ドローンの産業利用の現状と今後の課題について

更新日: 2021.11.24 公開日: 2017.05.16
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ドローンの産業利用は、災害時の調査や測量の分野において最も進んだ成果をあげています。
実例を取り上げながら、今後さらに産業界でドローンの活用が進むために克服すべき課題についてご紹介します。

目次

ドローンの活用が進む災害時調査

見出し1:ドローンの活用が進む災害時調査

ドローンの産業利用が最も進んでいる分野の一つが、災害時調査です。
あまり知られていませんが、国内では、まだドローンという言葉がほどんと出回っていない
2000年の有珠山噴火時の調査ですでに活用されていました。

災害時調査でドローンが使用されるのは、主に被災画像や画像の入手です。
火山噴火や土砂災害が生じた際、ドローンが収集したデータをもとに地形モデルを作成し、
被害状況の把握に役立てられます。

例えば、2016年の4月に熊本地震があった際も、主に被害の大きいエリアを対象に、
ドローンによる被害状況の撮影が実施されました。災害時には、被災の程度を証明する罹災証明書が発行されますが、
これが支援活動を遅らせる原因となっています。
ドローンによる空撮画像によって屋根や壁などの被害状況を確認することで、災害対策がより効率化されることになります。

また、2015年の4月に起きた、バヌアツ共和国でのサイクロン災害調査をはじめ、
海外の各地や国内での風水害の調査にドローンが活用されています。

地理的にアクセスしづらく気象条件も悪い環境下では、ドローンによる空撮の効力は絶大です。
一切の人的資源を必要とすることなく、状況把握をスムーズに行うことができるのです。

測量の分野でもドローンの実用化が進展

見出し2:測量の分野でもドローンの実用化が進展

もう一つ、ドローンの産業活用が進んでいる分野が建設です。
建設業界では、少子高齢化に伴い、現在いる労働者のうちの3分の1、110万もの人が職を離れると言われており、
将来的に人材不足になる大きな不安を抱えています。

それに呼応する形で、測量の際にドローン活用が進められてきました。
その問題の解決に向けて、2016年から公共事業の受注者に対して、
ドローンを使った情報通信技術の活用を義務付けるなど、国も積極的にドローンの活用に関わっている状況です。

例えば、鹿島建設では、3D図面の製作を担当する企業と共同で、
ドローンが撮影した測量写真を3Dの図面へと変換し、それを工事の管理に役立てるシステムの開発に成功しています。

誤差をプラスマイナス6cmにまで抑えた精度の高さで(従来のドローン測量ではプラスマイナス10cm)、
これにより大幅な時間・コストの削減が可能となりました。

また、光波測量では10人必要だった人的資源も、1人で済むことになります。
出力にかかる時間についても、従来は光波測量で8日かかっていたものが、
ドローン撮影から最終データの出力までおよそ1日に短縮されます。
建設業界が直面する人員不足の課題解決にとって、ドローンは今やなくてはならない存在と言えるでしょう。

さらなる産業利用のためには法整備が急務

見出し3:さらなる産業利用のためには法整備が急務

しかし、ドローンの産業利用を進める上で、課題がないわけではありません。
なかでもとりわけ重要なのが法整備です。例えば、実証実験が進められている宅配ドローンについては、
土地の所有者の承諾なしに民有地の上空を飛行させることができません。
現行の法律のままで実用化に漕ぎ着けることは不可能です。また、道路付近でドローンを飛行させただけでも、
現在の道路交通法に抵触してしまう恐れがあります。

災害調査においてドローンの活用が進んでいる最大の理由は、
2015年に施行された改正航空法による制限を受けることなくドローンを使用できることにあります。
ドローンの活用範囲を広げるには、より自由で安全にドローンを運用するための法制度が必要と言えるでしょう。

法整備だけではありません。
現状では、ドローンが万が一落下した場合、物的・人的な被害が出ることが避けられません。
パラシュートを装備するなど、ドローンが落下した場合の安全措置を含めた、さらなる技術開発もまた大きな課題と言えるでしょう。

ドローンの産業利用の現状について、災害調査・建設業界の測量における具体例を取り上げ、
さらに克服すべき課題についても紹介しました。
法整備や技術開発が進められることで、ドローンの産業利用は飛躍的に伸びるはずです。

ドローンを適切に安全に活用したより住みよい社会の到来に期待したいものですね。

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