DJIの製品を除けば、GoProの「Karma」ほど、空撮用ドローンとして期待を集めた製品はありません。発売元はアクションカメラで先鞭をつけた米国のGoProです。DJIのドローンも、もともとはGoProを搭載できるドローンとして注目されたのです。
GoProが空撮用ドローン市場でDJIの強力なライバルに成長すれば、市場の活性化につながるとの見解もありました。そんなGoProの「Karma」。以下では、その実力と軌跡を追っています。
GoPro初のドローン「Karma」は携帯性に優れた空撮ドローン
「Karma」は、アクションカメラ市場の草分けであるGoProが、空撮用にリリースした初めてのドローンです。米国での発売は2016年10月ですが、国内でも2017年6月から販売をスタートしました。
特徴は、高い画質とそれを支える技術の先進性、小型および軽量化による携帯性、そして空撮以外にも使える利便性の3つが挙げられます。
空撮で使うカメラは、アクションカメラとして評価の高いGoProの上位モデル「HERO55Black」などをドローンの前方に取り付ける設計ですので、良好な画質が期待できます。
サイズや重さは、ドローン市場で高いシェアを誇るDJIのPhantomシリーズと比べて一回り小型かつ軽量化されています。専用のバックパックケースなども用意されており、気軽にアウトドアに持ち出せます。また、カメラは「HERO5Black」ですので、ドローンから外して普段使いすることも可能です。
GoPro「Karma」の基本スペックや、ドローン空撮に重要なカメラ性能は?
それでは「Karma」のドローンとしての基本スペックを見ていきましょう。まず、最高速度は54km/hで、実用レベルを十分クリアしています。
最大伝送距離は約3,000mです。小型ドローンは、数百メートルも離れればほぼ目視は不可能ですから、これも十分でしょう。
そして、最大飛行時間は約20分となっています。ドローンは帰ってくる時間も念頭にフライトプランを立てる必要がありますので、これはやや短い印象です。
一方、搭載する「HERO5 Black」は、画素数が1,200万画素で、動画撮影可能な最大解像度は4K(30フレーム)、ハウジング不要での10m防水、電子式手ぶれ補正などを備えています。互換性のある後継機の「HERO6 Black」は、4K(60フレーム)まで対応しています。
ただし、ドローンの場合、カメラの性能が高いだけでは良好な画質は得られません。飛行中のドローンは、プロペラの回転や風などの影響で、不規則に振動しているからです。
そこで「Karma」は、3軸スタビライザーと呼ばれるジンバル機能により、振動の影響を最小限に抑えて、滑らかな映像を実現しています。
GoPro「Karma」はドローン空撮だけではなく、普段使いも可能
一般に、カメラ一体型のドローンの場合、空撮以外の用途はありません。日本でも法規制が強化され、重さが200g以上のドローンは、飛ばせる場所も制限されています。これに対して「Karma」は、カメラを外して普段使いできるのが大きなアドバンテージです。
GoProは「Karma」の国内投入に先立ち、「Karma Grip」というハンドヘルドスタビライザーを単体で発売しています。実は「Karma」の3軸スタビライザーとは「Karma Grip」そのものなのです。「Karma」からカメラと3軸スタビライザーを外して、同梱の手持ち用グリップに装着すれば、映画のようなブレのない滑らかな映像を撮影できるようになります。
「Karma Grip」のようなジンバル搭載の製品は、プロカメラマンやメディア関係者の間でも注目され、オープンしたばかりの店舗内撮影などに使われ始めています。YouTubeにもジンバルを使った動画が増えてくるでしょう。
残念ながらGoProはすでにドローン事業から撤退している
残念なのは、GoProがドローン事業から撤退してしまったことです。GoProは2017年第4四半期の決算発表で、「Karma」の在庫がなくなり次第、ドローン事業から撤退することを明らかにしています。発表では従業員のリストラなども表明しています。
アクションカメラでは、高いシェアを誇るGoProですが、相次ぐ新規参入による競争の激化や、GoPro製品のデザインを模倣したとしか思えない格安モデルの市場浸食により、値下げなどの対応で厳しい経営が続いています。
特に「Karma」は、2017年10月の発売直後、電源回りのトラブルが発覚し、リコールを余儀なくされています。翌年には販売を再開したものの、見込んだほど人気が高まりませんでした。しかも、先進国ではドローン規制強化の動きが活発です。
GoProは、アクションカメラにおけるトップ企業といっても、従業員は1,000人程度と、企業規模はそれほど大きくはありません。ドローン事業から撤退し、経営資源を他に集中させようというのが、GoProの狙いではないでしょうか。
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