 軍事用ドローンの今後について

をわかりやすく解説しています。

目次

軍事用ドローンとは

ドローンの用途は「民生用」と「軍事用」という2種類に分けられます。

民生用は企業がビジネス目的で使用したり、個人の方が趣味として楽しむために使用したりすることを前提に開発されたドローンです。

測量や建物・インフラ点検、農業など産業分野別に特化して開発された機種、趣味としての空撮を楽しめるようカメラが搭載された機種などがあります。

一方、軍事用とは爆撃や偵察といった軍事的な使用を目的に開発されたドローンのことです。

無人航空機を軍事利用するという発想は第一次世界大戦中から存在し、第二次世界大戦時代から本格的に研究が進められました。

民生用でよく見られるマルチコプター型だけでなく、自立飛行が可能な無人戦闘機なども軍事用ドローンとして分類されます。

現状、軍事用ドローンはどれくらい存在するのか?

日本国内で一般の方が軍事用ドローンに触れる機会はほとんど無いと言えますが、現在でもアメリカなどでは偵察に用いられることも珍しくありません。

他にもイギリスや中国、ロシア、イランなど世界各国で軍事用ドローンの開発が進められています。

ドローンを軍事利用するメリット

軍事的にドローンを利用することのメリットとしては、人命の安全を確保しながら敵地の偵察・爆撃が可能になるという点が第一に挙げられます。

本来であれば実現されないことが望ましいですが、細菌兵器や生物兵器などの噴霧もパイロットの健康を害することなく遂行できるのです。

また、ドローンは小型であるため攻撃対象となる施設の防衛システムから探知されにくいというメリットもあります。

軍事用ドローンの近年の使用事例

●サウジアラビア石油施設へのドローンによる攻撃(2019年)

2019年9月14日、サウジアラビアの国営石油会社サウジ・アラムコの施設2箇所がドローンによる攻撃を受けて炎上した事例です。

イランで開発された無人航空機によく似た三角翼タイプのドローンが使用されており、自立飛行で施設へ進入の上攻撃が行われました。

●アルメニア軍輸送トラックへのドローンによる攻撃(2016年)

2016年4月、アルメニアとアゼルバイジャンの領土紛争が繰り広げられていたナゴルノ・カラバフ共和国にて、アゼルバイジャン国境近くを走っていたアルメニアの軍用輸送車が自爆ドローンにより攻撃された事例です。

使用されたドローンはイスラエル製の「ハロップ」と呼ばれるもので、ゆっくりと上空を旋回した後車両に突撃しました。

アゼルバイジャンのような地政学的な小国までドローンを活用していたことから、無人機の広がりと軍事的な能力の拡大を反映した事例として知られています。

●イエメン空軍基地へのドローンなどによる攻撃(2021年)

2021年8月29日、イエメン南部にあるアルアナド空軍基地が軍事用ドローンやミサイルにより攻撃された事例です。

基地への攻撃を目撃した兵士によると、ドローンが格納庫へ向けて上空をまっすぐと飛びミサイルを2発発射したとのことです。

少なくとも兵士30人が死亡、60人が重傷を負ったという大規模な被害をもたらした事例となります。

実際に使用された軍事用ドローン機種

実際に使用されたことがある軍事用ドローンの一例をご紹介いたします。

グリーンドラゴン

全長1.7メートルの滞空型爆弾ドローンです。

滞空時間は1時間半までに及び、40km~50km範囲の中で敵を捜索することができます。

また、3kg程度の弾頭を運び、精度の高い攻撃を行います。

標的を確認できなかった場合は回収のうえ再利用もできるので、低コストで運用できる点も特徴です。

ハーピーNG

敵の防空レーダーに突入し自爆機能を持つ機種「ハーピー」と、ハーピーに可視光カメラを搭載した改良型「ハロップ」をさらに改良した機種です。

天候や日中・夜間問わず対応可能で、敵がレーダー波の放出を停止しても可視光カメラで敵を確認し攻撃することができます。

ロテムL

4つの回転翼が付いた「クアッドコプター型」の偵察用ドローンです。

最大10km離れた場所からタブレット端末を使って操作することができます。

兵士が一人でも携帯・操作可能な機種である他、最大1kgの爆発物を搭載して爆弾として使用できるとも言われています。

【おまけ1】中にはハエの形をした超小型ドローンも

自然界における生物の特性を模して様々なロボットが開発されています。

アメリカ・ハーバード大学の研究チームでは、ハエの生物学に着想を得て開発した昆虫ロボットの飛行に成功させたことを公表しました。

米空軍も鳥や昆虫からヒントを得て設計された小型監視ドローンを開発しているとの話がありますが、実際に軍事目的で使用された実例や詳細は不明です。

【おまけ2】軍事用ドローンの価格はおおよそ〇〇円

軍事用ドローンの詳細な価格相場は不明ですが、長距離を飛行する自爆型ドローンは数十万円~数百万円程度、高額なもので1000万円以上の機体もあると言われています。

しかし、1発あたり数千万円~億円単位の費用がかかるジェットエンジン推進の巡航ミサイルと比べると安価です。

そのため、軍だけでなく予算に限りのあるテロリストも入手しやすくなっています。

軍事用ドローンが抱える問題点

軍事用ドローンは安価かつ小型で標的から探知されやすいという特徴から、軍事的な場面においても脅威と言えるほどの能力を発揮します。

しかし、ドローンの軍事的利用については以下のような問題点もあるのです。

パイロット不足

軍事用ドローンは普及の一途をたどってはいるものの、機体を遠隔操作するパイロットが不足しているという現状があります。

例えば米空軍は年間で180人のドローンパイロットを訓練していますが、その人数を上回る230人のパイロットが辞職を申し出ているようです。(2016年時点)

機体に搭載した爆弾で自分は安全な場所にいながらも敵の施設を攻撃し、ひいては人の命を間接的に奪うことになるという行為に対してパイロットが精神的苦痛を抱えるケースも珍しくありません。

また、自分自身が有人機に乗って空を飛び、国を守りたいという思いを持って志願する人がほとんどである米空軍の仲間からは「パイロットでありながら空を飛べない」と落伍者のような扱いを受ける苦悩もあります。

このようなストレスが原因となり、軍事用ドローンのパイロットはなかなか定着しないことが問題視されています。

一般人へ向けての誤爆

軍事用ドローンによる爆撃は、目視ではなくモニター越しに標的を確認したうえで行います。

そのため精度の高い爆撃を行うことが難しく、罪のない民間人へ誤爆してしまった実例もあるのです。

参考:米軍、カブールのドローン攻撃で誤爆認める 標的誤り子供7人含む民間人10人殺害

軍事用ドローンの攻撃精度における開発技術を進歩させない限り、このような悲劇を再び招いてしまう可能性は十分に考えられます。

【参考】知らないうちに日本製部品が軍事用ドローンに使用されていることも

2016年11月6日、ウクライナのドネツク地域で墜落したロシア軍の偵察用ドローンをウクライナの民間団体が解析したところ、日本製部品が機体のエンジンとして使用されていることが判明しました。

使用された部品は「FG-40」と呼ばれる、本来は軍事用機器と全く関係のないラジコン用エンジンとして製造された部品でした。

製造元企業は高い技術力により24ヵ国に及ぶ販路を有していることから、国際的に広く出回っていたのです。

また、FG-40は高性能でありながら定価が11万円、通販サイトによっては7万5000円となっており、これを軍事用ドローンの生産に活用すれば大幅なコスト削減にもつながります。

日本製の民生用部品が海外の軍事用機器に無断で流用されているというこの事例は、工業製品の輸出における管理が曖昧になっていることを表すものであるとも捉えられます。

軍事用ドローンの今後

元々、中東においてはイスラエルが高度な軍事用ドローンを独占している状態にありました。

イスラエルは2000年代から本格的に他国への攻撃でドローンを活用し、製造も盛んに行い軍事用ドローンの業界をリードしていたのです。

しかし、近年はイスラエルだけでなくアメリカやロシア、中国など様々な国が軍事用ドローンの開発に乗り出しています。

特に中国の技術力の成長は著しく、2019年には攻撃用・偵察用ドローンを発射する新型軍用車両が発表されました。

攻撃用ドローンは2kgの爆弾を装着し、時速180kmで標的のもとへ飛行が可能。

偵察用ドローンは1時間以上にわたり連続で飛行することができます。

既に民生用ドローンにおいては「DJI」製品が世界中で高シェア率を誇っているように、中国のドローン開発技術は目を見張るものがあります。

高い技術力、そして低コストな中国製のドローンは軍事用の機種も他国へ広く出回ることが予測されており、今後も改良を重ねながら軍事用ドローンの市場を賑わせる可能性が高いと考えられます。

まとめ

パイロットの安全を確保できるうえにミサイルよりも開発のコストが低く、偵察や攻撃を行う際は敵に見つかりにくい軍事用ドローン。

趣味や産業において人々を便利な社会へと導いてくれるドローンは、気付かれないままに敵兵を殲滅することも容易とする軍事的能力を秘めています。

現状、軍事用ドローンはパイロット不足や攻撃の精度が低いという問題点も存在します。

残念ながら軍事用ドローンが無くなることは考えづらいため、機体の改良を重ねながら問題点が改善されることを期待したいところです。

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