ドローンの操縦にアマチュア無線の資格は必要?FPVドローンを飛ばす時の注意点を解説

更新日: 2024.07.12 公開日: 2024.07.16
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特定のドローンを飛ばす場合、「アマチュア無線技士」という資格の取得が必須になります。

しかし、アマチュア無線技士は一般的に身近な資格ではないため、どんな資格なのか想像しがたい方も多いことでしょう。

そこで今回は、ドローンでアマチュア無線技士資格が必要となるケースや資格の取得方法などについて、詳しく解説いたします。

有名なドローン機種ごとにアマチュア無線技士資格が必要かどうかも解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

ドローンの操縦にアマチュア無線の資格は必要?

ドローンはプロポとの無線通信で飛行する機器であり、法的には無線資格が適用される「電波を発する無線設備」に該当します。

そのため、「ドローンには無線資格が必要」という話を耳にした方もいるのではないでしょうか。

一般的な(技適マークがある)ドローンは資格不要

DJI MavicシリーズやHoly stone製ドローンなど、コンシューマー向けに販売されている一般的なドローンは無資格でも飛行が可能です。

厳密には、「周波数2.4GHz・出力数10mW以下・技適マークあり」のドローンなら無線資格なしで飛行できます。

電波法では極めて微弱な電波を発する無線局、一定の技術的条件に適合する無線設備を使用する小電力無線局に関しては、資格が不要とされているからです。

国内に流通している多くのコンシューマー向けドローンは上記の条件を満たしているため、あらかじめ資格を取得しなくてもすぐに飛ばせます。

5.8Ghzの電波を使用するFPVドローンでは資格が必要

ドローンの中には、周波数5.8Ghz帯の電波を使用している機種もあります。

特に、ドローンレースなどに使われるFPVドローンの多くは周波数が5.8Ghz帯です。

周波数5.8Ghz帯の電波を使用しているドローンを使用する場合は、最低でも「アマチュア無線技士」の資格を取得する必要があります。

ただし、ドローンの用途によって取得すべき無線資格が変わるため、注意が必要です。

用途ごとに取得すべき無線資格については、後ほど詳しく解説いたします。

アマチュア無線の資格を取得する方法

無線資格には様々な種類があるため、いざ取得を目指そうとしてもどれを選ぶべきか迷う方も多いことでしょう。

ここでは、「アマチュア無線技士」に焦点を当てて取得すべきケースや取得方法を解説いたします。

FPVドローンの操縦に必要なのは「第四級アマチュア無線技士」

趣味目的の空撮やドローンレースの参加でFPVドローン(周波数5.8GHz帯)を使いたい場合は、「アマチュア無線技士」という資格が必要です。

アマチュア無線技士には第一級~第四級までの区分があり、第一級に近づくほど操作可能な無線機器の幅が広がります。

ドローンの場合は、以下の操作が許可される「第四級アマチュア無線技士」を取得します。

  • 空中線電力10W以下の無線設備で、21~30MHzまたは8MHz以下の周波数の電波を使用するもの
  • 空中線電力20W以下の無線設備で、30MHzを超える周波数の電波を使用するもの

「第四級アマチュア無線技士」の取得方法

第四級アマチュア無線技士の資格を取得する方法は、「講習会に参加して修了試験を受ける」か「自分で国家試験を受ける」かの2通りがあります。

前者は一般財団法人日本アマチュア無線振興協会(JARD)やその他委託法人・団体が主催する講習会に参加し、最後に行われる修了試験を受験するという手段です。

会場へ行くかe-ラーニングで必要な知識を学び、修了試験を受けて合格すると資格を取得できます。

後者は、独学で知識を身につけてCBT方式の国家試験を受験する方法です。

講習会に参加するよりも低コストで資格取得を目指せるため、自分でスケジュールを管理しながら地道に勉強を続けられる方はこちらの手段を選んでも良いでしょう。

資格の取得に加えて「無線局の開局申請」も必要

第四級アマチュア無線技士の試験は難易度が高くないため、十分に試験勉強をしていれば苦戦せず資格を取得できる場合が多いです。

しかし、資格を取得したら即時5.8GHz帯のFPVドローンを使えるわけではありません。

実際に5.8GHz帯のFPVドローンを使う場合は、無線局の開局申請という手続きも済ませる必要があります。

資格取得よりも手間がかかるうえに難しい過程なので、スケジュールに余裕をもって準備しましょう。

開局申請の流れ

2024年6月現在、無線局の開局申請の際はJARDによるVTX系統図の保証と審査を受け、管轄の総合通信局へ書類を送ってもらうという方法があります。

申請の基本的な流れは、以下の通りです。

STEP
使用するドローンに搭載されている映像送信機(VTX)の系統図を入手する
STEP
JARDのホームページから「無線局免許申請書」と「アマチュア局の無線設備の開設保証願書」をダウンロードする
STEP
2で入手した書類に必要事項を記載する
STEP
JARDへ保証料を振り込む
STEP
4,300円の収入印紙・保証料振込の証明書類・返信用封筒と切手・電波使用料前納申出書(任意)を用意する
STEP
必要書類をJARDへ直接提出するか郵送する
STEP
JARDでの審査完了後に書類が総合通信局へ転送される
STEP
総合通信局での審査完了後に無線局免許が発給される

海外のサイトに販売されているドローンの多くは、申請に必要なVTX系統図が付属していません。

手続きの手間を減らしたい場合は、国内のショップからVTX系統図付きのドローンを購入しましょう。

産業用ドローンやFPVドローンを業務で使う場合は別の資格が必要

先述したように、ドローンの用途によって必要な無線資格の種類が変わります。

5.7GHz帯の産業用ドローンや5.8GHz帯のFPVドローンを「事業(営利)目的で使う場合」は、第三級陸上特殊無線技士の資格が必要です。

第四級アマチュア無線技士はあくまで利益の生じない趣味目的に限られる資格のため、注意しましょう。

第三級陸上特殊無線技士とは

特殊無線技士とは、第一級~第三級までの区分が設けられた無線従事者資格のひとつです。

事業に用いるドローンの場合は、以下の操作が許可される「第三級特殊無線技士」の資格が必要になります。

  • 空中線電力50W以下の無線設備で、25010khz~960MHzの周波数の電波を使用するもの
  • 空中線電力100W以下の無線設備で、周波数が1215MHz以上の電波を使用するもの

第三級陸上特殊無線技士が必要なドローン

第三級陸上特殊無線技士が必要になるドローンは、以下の通りです。

  • 5.8GHz帯の電波を使用するドローン
  • 5.7GHz帯の電波を使用するドローン
  • 2.4GHz帯の電波を使用する、出力10mW以上のドローン
  • 169MHz帯の電波を使用するドローン

事業で上記のドローンを使う場合はもちろん、賞金が発生するドローンレースへ参加する場合にも第三級陸上特殊無線技士を取得することをおすすめします。

人々の生業が多様化する昨今、ドローンレースといえど利益が生じるのであれば「業務目的の使用」とみなされる可能性があるからです。

第三級陸上特殊無線技士の取得方法

第三級陸上特殊無線技士の取得方法は、「講習会に参加して修了試験を受ける」か「自分で国家試験を受ける」かの2通りです。

基本的な取得方法としては、第四級アマチュア無線技士と大きな違いはありません。

講習会に参加する際も、会場へ行くかeラーニングで受講するか選ぶことができます。

修了試験に関しては、eラーニングの場合は別途全国にあるCBTセンターで受験する必要があります。

業務用の国家資格といえど、第三級陸上特殊無線技士の試験は70%~80%程度の合格率となっているため難しくはありません。

着実に試験対策を行い、取得を目指しましょう。

無線資格がいらない代表的なFPVドローン

FPVドローンの多くは5.8GHz帯の電波を使用するため、無線資格が必要になります。

しかしただ趣味でFPVドローンの飛行や空撮を楽しみたい方にとって、資格取得や開局申請の手続きはハードルが高いと感じるはずです。

ドローンレースなどに参加する予定などはなく、個人的に飛行や空撮を楽しむためだけにFPVドローンを使いたい場合は、無線資格が不要なドローンの購入をおすすめします。

ここでは、FPVドローンの中でも無線資格なしで飛ばせる人気な機種をご紹介いたします。

「DJI FPV」

空撮用ドローンにおいて数多くの機種を生み出している最大手ドローンメーカー、DJIのFPVドローンです。

2.4GHz帯の電波を使用しており、専用のゴーグルからリアルタイムで伝送される映像を楽しみつつ操縦することができます。

ノーマルモード・マニュアルモード・スポーツモードという3種類の飛行モードが搭載されており、安定した基本的な飛行からアクロバティック飛行まで、操縦者のレベルに合わせて選択可能です。

「DJI FPV コンボ」なら機体本体・プロポ・ゴーグルをセットで入手できるため、初心者の方にもおすすめです。

ただし機体重量は100gを超えており、航空法の規制を遵守しながらの飛行が求められます。

「GFORCE LEGGERO FPV」

国内のドローン・ラジコンメーカーであるGFORCEの人気カメラドローン、「LEGGERO」にFPV機能が加わった機種です。

機体重量はわずか60gと軽く航空法の対象外であるため、無線資格の取得・飛行許可申請のどちらも不要です。

コンパクトな機体に4K画質の写真・2K画質の動画撮影に対応したカメラを搭載しており、チルト回転のフレキシブルな調整ができるため、どんなアングルからの撮影も楽しめます。

あらかじめスマホに専用アプリをダウンロードし、付属のゴーグルにスマホを装着することで本格的なVR体験が可能です。

「HOLYSTONE HS280D」

Photo by holystone

トイドローンメーカー、Holy StoneのFPVドローンです。

Holy Stoneは中国のメーカーですがサポートは日本語に対応しており、不具合対応も迅速なことから日本のユーザーからも多くの高評価を集めています。

自動ホバリング機能の他、機体の向きにかかわらず直感的な操作が可能になるヘッドレスモードも搭載しており、操作に不慣れな初心者も安心して飛行できます。

合計(バッテリー2本分)28分と、長時間の飛行が可能な点も嬉しいポイントです。

付属のプロポにスマホを装着できる部分があり、手元とリアルタイム映像を同時に見ながら操縦することができます。

ただし、機体重量は164gのため屋外で飛行させる場合は航空法の規制に注意が必要です。

海外製のドローンを個人輸入する時などは要注意

DJIやHoly Stoneなど、海外の大手ドローンメーカーが日本のショップで販売しているドローンのほとんどは技術基準適合証明をクリアしています。

その際に技適マークを取得しているため、2.4GHz帯のドローンなら使用に際して無線資格が不要です。

しかし、海外で販売されているドローンに関しては日本の技術基準に準拠していないものが多いです。

並行輸入品(正規とは異なるルートで輸入されたもの)や現地のショップに販売されている海外製ドローンの場合、技適マークがついていない可能性を考えて購入前によく確認しておきましょう。

技適マークを取得しているドローンは、プロポの製造者ラベル欄や機体などにシールが貼られています。

技適マークがないドローンを国内で使用すると、電波法違反として罰則の対象になります。

ドローンのアマチュア無線資格に関するよくある質問

最後に、ドローンのアマチュア無線資格に関してよくある質問を回答と一緒にまとめました。

業務用ドローンの場合はアマチュア無線の資格は必要?

5.7GHz帯の産業用ドローンや5.8GHz帯のFPVドローンを、「事業目的で使用する場合」は第三級陸上特殊無線技士という資格が必要です。

アマチュア無線資格は、利益が生じない趣味目的で対象のドローンを使用する場合に取得します。

FPVドローンを飛ばす際は絶対に資格が必要?

FPVドローンは、必ずしも無線資格が必要というわけではありません、

「周波数2.4GHz・出力数10mW以下・技適マークあり」という条件を満たしたFPVドローンなら、無資格でも飛ばすことができます。

例えばDJI FPV・GFORCE LEGGERO FPV・HOLYSTONE HS280Dなどは無線免許の取得が不要です。

第四級アマチュア無線技士の取得にかかる費用は?

第四級アマチュア無線技士では、国家試験を受験する場合は5,100円(+振込手数料)がかかります。

講習会の受講後に修了試験を受ける場合の費用は、受講先にもよりますが10,000円~20,000円程度が目安です。

第四級アマチュア無線技士の勉強方法は?

独学で資格取得を目指す場合は、第四級アマチュア無線技士用の参考書を繰り返し学習しましょう。

試験の難易度は高くないため、基本的な知識をしっかりと身につけて過去問を解いていけば合格できます。

ただし独学は時間がかかるため、短期間で資格取得を目指したいなら講習会への受講がおすすめです。

まとめ

ドローンでアマチュア無線技士資格の取得を検討すべきケースが、「趣味目的でFPVドローンを使用する場合」です。

FPVドローンの多くは5.8GHz帯の電波を使用しており、電波法によりアマチュア無線技士の資格取得が義務付けられています。

ただし、事業(営利)目的でFPVドローンや5.7GHz帯などの産業用ドローンを使用する場合は、第三級陸上特殊無線技士の資格を取得しましょう。

無線資格の取得そのものは難しくありませんが、開局申請は必要書類の準備に手間がかかります。

本記事を参考に、必要なことをひとつずつ着実にこなしながら、法律を遵守したドローン運用を心がけましょう。

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