水中を測量できるグリーンレーザースキャナとは?
グリーンレーザースキャナは、緑色のレーザー光を照射し、水面反射するパルスの往復時間と、水を透過して水底で反射するパルスの往復時間の差から水の深さを算出して、陸上と水底の地形を同時に3次元計測できる測量装置です。
従来の測量の場合、地上と水底を別々の方法で計測して結果を合成する必要があったため、時間と手間がかかっていました。しかし、グリーンレーザースキャナを使えば陸上と水底を同時に測量できますので、作業が効率的に進みます。また、取得できる測量データの精度も非常に高いです。
また、近赤外線レーザーを使った空からの測量では、濡れた地面や黒い対象物を計測することができず、洪水が発生した時には地面が乾くのを待つしかありませんでした。でも、グリーンレーザースキャナであれば、豪雨や台風などの災害場所で、雨や河川の氾濫により濡れた地形を空から一度に測量することが可能です。グリーンレーザースキャナは被災地でも今後活躍していくことでしょう。
ドローン搭載型グリーンレーザースキャナが開発されている
「株式会社パスコ」と「株式会社アミューズワンセルフ」は、国土交通省が立ち上げた「革新的河川管理プロジェクト」の「陸上・水中レーザードローン」の開発チームとして、ドローンに搭載できるグリーンレーザースキャナ装置の研究開発を2017年4月から共同で進め、実用化研究に成功しました。
開発されたグリーンレーザースキャナは、総重量が2.8kgと小型・軽量化を実現しており、積載可能重量が3kg以上のドローンであれば、機種を選ばずに運用することが可能です。これまで、ドローンに搭載できるグリーンレーザースキャナは重量などの関係で日本には存在していませんでしたが、今回の開発でそれが可能になりました。この技術は、世界的にみても画期的であるとのことです。
ちなみに、ドローンを測量に使うことにはさまざまなメリットがあります。例えば、地上で行う測量よりも作業がはるかに早く進みます。地上での測量と比べて最短で6分の1くらいまで作業時間を短縮できると言われています。また、山や崖、被災現場など、安全に測量するのが難しかったり人が入っていくのが大変だったりする場所でも、ドローンであれば空から容易に測量できます。
さらに、ドローンを使えばセスナなどの航空機による測量と比べてコストがはるかに安く済みます。しかも、航空機よりも低い高度を飛行して測量できますので、より精度の高いデータを取得できます。ドローンによる測量は航空機と比べてもメリットがあると言えるでしょう。
このようなたくさんのメリットがあるドローンに、今回高い性能を持つグリーンレーザースキャナを搭載できるようになったことで、測量技術の幅が広がりました。
ドローン搭載型グリーンレーザースキャナの活用例
では、ドローン搭載型のグリーンレーザースキャナは今後どのように活用されていくのでしょうか。以下で、活用例を取り上げます。
・河川管理
堤防から河川敷、河道を一度にグリーンレーザースキャナで測量し、高精度の3Dモデルを生成できます。水陸がつながった面的な3Dモデルは、河道状況の把握や河川の維持管理にとても役立つでしょう。
・港湾管理
港湾構造物(堤防や離岸堤、消波ブロックなど)の管理にも、グリーンレーザースキャナで作成した高精度の3Dデータを活用できます。
・i-Construction
i-Constructionとは、測量から設計、施工、検査、維持管理に至るすべての事業プロセスでICT(情報通信技術)を導入することによって建設生産システム全体の生産性向上を目指す取り組みです。グリーンレーザースキャナ搭載型のドローンは、このi-Constructionの推進に貢献するでしょう。
このように、ドローン搭載型のグリーンレーザースキャナは今後さまざまな形で活用されていくと考えられます。
また、それに伴いドローン本体やグリーンレーザースキャナの技術はますます進歩していくことでしょう。例えば、ドローンの連続飛行時間が今より長くなったり、グリーンレーザースキャナがさらに小型・軽量化されたりすれば、ますます活用されやすくなります。今後の技術開発に期待しましょう。
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