食料自給率の低下が深刻な問題だと捉えられるなか、農業従事人口の減少も大きな問題として注目されています。人手不足解消が国内の農業活性化の大きな課題となっており、一部の若い世代に就農ブームが発生していますが、依然として農業は慢性的な人手不足の状態だと言えるでしょう。
そこで農業が抱える人手不足の解決策として注目されるのが、ドローンの活用です。ドローンに農作業の一部を担わせることで、農業の効率化を行い、問題解決を図ろうというものですが、ドローンに様々な規制がかかる現状では実現が難しく、問題解決までにはさまざまな課題が残されています。
現在の農業が抱える課題をドローンで解決!
食生活の多様化が進む現在においても、依然として米の消費量は高い水準にあり、日本人の主食として消費されていることが判ります。このことから、国内における農地の半分以上が、稲作を目的とした水田であるのが実情です。日本の自然環境に合わせ、斜面や狭い土地を利用した棚田や、段々畑と呼ばれる耕作地が数多く存在します。
広大な農地が広がるアメリカなどでは大型農耕器具を用いた農業の効率化が推し進められていますが、国内の耕作地環境ではアメリカ式の効率化を行うことが難しいことも日本の農業が抱える課題の1つだと言えます。
そこで注目されるのがロボットやIoTの技術を活用した新たな農業の実現で、その中にドローンの利用も含まれています。大型農耕器具の導入が現実的ではない国内の耕作地における農業の効率化の課題を解決するものとして、ドローンの活用は大きな注目を集めています。
ドローンの農業利用の具体例
具体的にドローンの活用が期待できる農作業として「農薬散布」、「肥料散布」、「害獣対策」などが挙げられます。現在でも大型のラジコンヘリである産業用無人ヘリを導入した農薬散布は行われていますが、実際に産業用無人ヘリで農薬散布が行われるのは国内の水田面積のおよそ3分の1にあたる約50万ヘクタールだと言われています。
産業用無人ヘリは効果的であるものの、購入価格が1,000万円を超えることや、大型で持ち運びが困難であることなどの理由から、普及には課題が残されているのが現実です。産業無人ヘリよりも購入価格を抑えることができ、携行性に優れるドローンは、農業の抱える課題の解決策として期待されています。
農林水産省も2016年に「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」を定め、ドローンを活用した課題解決に積極的な姿勢を見せています。
現在、ドローンに搭載できる農薬は5〜10リットルで、50アール〜1.5ヘクタールの水田への農薬散布が行えると言われています。上空からの農薬散布ですから、労働負担の大きな山間部の耕作地でも作業が行えることから、ドローンは課題を抱える国内農業の救世主となり得る可能性を持っているのです。
ドローンを活用した新しい農業「精密農業」の可能性と課題とは?
耕作地の空撮を行い、作物の育成状況を把握し、農業の効率化に活用する育成調査にもドローンは効果的だと考えられています。育成調査を利用した農業は一般的に「精密農業」と呼ばれ、国外では人工衛星や航空機からのデータなどを用いて、1980年代から積極的に行われている農業運営法です。
この手法は、耕作面積が国外ほど広くない日本の農業には適さない農法であると考えられてきましたが、ドローンを活用することで、課題であった大幅なコスト削減が期待できることから、国内農業の活性化が目的に採用され始めています。
しかし、精密農業の実現には、近赤外線情報を取り込むことができる「マルチスペクトルカメラ」を搭載したドローンが必要となります。また、取得データを合成、分析して指数化を行える企業との連携が必要となり、少なくないコストの発生が課題になるのではないかとも考えられています。
農業におけるドローン活用、喫緊の課題は「規制の緩和」
現在、国内でのドローン飛行に対しては航空法の規制を中心にさまざまな規制が存在します。また、農林水産省が定めるガイドラインの中でも、農業にドローンを活用する際は安全対策として、操縦オペレーターとナビゲーターの2人が必要と定められており、ドローン活用による農業の効率化の課題となっています。
しかし、近年のドローン技術の進歩や諸外国の運用状況を受け、ガイドラインの見直しが行われるなど課題が解決され始め、ドローンによる農業の効率化は確実に前進しつつあります。
ただ、ドローン飛行には未だ多くの規制が存在するため、農林水産省が関係省庁に規制緩和を呼びかけていますが、目立った効果が見られないのも事実です。
国内農業に対するドローンの活用には、規制緩和の推進が大きな課題として残されており、この問題をいかに解決するかがポイントになると言えるでしょう。
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