空中を自在に移動するドローンは、個人的な趣味からビジネスまで様々な場面において活用することができます。
ドローンの活用事例として代表的な分野といえば、上空からの視点で写真や映像を撮影する「空撮」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
もちろん空撮の分野においてドローンは非常に有用なツールと言えますが、それ以外でも数多くの分野で活躍が期待されているのです。
そこで今回は、ドローンはどのような目的で活用されているのか?どのような目的での活用が期待されているのか?というポイントについて詳しく解説いたします。
- ドローンがどのような目的で活用されているのか
- 今後、どのような目的で活用が期待されているのか
ドローンが活用される分野とは
ドローンは様々な分野で実際に活用されていたり、将来的な活用に期待されています。
特にドローンの有用性が見出されている分野としては、以下の7種類です
・空撮
・産業分野
・警備・セキュリティ
・災害調査
・生態調査
・医療
・軍事の7種類です。
それぞれどのようにしてドローンが活用されるのか、以下より詳しく解説いたします。
空撮によるエンターテイメント
先述の通り、ドローンの代表的な活用事例とも言える分野が空撮です。
近年は映画やMVの撮影、スポーツ中継などエンターテイメント分野においてドローンが盛んに取り入れられています。
カメラを搭載したドローンを飛ばせば、地上からの撮影では決して表現できない臨場感のあふれる写真や映像を残すことができるのです。
ホビー用として開発されたものでも、4K映像撮影に対応しているドローンは多くあります。
操縦技術次第では個人的な趣味としての空撮でもプロ並にハイクオリティな映像を残すことができるでしょう。
産業分野での利用
産業に関しては、主に「農業」「測量」「物流」の分野でドローンを取り入れることにより様々なメリットを得ることができるとされています。
産業分野での利用については、以下の記事でも詳しく紹介しています。
農業分野での利用
農業におけるドローンの利用例としては、機体に農薬を積載して上空から圃場へ散布する、「農薬散布」という使い方が代表的です。
人力や有人ヘリによる散布よりも作業効率が良く、体力的な負担がかからないことから、近年はドローンを導入する農家が増えている傾向にあります。
他にも、
・農作物の運搬作業や空撮画像から圃場の状況を確認する「センシング」
・作物に影響を及ぼす鳥獣対策
など、農業分野におけるドローン活用の可能性はさらなる広がりを見せているのです。
こちらの記事では、農業分野での具体的なドローン活用例をより詳しく解説しています。
農業用ドローンを取り入れる際のコストや必要資格の有無、飛行許可申請などについても記載していますので、併せてご覧ください。
測量分野での利用
従来、専用装置を用いた地上での測量、またはセスナなど有人航空機を用いた上空からの測量が測量分野における一般的な方法とされていました。
しかしどちらの方法も手間がかかるうえ、測量範囲が広いほど作業時間やコストは膨れ上がってしまうという問題がつきものです。
そんな問題を解決できるツールとして、近年ドローンが注目を集めています。
ドローンで空撮した写真を使って専用ソフトで解析すれば簡単に地形情報データを作成することができます。
そのため、従来の方法よりも作業時間やコストを大幅に削減できるというメリットがあるのです。
また、レーザーを搭載したドローンで地形データを得ることができる「レーザー測量」という活用方法も存在します。
写真による測量よりもコストはかかりますが、地形データをより精密に得ることができる方法です。
ドローン測量で得ることのできるデータやドローンを使った測量の手順などは、こちらの記事で詳しく解説しています。
物流分野での利用
各国の企業がドローンを用いた荷物輸送サービスの開発を行っている中、日本国内でも山間部や離島といった過疎地におけるドローン配送の実験が盛んに実施されています。
物流分野にドローンを取り入れることで、問題視されているドライバー不足や渋滞の影響による配達遅延などの改善に繋がると期待されているのです。
今年に実施予定とされている航空法の改正など、ルール整備が進めば物流分野へドローンが参入する流れも一気に加速することでしょう。
警備・セキュリティ分野での利用
建物や施設における警備を行う場合、警備員の巡回や防犯カメラによる巡回が一般的な方法とされています。
しかし、人による警備は人件費がかかるうえ、警備員が犯罪に巻き込まれるリスクが伴うものです。
暑い夏場や寒い冬場の環境下でも警備を実施しなければならず、給与額の相場は決して高いものとは言えない厳しい労働環境であるため、人材が集まりにくいことも問題視されています。
そんな中、警備における新しい方法として注目されているツールがドローンです。
ドローンを遠隔操作のうえモニタリングすれば警備員が直接現場へ足を運ぶ必要がなくなるため、犯罪に巻き込まれるリスクを回避することができます。
また、人が立ち入りにくい場所の巡回が可能となる点もドローンならではのメリットです。
現在は「セコム株式会社」や「プロドローン株式会社」などの企業で、ドローンを活用した巡回サービスが実施されています。
ただしドローンは悪天候時の航行が困難であったり、有人地帯での飛行は落下による危険が伴うなど様々な課題も残ります。
将来的な技術の進歩によっては、施設の至る場所に警備ドローンが巡回している様子が当たり前とされる社会も現実となるでしょう。
災害調査
ヘリコプターなどの有人航空機よりも小回りが利くうえ、準備に時間を要さない特徴を活かして災害発生時の調査にドローンが使われています。
ドローンを使うことで、人が立ち入るには危険な状況となっている被災地の調査も容易に行うことができるというメリットがあるのです。
光学カメラや赤外線カメラなど、搭載機器の異なるドローンを使い分ければ様々な場面に応じた調査が可能となります。
また、火災発生時には消火剤を散布したり、水害の際はロープや浮き輪を要救助者へ届けたりと、被災者救助におけるリスク軽減にもドローンが有効です。
生態調査
山間部などに生息する野生動物の生態調査を実施する際、ドローンであれば人が立ち入れないような環境下でも動物の生育状況を把握することができます。
遠隔操作が可能なドローンであれば動物を驚かせたり警戒させたりする心配もないため、自然な姿を捉えながらの調査が可能となるのです。
人力または有人航空機で時間をかけて実施する生態調査でしたが、運用に時間や手間がかからないドローンであれば野生動物の情報を素早く収集することができます。
また、水中を泳ぐ「水中ドローン」も活用すれば海洋生物の調査も安全かつ正確に行えるとして期待が高まっています。
医療現場での利用
日本国内における医療関係の問題として、離島や山間部の住民が医療機関へ足を運ぶ際は長時間の移動が必要となり体に負担をかけてしまう点が挙げられています。
この状況の改善にも有効とされている手段が、ドローンによる医薬品の配送です。
現在はオンラインでの診療システムが普及しつつあり、診察や薬に関する説明は自宅でも受けることが可能となりました。
しかし実際に薬を入手するには、薬局まで足を運ぶか配送による受け渡しが必須です。
患者によっては即日の受け渡しを希望する場合もあるため、最速で数十分程度の配送が可能なドローンは非常に有用と言えます。
軍事利用
ドローンなどの無人航空機は元々軍事用として開発されており、現在もなお世界各国にて軍事目的で用いられています。
一般的に出回っているドローンは「民生用」と分類されており、趣味や産業目的を前提として開発されたものです。
「軍事用」として軍事利用されているドローンは敵地の偵察や爆撃などの機能が備わっており、一般人が目にすることはほとんどありません。
ドローンは遠隔操作が可能であるため、敵地の偵察においてパイロットの安全を確保しながらの遂行が可能です。
しかし、軍事用ドローンを操作するパイロットそのものが不足していたり、ドローンによる攻撃を誤って民間人へ放ってしまう事案も発生しています。
パイロットの確保・定着につながる対策や、攻撃精度における開発技術の進歩が軍事用ドローンにおける現状の課題です。
ドローンの軍事利用や実例などは、こちらの記事で詳しく解説しています。
ドローンの活用が広がる現状の課題
ドローンはエンターテイメントや産業、災害調査など多くの分野で活躍できる可能性を秘めています。
一方、社会的な実装を本格化させるうえで以下のような課題も存在します。
ビジネス用途に対する法整備
現在、航空法や小型無人機等飛行禁止法などの法律により、ドローンの飛行に関して様々な制限が設けられています。
ビジネスにおいて発生しうる飛行方法を実施する場合は、許可申請をしたうえで厳しい審査をクリアしなければならないのです。
例えば、目視できない範囲での飛行や催し場所上空で飛行をさせるなどです。
許可申請には手間がかかることから、現状の法規制ではドローンのビジネス的な活用範囲は限られてしまいます。
しかし、今年は改正航空法の実施により有人地帯での目視外飛行(レベル4)が解禁となる他、ライセンス制度の導入により許可申請が一部免除または簡略化される予定です。
行政の視点でもドローンのビジネス活用は促進するべきものとして考えられています。
今後はドローンの活躍の場が広がるような法整備が整うことに期待できるのではないでしょうか。
事故に対するリスク軽減
ドローンを飛行させる以上、どれだけ優れた機能をもつ機体を操縦していたとしても落下や接触事故、器物破損に繋がるトラブルが発生するリスクは避けることができません。
特にビジネスでドローンを活用する場合、もしも上記のような事故が起きた場合は企業として責任を持って対処する必要があります。
そのため、
・ドローンの飛行に関する安全管理の知識を深めること
・安定した操縦が可能なパイロットの育成
・安全装置の搭載
など事故発生率を少しでも下げるために十分な対策を練ることが大切です。
また、人や物に損害を与えた場合の賠償責任や機体の破損・紛失・盗難に備えてドローン保険へ加入することをおすすめします。
プライバシー侵害のリスク
ドローンで空撮を行う場合、特に注意するべきポイントが「プライバシーの侵害」です。
第三者の顔や車のナンバープレート、住居内の様子が映り込んだ写真・映像を本人の許可なくインターネットへアップロードすることで、プライバシーや肖像権の侵害となってしまう恐れがあります。
誰かのプライバシーを侵害するようなものがどうしても映り込んでしまう場合には本人の許可を得るか、写真・映像にぼかしを入れるなどの配慮が必要です。
今後の展開は?
2020年3月にインプレス総合研究所が公表した「ドローンビジネス調査報告書2020」によると、日本国内におけるドローンの市場規模は年々成長を遂げていき、2025年度には6,427億円にまで到達すると予想されています。
現に今回の記事でも解説した通り、空撮などすでにドローンが盛んに活用されている分野もあれば、今後の活躍に期待が集まっている分野も数多く存在しているのです。
特に農業・測量・物流といった産業分野では、ドローンの普及率が大幅に拡大すると考えられます。
今年実施予定の改正航空法も含め、ドローンが活躍しやすい社会づくりも着々と進んでいます。
法整備に加え、事故の発生リスクが低く優れた機能を備えたドローンを開発できるような技術の進歩がドローンの活躍の場を広げるカギとなるでしょう。
まとめ
今回は特にドローンの活用が盛ん、または今後盛んにドローンが活用されていくであろう7つの分野を中心に解説いたしました。
7つの分野以外にも、インフラ点検やスポーツ、レースバトルなどまだまだドローンの力を発揮できる場は存在します。
今後の法整備や技術の発達次第ではさらにドローンの社会的な浸透が進み、街中にドローンが飛び回る風景が日常となる可能性もあるでしょう。
その際、ドローンを運用する側は事故の発生やプライバシー侵害のリスクを回避するための安全管理能力も持つ必要があると言えるでしょう。