性能が向上し、様々な分野で活躍するようになったドローン。国土交通省が進めるi-Constructionの後押しもあって、ドローン測量の導入がますます進んでいます。今回は気になるドローン測量の精度や、課題であった高低差にどのように対応できるようになったかを解説します。
ドローン測量のメリットと求められる精度
建設現場での人手不足は深刻な問題となっています。それに加えて3K(きつい、汚い、危険)といった良くないイメージによって若い人材の確保が困難になっています。
国土交通省が魅力的な建設現場を目指して取り組んでいるi-Constructionは、「ICTの全面的な活用」により、人材不足の克服や生産性向上への足掛かりとして注目されています。その中でも最大の目玉となっているのがドローンを使った測量です。
ドローン測量にはたくさんのメリットがありますが、そのうちのひとつは時間とコストの大幅な削減です。
i-Constructionの工事事例集には、石川県の耕地・平地(0.01平方キロメートル)において、通常のTS(トータルステーション)での測量に比べると外業が2日から0.5日、内業が2日から0.5日に短縮できたことが述べられています。
さらに外業は4人から3人、内業は2人から0.5人と人員を減らして対応することができました。時間と人員を減らすことができれば、大幅なコストダウンが可能になります。
ドローン測量のメリットに安全性も挙げることができます。測量作業は崖や急斜面などあらゆる場所で行わるため、現場によっては転落などの事故が発生することがあります。危険な場所での作業でも、ドローンを使えば安全にデータ測定が行えます。
建設現場はガテン系の仕事というイメージがありますが、ドローンの操縦やデータ処理は体力に自信がない人でも行うことができるので、新たな人材確保にも繋がります。こうして人材不足という深刻な問題の解決策になることも期待されています。
ドローン測量で作成する三次元点群データの要求精度は「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」によると誤差が最大で0.05m(5cm)になっています。
DJI社のホームページによると、「GCP(地上基準点)がない場合でも、Phantom 4 RTKで撮影された映像で生成されたオルソ画像は、およそ5cmの絶対精度を示します」として、公共測量における要求精度もクリアしていることが示されています。
ドローン測量の課題となるのは高低差の激しい地表
ドローン測量の精度は撮影対象エリアの高低差の影響を受けます。高低差が激しい地表では精度が悪くなってしまうことを示す事例として、「栗平地区砂防堰堤他工事」でのUAVを使用した空中写真測量による出来形管理を挙げることができます。
この工事は2011年の台風12号により形成された天然ダム上で行われ、2015年から2017年に実施されました。
「長大法面における空中写真測量による出来形管理」によると、「UAVの弱点である法肩、法尻等の大きな変化点が表現しづらいこと」や「標高が低いところでは、UAVの飛行高からの高低差が大きくなることから誤差が100mm程度の低い精度となったものと考えられる」と報告されています。
このように高低差の激しい現場では精度が落ちてしまうことが課題となっていて、多くの作業員が要求精度をクリアするために作業を複数回に分けて行うなど、様々な工夫をしながら苦労して撮影してきました。
Phantom 4 RTKに追加された「地形認識モード」で高低差にも対応!
センチメートルの精度を実現したとして注目されている測量専用機Phantom 4 RTKですが、2019年5月7日に公開されたアップデートで「地形認識モード」が追加されました。
これは地形の起伏に合わせて高度を保ちながら自動飛行させることができる機能です。この機能を使えば高低差のある撮影対象エリアにも対応することが可能になります。
DJI日本正規代理店の株式会社セキドのホームページには、「地形認識モード」を使った実証実験について掲載されています。実験を実施したのは福島県いわき市の道路延長工事現場で、起伏が激しい山奥でした。
ネットワークRTKが使用できない現場だったため、「D-RTK2」を組み合わせて写真測量を行いました。現場の最大高低差は約40mでした。
「地形認識モード」で撮影した画像をPix4Dに取り込んで精度検証をしたところ、X軸は約1.8cm、Y軸は約0.68cm、Z軸は約2.5cmという結果になりました。i-Constructionの要求精度はXYZ軸5cm未満なので、見事にクリアしたことがわかります。
メリットが多く高精度を誇るドローン測量ですが、高低差という課題も克服し、さらに導入が進むことが期待できます。ドローン機体の改良が進むにつれ、活用される場もますます増えていくことでしょう。
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