農業用ドローンとは?活用方法や導入するメリット・デメリットを解説!代表的なメーカーも!

更新日: 2024.09.03 公開日: 2022.01.07
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ドローンの開発技術が進化し続けると同時に法整備も進んでおり、産業分野でもドローンを活用するケースが増えています。

その中でも代表的なケースが農業であり、農業に関する様々な作業をドローンで行うことで作業負担の軽減や品質向上といったメリットが得られます。

そこで今回は、農業でドローンを活用する方法やメリット、農業に使えるドローンの選び方・機種など詳しく解説いたします。

注意すべきデメリットも解説していますので、参考にしてみてください。

目次

農業でドローンを活用する方法

農業の分野では、主に以下のような作業でドローンが活用されています。

効率的な農薬散布

農業におけるドローンの活用例として最も代表的なケースが、農薬散布です。

農薬を入れたタンクを機体に積載し、圃場の上まで飛行させて散布を実行します。

従来の空中散布の手法としては有人ヘリの活用が主流でしたが、準備に多くの労力とコストがかかるため、小〜中規模の圃場で活用することは現実的といえませんでした。

ドローンなら1人でも農薬の積載から飛行・散布まで簡単に行えるだけでなく、散布の所要時間も10分/1ha程度であるため、圃場の規模にかかわらず簡単に作業へ取り掛かることができます。

作物の生育状況のセンシング

センシングとは、センサーを使って対象の物理量・圧力・温度・光などを計測することです。

農業では特殊なカメラやセンサーを搭載したドローンを圃場で飛行させて、作物の生育状況や土壌の状態など、人の目に見えない情報を計測できます。

搭載するセンサーによっては肥料濃度や酸性度をチェックできるため、より最適に近い施肥を実施して、農作物の品質向上につなげることも可能です。

種まきや受粉

農薬だけでなく、作物の種や花粉をドローンに積載して作業に活かすというケースもあります。

富山県南砺市では、2022年よりドローンを使い水田に種もみを撒く直播作業の実証実験が続けられています。

事前に圃場の形をドローンにインプットさせ、最適なルート・量でムラなく種もみを撒けるようにしました。

また、秋田県に本社をおくドローンメーカーの東光鉄工では、青森県の農業高校と協力し、ドローンを使ったリンゴの受粉作業の実証実験を行っています。

従来は人の手や蜂により行われていた受粉をドローンで行えば、天候に左右されずいつでも短時間で作業を完了させることが可能です。

農作物の運搬

農業従事者の高齢化が進んでいることに加え、自動車の運転が難しく免許を返納した高齢者が多い地域では、農作物の運搬手段も課題とされています。

物流分野への普及も進むドローンなら、そのような課題も解決が可能です。

近年は高ペイロードな運搬用ドローンの開発も進んでおり、収穫場所から販売所などの目的地まで、肉体的な負担をかけることなく上空から農作物を運搬できます。

鳥獣被害の対策

シカ・イノシシ・カラス・サルなど、農作物を食べ荒らす鳥獣への対策にもドローンの活用が有効です。

ドローンに赤外線カメラを積載のうえ、対象範囲の上空から鳥獣を撮影して生育状況を調査することで、捕獲や柵の設置に役立ちます。

また、サーチライトや超音波などの装置を搭載したドローンで対象範囲を巡回し、侵入してきた鳥獣に威嚇して追い払うことも可能です。

農業でドローンを活用するメリット

農業の各種作業にドローンを活用することで、以下のようなメリットを得られます。

農薬散布の作業負担を減らせる

ドローンによる農薬散布では、作業者は定位置で機体をコントロールするだけで、肉体的な負担は一切かかりません。

さらに自律飛行に対応した機体なら機体の飛行状況を監視するだけなので、さらに作業が楽になります。

農薬散布に限らず、種まき・受粉や農作物の運搬作業も同様に作業時の負担を減らせるというメリットが生じます。

効率よく均等な散布ができる

人の手による農薬散布では、どの範囲に・どれくらいの農薬を散布するかは作業者の感覚頼りとなります。

そのためどうしても散布される農薬量にムラが出てしまい、場合によっては後日に農薬散布をやり直す必要性が生じ、非効率的です。

ドローンなら自律飛行や飛行アシスト機能により、対象範囲内を一定の速度で飛行しながら一定の量で農薬を散布できるため、労力を費やさずとも均等に農薬が行き渡ります。

人が立ち入れない場所でも作業ができる

360°の方向へ自在に飛行できるドローンなら、人の立ち入りが難しい場所でも簡単に作業できます。

特に高所の作業が必須な果樹の育成や、地形の関係で急傾斜となっている農地での作業なら、ドローンの有用性が高いです。

高度を自由に変えることができ、小回りの利くドローンなら、農業機械が入れないような狭所でも難なく飛行のうえ作業を進められます。

センシングによって均一な栽培が可能になる

ドローンは搭載したカメラ・センサーにより、農作物の生育状況を高精度に把握できます。

そのため従来は避けることが難しかった、生育のムラや害虫被害の有無にもいち早く気付き、ピンポイントな施肥・農薬散布などの対策を講じることが可能です。

これにより作物の品質が均一化されるだけでなく、収穫量も安定します。

農業でドローンを活用するデメリット

農業においてドローンは主に効率性や作業負担の軽減などのメリットが大きいですが、デメリットも複数あります。

導入を検討する際は、以下のデメリットがあることに注意が必要です。

コストがかかる

農業に用いられるドローンは相応に性能が高く、1台あたり数十万円~数百万円と一般的なドローンよりも高額な傾向にあります。

また、安全に使い続けるためにはプロペラやバッテリーを交換するなど、定期的なメンテナンスによるランニングコストも発生します。

そのため、どれほどの費用対効果が見込めるのかを慎重に見極めたうえで、導入を検討することが大切です。

また、自治体によっては補助金制度を利用できる場合もあるので、確認しておきましょう。

操縦を覚える必要がある

ドローンを飛行させるには、操縦にある程度の慣れが必要です。

練習を重ねれば誰でも操縦できるようになりますが、空を飛ぶドローンはラジコンとは操作感が異なり、人によっては操縦技術の習得に苦戦する場合があります。

効率よく操縦技術を身につけるならプロの操縦士から操縦技術を指導してもらえる講習会への受講がおすすめです。

使用できる農薬が限られる

ドローンによる散布が可能な農薬は、農薬取締法に基づき登録されたものだけです。

それ以外の農薬はドローンで散布できない他、登録された農薬でも作物・使用時期・使用量・希釈倍数などの使用基準を遵守する必要があります。

登録済みの農薬や使用基準は、「農薬登録情報提供システム」から確認が可能です。

飛行許可などの申請に手間がかかる

ドローンは、航空法により特定の飛行場所・方法が規制されています。

ドローンを用いる場所が規制対象の場所・方法だった場合、国土交通大臣へ飛行許可・承認の申請をする必要があります。

特に、農薬散布は規制対象の「物件投下」にあたるため、申請手続きが必須です。

また、規制対象外の場所・方法でドローンを飛ばすにしても、事前の機体登録手続きやリモートIDの実装などの準備を済ませなければなりません。

農業用ドローンの選び方

農業用ドローンには数多くの機種があり、それぞれ適した用途や作業規模などは異なります。

有効活用できる農業用ドローンを見つけるためにも、以下のポイントを押さえて選ぶことが大切です。

農地面積からタンクの容量を決める

農薬散布にドローンを使う場合は、機種ごとのタンク容量を確認しましょう。

10ha未満の圃場なら比較的小型で小回りが利く5~7L、10~50haの圃場なら9L、50haを超える圃場なら16L以上の機種がおすすめです。

タンク容量が増えるほど機体価格や維持費が高くなるため、余計なコストを発生させないためにも面積に対して適切な容量の機種を選びましょう。

導入費用やランニングコストを把握する

農業用ドローンを導入する際にかかる費用の目安は、以下の通りです。

スクロールできます
本体価格80万~250万円程度
バッテリー代1本あたり5万~15万円程度
バッテリー充電器代5万~15万円程度
粒剤散布装置代
※必要な場合
15万円程度
登録・申請費用2万円程度

上記の他、維持費として消耗品交換代やドローン保険料など総額にして数十万円程度の費用もかかることが見込まれます。

使用頻度や使用範囲の規模なども考慮し、長い目で見てコストに見合う効果が得られるかどうかを検討しましょう。

使用する薬剤が対応しているかを確認する

先述したように、ドローンによる散布が可能な農薬や使用基準は農林水産省により定められています。

散布したい農薬の種類や量、散布したい回数などが基準に合うかどうか、あらかじめ確認しておきましょう。

体験会で実際に操縦する

販売代理店によっては、取り扱い機種のデモ飛行ができる体験会を実施している場合があります。

機体の使用感は実際に触れてみなければ分からないため、使いやすい機種を見つけるなら体験会への参加がおすすめです。

自動飛行機能があると便利

ドローンを飛行させるためには作業者自身も飛行技術を習得する必要がありますが、ドローンのメリットを最大限に発揮させるなら自動飛行機能を搭載した機種を選ぶのがおすすめです。

設定したルートに沿ってドローンが自動的に飛行してくれるため、散布作業の時間短縮や夜間の巡回も可能になります。

主な農業用ドローンを紹介

農業用ドローンの中でも、特に人気な機種を主なメーカーごとにご紹介いたします。

マゼックス「飛助DX」

農業・林業向け大型産業用ドローンを製造している、マゼックスの農薬散布ドローン(液剤9L/粒剤10kg)です。

国産メーカーとして「日本の圃場に最適化」をコンセプトとしており、国内の圃場規模を考慮した機体設計になっています。

クアッドコプターだからこそ大きなプロペラの搭載を可能としており、薬剤が風に流れにくいためより均一に農薬を散布することができます。

独自のフライトコントローラーにより、自律飛行時の安定性にも優れています。

ヤマハ発動機「YMR-08」

大手輸送用機器の製造メーカーとして有名なヤマハ発動機が開発した、農薬散布ドローン(10L)です。

前後対称の二重反転ローターによる力強いダウンウォッシュが特徴で、前後進のどちらでも作物の株元までムラなく薬剤を散布することができます。

完全手動操縦の「ノーマルモード」、一定速度で自動飛行する「自動クルーズコントロールモード」、一定の間隔でターンと往復を繰り返す「自動ターンアシストモード」という3種類のフライトモードが搭載されています。

クボタ「T10K」

産業機械・建築材料・産業用ディーゼルエンジンなどを製造しているメーカー、クボタの農薬散布ドローン(液剤8L/粒剤10kg)です。

1人でも容易に持ち上げられるコンパクトサイズな機体でありながら、ローター直下に配置された4つの噴霧ノズルで優れた散布性能を発揮します。

球面型全方位レーダーを搭載しており、全方位3次元での障害物検知・回避が可能という高い安全性も兼ね備えています。

NTT e-Drone Technology「AC101 connect」

NTTグループのドローン専業会社である、NTT e-Drone Technologyが開発製造した農業用ドローン(8L)です。

コンパクトながら散布幅5mというパワフルな性能を発揮する他、バッテリー1本で2.5haの散布を可能としています。

電気通信事業者のグループ会社だからこそのノウハウで最新の通信技術に対応しており、自動飛行の精度が高いことも強みです。

DJI「AGRAS T20」

中国の大手ドローンメーカーDJIが開発・販売している、農業用ドローン(16L)です。

日本仕様の16L薬剤タンクと最大7mの散布幅が大きな特徴で、8つのノズルと4つの大容量ポンプにより毎分6Lの散布が可能です。

4チャンネルの電磁式流量計を搭載しており、4本のホースをそれぞれ制御し、ムラのない農薬散布を実現できます。

農業用ドローンに関するよくある質問

最後に、農業用ドローンに関してよくある質問を回答と一緒にまとめました。

農業用ドローンの導入費用はどれぐらい?

農業用ドローンの導入費用には、本体価格だけでなくバッテリー代・充電器代・登録・申請費用などが含まれます。

導入する機種や講習会への受講の有無などによって変わりますが、総額にして100万~300万円程度はかかるケースが一般的です。

農業用ドローンの操縦に免許や資格は必要?

ドローンの操縦そのものには、特別な免許や資格は不要です。

ただし、農林水産航空協会から認定を受けた機体を操縦するには、農林水産航空協会が主催する教習所に受講して資格を取得する必要があります。

必ずしも認定機を導入する必要はありませんが、認定機は農林水産航空協会の検査をクリアしており、一定以上の期待性能が保障されています。

そのため、より安全なドローンを使いたい場合は教習所で資格を取得のうえ認定機を導入することをおすすめします。

ドローンによる農薬散布は外注できる?

ドローンによる農薬散布は、業者に外注することも可能です。

農協によってはドローン農薬散布の支援事業を行っている場合もあり、比較的安価に依頼できるため確認してみましょう。

農業用ドローンはレンタルできる?

ドローンのレンタル会社によっては、農業用ドローンも取り扱っている場合があります。

農業用ドローンを使う機会が限られている場合は、レンタルの利用を検討しても良いでしょう。

レンタルする機種やレンタル会社によって変わりますが、1日あたり2万円~の料金で利用が可能です。

まとめ

農業分野では、農薬散布をはじめ農作物の生育調査・種まきや受粉・農作物の運搬・鳥獣対策など様々な作業にドローンを活用できます。

効率的で安全な作業を実現できるドローンなら、年々深刻化する人手不足や農業従事者の高齢化といった問題の解決にもつながります。

導入の際は使用する農地の規模とコストのバランスを考慮しつつ、最適な機種を選びましょう。

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