ドローンは常に目視内で飛行させることが基本とされていますが、条件を満たせば目視外での飛行も認められます。
目視外飛行ができるようになれば、より幅広いシーンでドローンを活用できるようになり、事業利用の際にも大いに役立つことでしょう。
そこで今回はドローンの目視外飛行について、許可申請の詳細や練習方法、実施のために満たすべき条件などについて解説いたします。
ドローンの目視外飛行とは?
ドローンにおける「目視外飛行」とは、操縦者が機体を直接見ないで飛行させることです。
補助者を配置したとして、その補助者に飛行中の機体を監視してもらう場合でも、操縦者が機体を見ていなければ目視外飛行とみなされます。
飛行中のドローンは常に監視しなければロストしたり、第三者・物件に接触したりするリスクが高まります。
そのため、目視外飛行は航空法により規制対象されており、無断で実施することはできません。
なお、飛行中は少しでも機体から目を逸らしたら目視外飛行となるわけではなく、バッテリー残量をモニターで確認する程度であれば目視内の範疇を超えないとされています。
参考:カテゴリ―Ⅱ(レベル3) 飛行の許可・承認申請に関する説明会
ドローンで目視外飛行を行うケース
ドローンの目視外飛行は、以下のようなケースが該当します。
- 離れた場所でモニターから伝送される映像を見ながらドローンを操縦する場合
- 専用のゴーグルを着用しながらFPVドローンを操縦する場合
- 構造物や山に囲まれた場所など死角が多い環境でドローンを操縦する場合
特に、離れた場所にある構造物の点検や物資の輸送などを行う事業では、ドローンを活用するにあたって目視外飛行が必要となる場面が多く出てくると考えられます。
ドローンの目視外飛行には許可が必要
基本的に、ドローンの目視外飛行を実施するには事前の許可申請が必要です。
しかし場合によっては許可申請が不要だったり、許可申請だけでは実施できない目視外飛行のケースもあったりします。
ここでは、ドローンの目視外飛行における許可申請の詳細について解説いたします。
100g未満の機体は対象外
航空法の規制は、機体重量100g以上のドローンに適用されます。
近年のトイドローンに多い、100g未満の機体は航空法の規制が適用されず、許可を得ずとも目視外飛行ができます。
また、目視外飛行だけでなく人口集中地区上空や150m以上の高度での飛行、夜間飛行などを行う場合も事前の許可申請は不要です。
とはいえ、軽量なドローンでも扱い方を誤れば事故につながるリスクがあります。
特に目視外飛行では周囲に人や物がないかを確認のうえ、飛行中は十分に注意することが大切です。
2等以上の国家資格を取得すると許可不要で飛行できる
ドローンの国家資格取得した人には、航空法で規制されている一部の場所・方法での飛行に対し、許可申請が免除されます。
免除の対象になる飛行場所・飛行方法は、以下の通りです。
- 人口集中地区上空
- 目視外飛行
- 夜間飛行
- 人や物との距離30m以上
つまり重量100g以上のドローンでも、操縦者が国家資格を取得していれば許可申請なしで目視外飛行を実施できるということです。
なお、ドローンの国家資格は、大きく分けて「一等無人航空機操縦士(一等資格)」と「二等無人航空機操縦士(二等資格)」の2通りです。
そのどちらを取得しても許可申請が免除されますが、目視外飛行の場合は基本の試験に加え、「目視外飛行の限定解除」のための試験にも合格する必要があります。
また、許可申請の免除には国家資格だけでなく、使用するドローンの機体認証も取得し、補助者を配置するなどの運航ルールに従う必要があります。
有人上空の目視外飛行は一等国家資格が必要
同じ目視外飛行でも「有人地帯上空」で行う場合、つまりレベル4飛行を実施する場合は、一等資格の取得が必要です。
有人地帯上空の目視外飛行は無人地帯よりも事故のリスクが高く、万全の安全管理体制と高度な操縦技術が求められます。
そのため、より専門性の高いレベルで技能を証明できる一等資格に加え、機体認証(第一種)の取得と運航ルールの遵守という条件を満たすことで、有人地帯上空での目視外飛行ができるようになります。
2024年8月現在、第一種機体認証を取得しているドローンの機種はひとつしかありません。
国家試験の難易度も加味すると、現時点で一個人や事業者が有人地帯上空での目視外飛行に乗り出すには、かなりの高いハードルが立ちふさがります。
目視外飛行の許可申請を行う手順
資格を取得せずに目視外飛行を行う場合は、国土交通大臣の許可を得るための申請手続きが必要です。
手続きの方法は、原則として「DIPS2.0(ドローン情報基盤システム)」によるオンライン申請が求められています。
オンライン申請を行う場合、実際に手続きをする前に以下の準備を済ませておきましょう。
- DIPS2.0でアカウントを開設する
- DIPS2.0で使用するドローンの機体登録を済ませてリモートIDを実装する
- DIPS2.0に機体と操縦者の情報を登録する
準備を済ませたら、以下の手順で手続きを進めます。
なお、申請後の審査には一定の期間を要するため、10開庁日以上はかかることを前提に余裕を持ったスケジュールで取り組みましょう。
申請書や添付資料の不備による追加確認が発生する可能性も考えて、飛行予定日から1ヶ月前までには手続きに着手することをおすすめします。
ドローンの目視外飛行を練習する方法
ドローンの目視外飛行は目視内飛行と比べて難易度が高いため、安全な飛行を実施するためにも適切な方法で十分に練習することが大切です。
以下より、目視外飛行に向けた練習方法をご紹介いたします。
練習は全体を覆われた室内で行う
国土交通省が公開している「無人航空機飛行マニュアル」では、目視外飛行における操縦練習の条件として、許可を得た場所や屋内で練習を行うように記しています。
航空法の規制が適用されるのはあくまで屋外での飛行のみであり、屋内なら100g以上のドローンでも許可なしで目視外飛行を実施することが可能です。
屋内の定義には、建物の中だけでなく四方を塀やネットなどの仕切りで囲まれた屋外も該当します。
安全に練習するため、障害物がなく広々としたスペースを選びましょう。
事故が起きないよう補助者をつける
詳細は後述しますが、ドローンの目視外飛行を行う条件として補助者の配置が必要とされています。
加えて、例え練習でも操縦者が機体を監視していない以上は、機体を見失ったり制御不能になったりするリスクを伴います。
そのため、必ずドローンの飛行経路やその周囲を常に見てくれる補助者をつけて練習しましょう。
手元のモニターを見ながら基本飛行を行う
練習場所の準備と補助者の配置を済ませたら、実際に目視外でドローンを飛ばす練習を行います。
手元にタブレットやモニターなどを置き、機体のカメラから伝送される映像を見ながら機体を操縦しましょう。
その際、実際の機体と周囲との距離に余裕があっても、モニターの映像では距離が近く見える場合があります。
ドローンを離陸させたらカメラを地面に向け、映像を通した地面の見え方と、実際の機体と地面の距離を見比べて距離感の差を掴みましょう。
距離感を掴めたら、離着陸・ホバリング・前後左右移動・水平面での移動という基本的な動作の練習を行います。
業務目的で目視外飛行を行う場合には、対面飛行(機体と向き合いながらの操縦)や飛行の組合(水平・上下移動の組合せを10m離れた位置で5回連続)、8の字飛行(5回連続)も習得しましょう。
ドローンシミュレーターを使用する
練習場所や補助者を確保できるタイミングが限られている場合は、ドローンシミュレーターで練習を重ねて目視外飛行の操縦に慣れていくという手もあります。
ドローンシミュレーターとは仮想のワールドでドローンを操作する、3Dグラフィックのゲームのようなソフトウェアです。
障害物がないシンプルな場所だけでなく、町・工場・ドローンレースのコースなど、上級者に向いている場所が再現されたワールドでドローンを操作することも可能です。
スマホやパソコンで利用でき、自宅で簡単に目視外飛行に近い感覚でドローンの操作感が身につきます。
ドローンスクールに通う
独学では知識や操縦技術の習得が難しい人、将来的に目視外飛行を行うために資格を取得したい人は、ドローンスクールへの受講がおすすめです。
ドローンスクールでは、プロの講師がドローンの安全な飛行に必要な知識から操縦技術まで直接指導してくれます。
スクールによっては目視外飛行専門のコースも用意されているため、必要なスキルを正しく効率的に身につけることが可能です。
また、国土交通省から「登録講習機関」の認定を受けたスクールなら、国家資格の取得を目指せるコースも用意されています。
登録講習機関の講習を修了すれば、国家試験のうち学科試験が免除されることも大きなメリットです。
ドローンで目視外飛行を行う際の条件
ドローンの目視外飛行の実施に関しては、国土交通省より複数の条件が定められています。
この条件を満たさないと、飛行許可申請をしても許可が得られないため注意が必要です。
以上、目視外飛行に必要な5つの条件について解説いたします。
機体の基準
目視外飛行に用いる機体の機能性に関する基準です。
自動操縦システムを装備しており、カメラなどで機外の様子を確認できる機体を用いる必要があります。
他にも、地上から位置や異常の有無を把握できること、電波断絶などの不具合発生時に危機回避機能が正常に作動することなどが条件とされています。
操縦者の技量
目視外飛行を行うドローンの操縦者には、遠隔操作で意図した飛行経路を維持しながら安全に飛行・着陸できるスキルが求められます。
スキルが足りない場合、関係者の管理下で第三者が入らないように措置された場所で、訓練を行う必要があります。
安全体制の確保
目視外飛行を安全に行うため、飛行予定の経路やその周辺を事前に確認しておき、適切な飛行経路を特定することと定められています。
また、飛行経路全体を見渡せる位置にドローンの飛行状況や周辺の気象状況の変化などを、常に監視できる補助者を配置します。
ただし、飛行経路の直下やその周辺に第三者が存在している蓋然性が低いと認められる場所(火山の火口付近や陸地から離れた海上など)は、この限りではありません。
補助者の役割
目視外飛行の際に配置される補助者には、以下のような役割があります。
第三者の立入管理 | 飛行経路の直下やその周辺を常に監視し、第三者(自動車や鉄道等も含む)が近づいた際は操縦者に注意喚起を行い、衝突を回避させる |
有人機等の監視 | 飛行経路周辺に有人機等がいないことを監視し、有人機等を確認した場合は操縦者に助言して、衝突を回避させる |
自機の監視 | 飛行中の機体の挙動や計画した飛行経路とのズレ、不具合の有無などを常に監視し、安全運航に必要な情報を継続的に操縦者等へ助言する |
自機の周辺の気象状況の監視 | 飛行中の自機の周辺の気象状況を常に監視し、安全運航に必要な情報を操縦者等へ適宜助言する |
補助者なしで行う場合の要件
補助者を配置せず目視外飛行を行う場合、少なくとも上述した補助者の役割を機体や地上設備などで代替する必要があります。
とはいえ現状のドローンや地上設備の技術レベルでは補助者の役割を完全に担うことが難しいため、飛行場所や機体について以下のような要件(全般的要件)が設けられています。
飛行させる場所 | ・第三者が存在する可能性が低い場所 ・飛行高度は150m未満かつ制限表面未満 |
機体の信頼性の確保 | ・想定される運用で十分な飛行実績を有する |
不測の事態への適切な対応 | ・飛行中に不具合が生じた場合に備えて、飛行経路上において地上の人や物件に危害を与えずに着陸・着水できる場所や緊急時の実施手順を定めておく ・飛行前に飛行経路やその周辺が適切に安全対策を講じることができる場所であることを、現場確認する |
また、個別要件として以下の要件も設けられています。
- 第三者の立入管理や立入管理区画の周知をすること
- カメラ等による有人機等の監視や機体の視認性の向上すること
- 自機の監視と異常発生時に適切な対策を取ることができること
- 気象センサーやカメラなどで自機周辺の気象状況を監視すること
- 操縦者は異常状態を把握した機体に対し、あらゆる要素を勘定したうえで最適な操作ができること
ドローンの目視外飛行に関するよくある質問
最後に、ドローンの目視外飛行に関してよくある質問と回答をまとめました。
無許可で目視外飛行をした場合の罰則は?
ドローンの目視外飛行を無許可で行った場合、航空法違反として罰則が科せられる可能性があります。
航空法では、空域や方法の規制に違反した場合の罰則を50万円以下の罰金と定めています。
しかし事故が発生したにもかかわらず適切な措置を講じなかった場合などで、悪質性が認められるとさらに重い罰則が科せられます。
目視外飛行と目視内飛行の基準は?
目視外飛行とは、「操縦者が機体を見ずにドローンを飛ばすこと」です。
バッテリー残量の確認のためにモニターへ少し目を逸らす程度であれば目視内飛行の範疇を超えませんが、モニターの凝視等で機体から目を離した場合は目視外飛行となり得ます。
100g未満のドローンであれば目視外飛行をしてもよい?
機体重量100g未満のドローンは航空法の規制が適用されないため、無許可で目視外飛行を行えます。
ただし軽量なドローンでも、安全に飛行させるために周囲の安全確認や事故を防ぐための対策を講じ、注意しながら目視外飛行を実施することが大切です。
まとめ
機体から目を離しながら飛行させる場合や、FPVゴーグルを着用してドローンを飛行させる場合は、航空法で規制されている「目視外飛行」に該当します。
100g以上のドローンを使い、屋外で目視外飛行を実施するには国土交通省への許可申請手続きが必要です。
その際、目視外飛行のために定められた要件もよく確認し、それを満たせる安全管理体制や飛行計画を立てましょう。
なお、目視外飛行は国家資格の取得により許可申請が不要になります。
効率よく国家資格の取得を目指すなら、国土交通省認定のドローンスクールの受講がおすすめです。
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