ドローンで夜間飛行はできる?法規制や飛行ルール、申請方法を詳しく解説

更新日: 2024.07.12 公開日: 2024.07.23
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「夜景や花火を撮影したい」 「夜間の作業にドローンを活用したい」など、夜間にドローンを飛ばしたいと考える方もいることでしょう。

原則として航空法ではドローンの夜間飛行は禁止されていますが、必要な手続きを行うことで実施できるようになります。

今回はドローンの夜間飛行について、注意すべき条件や実施の際の申請方法などについて詳しく解説いたします。

これからドローンの夜間飛行に挑戦する方にとって有用な情報を記載しているため、ぜひ参考にしてみてください。

目次

ドローンの夜間飛行は航空法で「特定飛行」に指定されている

航空法では、ドローンの飛行に際して国土交通大臣の許可・承認が必要な場所と方法が指定されています。

その場所や方法でドローンを飛ばす行為は「特定飛行」と呼ばれており、夜間飛行は特定飛行に該当する方法のひとつです。

100g以上のドローンは許可申請が必要

夜間飛行を含め、特定飛行に指定されている場所・方法でドローンを飛ばす場合は、国土交通大臣から許可・承認を得るための申請が必要です。

趣味目的で特定飛行を実施するならその都度手続きする「個別申請」、事業目的で同じ申請者が一定期間内に複数回特定飛行を実施するならまとめて手続きする「包括申請」で申請します。

ただし、この規制が適用されるのは機体重量が100g以上のドローン(無人航空機)のみです。

100g未満のトイドローンであれば、他の法規制に抵触せず第三者の安全に影響が生じなければ特定飛行でも申請なしで実施できます。

無許可で夜間飛行をした場合の罰則

国土交通大臣へ申請せずに無断で夜間飛行(特定飛行)を実施すると、航空法違反として罰則の対象になります。

無断で夜間飛行を実施した場合、航空法第157条の7第1項1号に基づき、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。

許可申請を一度怠っただけでも厳しい罰則の対象となるため、注意が必要です。

ドローンで夜間飛行をする際の注意点

国土交通省が用意した「無人航空機飛行マニュアル」(標準マニュアル)では、特定飛行の実施に関して操縦者が遵守すべき事項が定められています。

標準マニュアルに基づき、夜間飛行の実施に際して注意すべき6つの点をまとめました。

夜間に目視外飛行をしてはいけない

標準マニュアルでは夜間飛行を行う際の体制として、「目視外飛行は実施しないこと」と定められています。

目視外飛行は、操縦者の視界内に機体を捉えない状態でドローンを飛ばす行為です。

モニター越しにドローン視点の映像を見ながら飛ばすことも、目視外飛行に該当します。

申請により夜間飛行の許可を得られても、目視外飛行に該当する方法でドローンを飛ばすことはできません。

夜間に目視外飛行を実施する場合は、以下にして安全対策を講じるかという計画などを記したマニュアルを独自で作成する必要があります。

機体の向きを視認できる灯火が必要

夜間飛行では、辺りが暗くなるため飛行中に機体の位置が見えにくくなります。

そのため、標準マニュアルでは「機体の向きが視認できるようにライトを点灯させること」と定めています。

ただしドローンの飛行範囲が照明で十分に照らされている場合、ライトの点灯は不要です。

飛行高度と同じ距離の半径の範囲内に第三者を入れない

夜間飛行実施時の安全対策として、飛行高度と同じ距離の半径範囲内に第三者(ドローンの飛行やその目的とは無関係の人)を除外する必要があります。

例えば高度10mの上空でドローンを飛ばす場合、ドローンの真下を中心として半径10m以内の範囲に第三者が立ち入ってはならないとされています。

やむを得ず第三者が範囲内に立ち入ってしまう環境で夜間飛行を実施する場合は、独自のマニュアル作成が必要です。

離着陸場所に照明を用意する

ドローンそのものにライトをつけても、辺りが暗いと着陸予定の場所が見えにくく、どこへ着地すれば良いか分からなくなる恐れがあります。

そのため、夜間飛行では車のライトや撮影用の照明器具など十分な明るさを確保できる機材で離着陸場所を照らし、視認性を高めることが求められます。

補助者にドローンの特性を理解させておくドローンの飛行における補助者とは、飛行経路周辺に有人機や第三者などの通行がないかを監視する、飛行状況に応じて継続的に安全運航を実施できるよう操縦者へ助言するといった役割がある人のことです。

夜間飛行を実施する場合、飛行させるドローンの特性を十分に理解した補助者を飛行エリア周辺に配置する必要があります。

先述した、「飛行高度と同じ距離の半径の範囲内に第三者を入れない」という基準を満たすためにも必要な措置です。

夜間飛行のための訓練を行う

標準マニュアルでは、ドローンを飛行させるものの遵守事項として「基本的な操縦技量の習得」や「業務を実施するために必要な操縦技量の習得」が定められています。

夜間飛行を実施する際は、上記2つの項目で指定された操作を安定して行えるように訓練する必要があります。

各項目で指定されている操作は、以下の通りです。

スクロールできます
基本的な操縦技量の習得・離着陸
・ホバリング
・左右方向の移動
・前後方向の移動
・水平面内での飛行
業務を実施するために必要な操縦技量の習得・対面飛行
・水平飛行と上昇・下降を組み合わせた飛行
・8の字飛行

なお、各操作には距離や回数に関しても指定されているため、詳しくは標準マニュアルを確認しましょう。

ただし操縦訓練は夜間に屋外で行うのではなく、航空法が適用されない場所(屋内など)やドローン練習場などで行いましょう。

ドローンで夜間飛行をする際の申請方法

国土交通大臣へ許可申請をする方法は、「書類を窓口へ提出する」か「DIPS2.0(ドローン情報基盤システム)を利用してオンライン申請する」かの2通りです。

1から書類を揃えて作成し、窓口へ提出すると手間も時間もかかります。

自分の好きなタイミングで手軽に申請できる、オンライン申請がおすすめです。

DIPS2.0を使って申請する手順

ここでは、DIPS2.0を使った夜間飛行の許可申請手順を解説いたします。

申請前の準備

DIPS2.0で夜間飛行の申請をするにあたって、以下の手続きを済ませておく必要があります。

  • DIPS2.0のアカウント開設
  • DIPS2.0を利用した機体登録とリモートIDの実装

機体登録やリモートIDの実装も、航空法で100g以上のドローンに義務付けられています。

まだ済ませていない方は、DIPS2.0でアカウントを開設のうえ機体登録と機体に搭載する(または内蔵された)リモートIDの情報を登録しましょう。

申請手順

必要な準備を済ませたら、DIPS2.0にログインのうえ以下の手順で申請を行いましょう。

STEP
メインメニューから「新規申請」を選択する
STEP
「簡易カテゴリー診断」で「夜間飛行」の他、立入管理措置の有無や機体・操縦者の情報など選択する
STEP
診断結果の確認後、「飛行許可・承認申請へ」を選択する
STEP
飛行させる機体の飛行情報を入力する
STEP
飛行機体や操縦者、マニュアルに関する情報入力する
STEP
申請様式や別添資料等を選択し、内容を確認する
STEP
申請書の内容を確認し、提出する

提出後は地方航空局や空港事務所などで申請内容が確認され、確認後にDIPS2.0へ登録されたメールアドレス宛に通知が届きます。

標準マニュアルと独自マニュアルについて

夜間飛行を含む特定飛行の許可申請では、「どのマニュアルに則ってドローンを飛行するか」を選択のうえ、使用するマニュアルの添付が必要です。

先述した標準マニュアルは国土交通省が特定飛行に関する取り決めを定めたもので、そこに記載されたルールに則って特定飛行を実施するなら、標準マニュアルを使用しても問題ありません。

許可申請の際も、国土交通省が公開している標準マニュアルのファイルをそのまま添付するだけで済みます。

一方で「目視外で夜間飛行をしたい」など、特定飛行の目的に標準マニュアルのルールがそぐわない場合は、自作のマニュアルを添付する必要があります。

このマニュアルは「独自マニュアル」と呼ばれ、許可申請の際に審査対象となります。

標準マニュアルの内容をカバーできる安全対策を十分に立てて、独自マニュアルを作成しましょう。

自力での作成が難しい場合は、ドローンの許可申請に特化した行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。

国家資格を取得すると許可申請なしで夜間飛行が可能

継続的に夜間飛行を実施する場合、包括申請を利用しても最低1回は手続きの手間が生じることに変わりはありません。

頻繁に夜間飛行を実施する必要がある事業者だと、煩わしく感じる方もいることでしょう。

そこで検討したい手段が、国家資格の取得です。

許可申請なしで夜間飛行をするには「二等操縦者技能証明」が必要

2022年の改正航空法にて、ドローンの国家資格制度である「無人航空機操縦者技能証明制度」が新設されました。

「一等無人航空機操縦士(一等資格)」と「二等無人航空機操縦士(二等資格)」という2つの区分がありますが、基本的に二等資格を取得すれば一部の特定飛行を許可申請なしで実施できます。

ただし、立入管理措置なしで特定飛行を実施する場合やレベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)も実施する場合は、一等資格の取得が必要です。

夜間飛行の限定変更が必要

ドローンの国家試験には、「基本」と「限定変更」という項目があります。

基本とは、昼間に・目視内で・最大離陸重量25kg未満の機体を飛行させるために必要な技能を測る審査のことです。

一方で限定変更は、昼間・目視内・25kg未満という限定された項目のいずれかを解除するために必要な実技審査です。

つまり、ただ「基本」で国家資格を取得しただけでは夜間飛行は行えません。

夜間飛行を許可申請なしで実施するなら、基本の国家資格を取得のうえ、昼間飛行の限定変更に必要な実地試験に合格しましょう。

国家資格を取得する手順

ドローンの国家資格を取得する方法としては、「国土交通省認定のスクールを受講してから試験を受ける」か「独学で試験を受ける」かの2通りです。

前者であれば、国家資格取得に必要な学科試験・実地試験・身体検査のうち、実地試験が免除されます。

知識や技術も効率的に身に付けられるため、スクールを受講のうえ受験することをおすすめします。

スクールを受講する場合の国家資格取得の手順は、以下の通りです。

STEP
DIPS2.0にログインする
STEP
「技能証明メニュー」から「技能証明申請者番号の取得」を選択する
STEP
受講するスクールの情報や申請者情報などを入力する
STEP
申請情報を確認のうえ「取得申請」をクリックする
STEP
到達確認のメールが届いたら確認用のURLをクリックして申請完了
STEP
番号取得後、無人航空機操縦士試験申込システムにログインする
STEP
「受験資格の確認」を選択のうえ手続きを済ませる
STEP
スクールを受講する
STEP
学科試験と身体検査を受ける
STEP
合格後、無人航空機操縦士試験申込システムから試験合格証明書の発行申請をする
STEP
DIPS2.0から技能証明書の発行申請をする

夜間飛行を行う場合は、「技能証明申請の限定変更申請方法」に従い夜間飛行の限定変更申請を行いましょう。

手続きには、技能証明合格証明書番号などの情報が必要です。

ドローンの夜間飛行で撮影された映像

ドローンで撮影した映像作品は、YouTubeを中心に数多く投稿されています。

その中でも、夜間ならではの美しい景色がカメラに収められた映像作品をご紹介いたします。

今後、夜間飛行でドローン空撮を楽しみたい方は参考にしてみても良いでしょう。

ドローンの夜間飛行「第30回赤川花火記念大会を空撮@山形県鶴岡市|NTT e-Drone Technology

Parrot製の産業用ドローン「ANAFI Ai」を用いて撮影された、山形県鶴岡市の第30回赤川花火記念大会の花火です。

4800万画素カメラを搭載したANAFI Aiの、優れた撮影性能が光る映像作品といえます。

映像では夜空で弾ける火花ひとつひとつの鮮やかな色合いまで鮮明に映し出されており、終始目を奪われるような美しさです。

【空撮/4K】神戸 -夜景-

兵庫県神戸市にある神戸港の景色を、日没から夜にかけてドローンで撮影した映像です。

様々な視点から撮影されたこの映像には、ビルやイルミネーションなどの光が一面に広がっています。

暗い夜空と光のコントラストや水面に映る色鮮やかな光など、夜景ならではの魅力が2分弱に凝縮されている作品です。

ドローンの夜間飛行に関するよくある質問

最後に、ドローンの夜間飛行に関してよくある質問を回答と一緒にまとめました。

夜間飛行の”夜間”の基準は?

国土交通省では、「夜間」の解釈については国立天文台が発表する日出・日没時間が基準とされています。

そのため、国内でも夜間飛行とみなされる時間は若干の違いがある点に注意が必要です。

飛行場所の日出・日没時間については、国立天文台のホームページから確認できます。

屋内であれば夜間でもドローンを飛ばしてもいい?

航空法の規制が適用されるのは屋外のみであり、屋内であれば夜間でも許可申請なしでドローンを飛ばせます。

なお、屋内は天井や壁で囲われた空間だけでなく、四方をネットやフェンスなどで囲われた屋外のスペースも屋内に該当するため、許可申請なしの夜間飛行でも問題ありません。

100g未満のドローンであれば自由に夜間飛行をしてもいい?

100g未満のドローンは航空法の規制対象外であるため、許可申請なしで夜間飛行が可能です。

ただし「小型無人機等飛行禁止法」など、100g未満のドローンにも規制が適用される法律があります。

屋外で夜間飛行をする場合は、飛行場所が航空法以外の法律で規制されていないかどうか確認しましょう。

まとめ

ドローンの夜間飛行は航空法で「特定飛行」として規制されており、屋外かつ100g以上のドローンで実施する場合は許可申請が必要です。

趣味目的で時々夜間にドローンを飛ばす程度の頻度であれば、個別申請でその都度手続きしても良いでしょう。

一方、事業などで継続的な夜間飛行を実施する場合は、国家資格を取得すると許可申請が不要になるため便利です。

ドローンの夜間飛行は昼間に比べて事故のリスクが高まるため、航空法のルールをよく確認のうえ、十分な安全対策を講じて実施しましょう。

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