ドローンは災害発生時のさまざまな局面で活躍します。
小回りの効く機動力を活かして、被災者の救助や捜索だけでなく、医療品や食料品の輸送など、多彩な活用法が展開されています。
今回は災害時におけるドローンの活用法を解説します。
災害時にドローンがどのような使われ方をしているのか、詳しく知っていきましょう。
災害発生時にドローンができること
災害発生時にドローンができることとしては主に以下の4点が挙げられます。
- 被災状況の調査
- 被災者の捜索
- 物資の輸送
- 被災者の救助
では、1つずつ詳しくみていきましょう。
被災状況の調査
被災地の上空を撮影して、被災状況の確認や周辺のマップ作成、安全管理などの情報を収集できます。
被災した地域のマップを作成することで、避難や物資の輸送を行うためのルートを確保したり、危険な場所を把握して二次災害を防ぐことにも繋がります。
被災者の捜索
被災地の上空を飛行させることで、被災者の捜索を行うことができます。
高解像度カメラや高度なズーム機能を持ったカメラも搭載できるため、より精度の高い捜索が可能です。
さらに、赤外線カメラや暗視カメラも搭載できるため、夜間の捜索も可能ですし、瓦礫の下敷きになった被災者も発見できます。
小回りが効いて、広範囲の捜索ができるだけでなく、災害発生から捜索開始までスピーディーに進められるため、命を救う可能性を上げられるでしょう。
物資の輸送
ドローンは上空からの撮影だけでなく、物資の輸送にも活用できます。
医療品や食料品などを積載して、迅速に避難所などへ届けられるため、緊急性の高い物資に関しても対応が可能です。
地震や洪水などで道路が寸断されて、物資の輸送が困難な場合でも、ドローンであれば上空からスムーズに届けられます。
近年では、積載重量が100kg以上の大型ドローンも開発されており、輸送能力が年々向上しています。
被災者の救助
ドローンを使って被災者を直接的に救助することもできます。
例えば、火災発生現場で上空から消火剤を散布したり、海難事故が発生した際に上空からロープや浮き輪を投下したりなど、被災者の救助が可能です。
ドローンであればいち早く現場に辿り着いて、さまざまな救助が可能になりますし、救助者のリスクも減らせるため、二次災害も減らせます。
災害時にドローンを活用するメリット
災害時にドローンを活用するメリットは主に以下の4点です。
- 災害発生から迅速に起動できる
- 離着陸に広いスペースを必要としない
- さまざまな機器による情報収集が可能
- 安価に運用できる
では、1つずつ詳しくみていきましょう。
災害発生から迅速に起動できる
ドローンは、ヘリコプターなどの有人航空機と比較して、迅速に起動できるため、素早い対応が可能になります。
災害発生後からすぐに現場に到着して、必要な対応を行うため、命を救える可能性を上げることができるでしょう。
また、災害発生から迅速にドローンで情報収集を行えば、被災状況をスムーズに把握した上で、必要な災害対応や意識決定を正確に行えます。
1分1秒でも早い対応が重要になる災害救助において、ドローンの機動力は大きな武器となるでしょう。
離着陸に広いスペースを必要としない
ドローンは狭いスペースでも離着陸が可能なため、災害発生時でも周辺の状況に左右されずに稼働できます。
ヘリコプターなどの有人航空機は飛行の際に、広いスペースが必要となり、被災状況によっては着陸が困難なケースもあるでしょう。
ドローンであれば、災害現場に可能な限り接近できるため、より効果的な初動対応ができます。
さまざまな機器による情報収集が可能
ドローンには、カメラをはじめとするさまざまな機器を搭載することで、多様な情報収集が可能になります。
例えば、赤外線カメラを搭載すれば、夜間の捜索もできますし、瓦礫の下敷きになった被災者も発見できます。
その他にも、センサーを用いて被災地の測量を行ったり、医療品や消火剤などを積載して、被災地まで運ぶなども可能です。
安価に運用できる
ドローンは他の有人航空機と比較して安価に運用できるのも魅力です。
本体価格も維持費用も安く抑えられ、導入ハードルも低いため、自治体などにも積極的に配備できるでしょう。
導入ハードルの低さを活かして、全国に災害用ドローンを配備して、ネットワークを形成すれば、どの地域で災害が起きても迅速な対応が可能になるでしょう。
災害時にドローンを活用する際の課題
災害時にドローンを活用する上で、以下のような課題が挙げられています。
- ドローンパイロットの育成
- 悪天候時に飛行が難しい
- 長時間の飛行ができない
- 積載量に限界がある
- 電波が途絶えた時の対処法
- 国産ドローンの充実
どのような課題を乗り越える必要があるのか、詳しくみていきましょう。
ドローンパイロットの育成
ドローンによる災害対応を普及させるためには、パイロットの育成が欠かせません。
迅速かつ正確に災害対応を行えるだけの操縦スキルが必要ですし、未熟なパイロットが操縦をすると、墜落や衝突などの二次被害が発生するリスクも生じます。
被災現場によっては複雑な地形や狭い場所での飛行が余儀なくされるケースもあります。
また、災害対応は臨機応変であることも重要なので、操縦スキルと同時に正確な判断能力も求められるでしょう。
悪天候時に飛行が難しい
ドローンは雨や強風などの悪天候での飛行が難しいという課題があります。
雨に関しては防水性能を搭載したドローンもあるのですが、強風に関しては機体が軽量でもあるため、制御が難しくなります。
その他にも、気温が著しく低い/高い状況下では、不具合が生じるリスクも生じます。
安定した制御が難しい状況だと、ドローンによる二次被害が発生するため、使用できる状況を広げていくのが課題といえるでしょう。
長時間の飛行ができない
ドローンは飛行可能時間が短いため、長時間の災害対応ができません。
一般的な飛行時間は最大でも30分程度で、飛行時間に特化したタイプでも1時間程度です。
30分程度の飛行ではできることが限られますし、物資を輸送するドローンの場合、荷物が重くなるほど、飛行時間が短くなります。
近年では、バッテリー性能を上げて飛行時間を伸ばしたり、燃料エンジンを用いたりなど、飛行時間を伸ばす取り組みは活発になっていますが、長時間飛行に関する課題は以前として残っています。
積載量に限界がある
ドローンは小型の機体が多く、積載できる荷物の重さに限界があります。
医療品など細かい物資を運ぶのには適していますが、大型の物資を運搬することはできません。
最近では、積載重量が100kgや200kgといった大型ドローンも開発されていますが、大型荷物を輸送する際には、落下のリスクなども検討しなければなりません。
そのため、ドローンによる物資の運搬は、医療品などの限定的な用途で使用されていくでしょう。
電波が途絶えた時の対処法
日本のドローンはWi-Fiなどで使用される、2.4GHz帯の電波を用いて通信を行っています。
そのため、災害発生時に通信環境が悪化したり、電波干渉が起きたりして、通信が途絶えた場合、ドローンの操縦が困難になります。
機種によっては電波が途絶えた際に、フェイルセーフ機能で自動的に帰還できるのですが、安定した災害対応が困難になる可能性もあるでしょう。
国産ドローンの充実
災害対応で自治体や政府が中心となってドローンを運用する場合、セキュリティリスクの問題も生じます。
ドローンは海外メーカーが中心となっているのですが、セキュリティ面を考慮するなら国産ドローンの使用が推奨されます。
最近では、ASCLを中心に国産ドローンを開発する流れは起きていますが、ドローンによる災害対応を普及させるためには、さらに国産ドローンの数を増やさなければなりません。
災害時のドローン飛行に関する法律
災害発生時にドローンを飛ばす際に適用される法律について解説します。
一般的な状況とは適用される法律が異なるので確認しておきましょう。
航空法の規制は災害時には適用されない
航空法においては以下の飛行空域および方法を「特定飛行」として規制しています。
【航空法で特定飛行に該当するもの】
飛行する空域 | ・空港などの周辺 ・人口集中地区の上空 ・150以上の上空 ・緊急用無空域 |
飛行の方法 | ・夜間での飛行 ・目視外での飛行 ・人または物件との距離を確保できない飛行 ・催し場所上空での飛行 ・危険物の輸送 ・物件の投下 |
上記の飛行を行うには、事前の許可申請が必要なのですが、災害発生時に関しては申請なしで上記の飛行が可能になります。
ただし、飛行を行うには下記の条件を満たしていなければなりません。
「事故や災害時に、国や地方公共団体、また、これらの者の依頼を受けた者が捜索又は救助を行うために無人航空機を飛行させる場合については、適用されない」
引用:国土交通省
そのため、災害時であれば誰彼構わずドローンを飛ばせるわけではありません。
災害時にドローンが活用された事例
災害時にドローンが活用された事例を紹介します。
どのような活用がなされたのか詳しくみていきましょう。
能登半島地震(2024年1月)
2024年1月に発生した能登半島地震では、ドローンを活用した災害救助が行われました。
被災者の捜索や救助にドローンが使われたほか、道路が寸断され孤立した集落への医療品輸送、倒壊した建物の内部調査など、幅広い活用が行われています。
直近の事例ということもあり、ドローンが災害現場で広範囲に渡る活躍を見せていることがわかります。
九州北部豪雨(2017年7月)
2017年7月に発生した九州北部豪雨では、ドローンを用いた被災地の状況調査が行われました。
上空から洪水や土砂崩れなどの様子を撮影して、被災状況の確認することで、人が直接入れない場所の調査も可能になっています。
熊本地震(2016年4月)
2016年4月に発生した熊本地震では、現場の被災状況を上空から確認するために、ドローンが活用されました。
土砂崩れや横滑り断層などの様子を鮮明に写し出すことに成功しており、阿蘇大橋が決壊した模様も撮影されています。
災害時に活用される主なドローン
災害時に活用される主なドローンを紹介します。
どのようなスペックとなっているのか、詳しくみていきましょう。
ACSL PF2-AE Disaster Relief / Patrol
サイズ | 1,173×526mm |
重量 | 8.9kg |
飛行速度 | 水平:10m/s 上昇:3m/s 下降:2m/s |
飛行時間 | 最大22分 |
カメラ | ・SONY 「α7R IV」 (フルサイズカメラ) ・FLIR 「Duo Pro R」(可視+赤外線カメラ) ・SONY 「UMC-R10C」(APS-Cセンサ) ・SONY 「DSC-QX30U」(30倍ズームカメラ) |
ACSL PF2-AE Disaster Relief / Patrolは、セキュリティ性の高い国産ドローンで、主に災害現場で活用されます。
LTE通信に対応することで、災害時にも目視外飛行が可能ですし、さまざま種類のカメラを搭載することで、多用途での使用が可能です。
CENTURY D-HOPE
モジュール | ・YT-IRVL HD &赤外線カメラモジュール ・YT-36XNV 36倍ズーム暗視カメラモジュール ・YT-30XZT 4K30倍ズームカメラモジュール ・YT-3KFS 多機能カメラモジュール ・YT-FAC 救援物資投下モジュール ・YT-MSP 物資輸送ウインチモジュール ・YT-5POPCIV 5カメラモジュール ・YT-FEBL 消火剤投下モジュール ・YT-SL02 空中照明モジュール ・YT-GDSII 気体探知モジュール ・YT-LBCS 水上緊急救命モジュール ・YT-DSI 警告ライト付拡声器モジュール ・YT-LJCS 救命胴衣投下モジュール ・YT-IMH ロボットアームモジュール |
積載重量 | 6kg |
飛行時間 | 最大1時間 |
防塵・防水 | IP64 |
CENTURY D-HOPEは、災害での活用に特化したドローンです。
さまざまなモジュールを搭載することで、あらゆる状況に対応できるのが特徴です。
例えば、上空から救命胴衣や消火剤を投下したり、危険性の高いガスを探知したりもできます。
Skydio2+
サイズ | 223×273×74mm |
重量 | 約800g |
飛行速度 | 58km/h |
飛行時間 | 最大27分 |
可用温度範囲 | -5℃~40℃ |
カメラ | 1200万画素(4056×3040) 4K60fps |
Skydio2+は、AIを搭載した産業用ドローンで、小型で機動力の高さを活かして、災害現場での状況把握に活用されます。
全方位に衝突防止機能が搭載されているため、安全な飛行が可能ですし、3Dスキャン機能による災害現場の測量も可能です。
Parrot ANAFI USA
サイズ | 282 x 373 x 84mm |
重量 | 約500g |
飛行速度 | 水平:14.7m/s 垂直:6m/s |
飛行時間 | 最大32分 |
可用温度範囲 | –35°C ~ 43°C |
カメラ | 21MP 4K60fps |
防水防塵 | IP53 |
Parrot ANAFI USAは、わずか1分で起動できるスピード感があり、災害発生から迅速に利用できるのが特徴です。
赤外線カメラを搭載しており、大規模火災での熱源探知や水難救助でも利用できます。
PRODRONE PD4-XA1
サイズ | 1260x1490mm |
重量 | 9.4kg |
飛行速度 | 60km/h |
飛行時間 | 最大30分 |
ペイロード | 2.2kg |
防水防塵 | IPx4 |
PRODRONE PD4-XA1は、高機能なズームカメラを搭載することで、上空から正確な調査や捜索ができます。
赤外線カメラやLEDライトなど、夜間にも使用できるオプションも搭載できます。
まとめ
災害時におけるドローンの活用法を解説しました。
被災者の捜索・救助や被災状況の確認、物資の運搬など、さまざまな活用法があり、ドローンが持つ機動力や多機能性が注目されています。
まだまだ課題は多いですが、より効果的な災害対応が行えるため、人命を救う確率を飛躍的に向上できる可能性を秘めています。
今後も災害対応でドローンの需要が増していくと考えられるため、興味のある方は引き続き注目してみてください。
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