農林水産省がドローン農薬散布の普及を進めている?その理由とは

更新日: 2021.11.24 公開日: 2019.12.04
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農林水産省がドローン農薬散布の普及を進めている理由とは?

今まで作物への農薬散布は、人力で行うか無人ヘリコプターを利用するのが一般的でした。でも、広大な面積に人力で農薬散布するには、大変な手間と時間がかかります。

また、無人ヘリコプターを業者に依頼すると、毎回の料金で費用がかさんでいきますし、自分の好きなタイミングで農薬散布ができません。かといって、自分で無人ヘリコプターを購入するとなると、価格が1.000万円以上するものが多く、購入するのは簡単ではありません。

上記の通り、農薬散布というのは農家に大きな負担となってきました。現在、日本の農家は人手不足や高齢化という深刻な問題に直面していますから、農薬散布の負担軽減は国と農家にとって重要な課題です。

そこで、注目されたのがドローンです。農薬散布用のドローンは、無人ヘリコプターに比べ10分の1くらい価格で導入でき、人力と比べて作業効率を大幅にアップすることが可能です。ドローンなら1分あたり8~10アールの面積にまんべんなく農薬散布できると言われています。

こうした状況を見て、農林水産省もドローン普及促進のために動き始めたのです。

 

農林水産省がドローン農薬散布の普及のために作った制度とは?

農林水産省は、2016年に「農薬を散布する小型無人飛行機(ドローン)操作の認定制度」をスタートさせました。これは、ドローンで農薬散布しようとする人が、必要な操作・知識を習得し、安全に作業するようにするための制度です。本来、ドローンの操縦自体に免許や資格は必要ないのですが、農薬散布の場合は危険物を空中から撒くという危険を伴う作業になるので、この認定制度が設けられました

この技能認定は、農林水産省の登録認定機関である「農林水産航空協会」で取得することができます。認定取得には、15~18万円くらいの費用と3日~5日にわたる座学及び実技の受講が必要です。

しかし、この制度は安全に農薬散布用のドローンを飛ばすのを促進するのに役立った面はありましたが、農薬散布用のドローンの普及を広げるのにはあまり役立っていませんでした。なぜなら、技能認定を受けないとドローンを飛ばして農薬散布することができないとされ、それが1つのハードルとなってしまっていたからです。

そもそもこの認定制度は、農林水産省が定めた「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」に基づいていました。しかし、この指針は農薬散布用の無人ヘリコプターについての指針をドローンに拡大適用したものであり、ドローンの長所を無視した過度な規制となっていることが問題視されていました。

※指針は法律ではなく罰則も定められていませんでしたので、それを無視してドローンによる農薬散布をしていた人もいたようです。

 

農林水産省がドローン農薬散布の普及推進のために規制を緩和!

問題が指摘されていた「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」を、農林水産省は2019年7月に廃止しています。

これにより、「農林水産航空協会」から技能認定を受けなくてもドローンで農薬散布をすることができるようになりました。

また、指針の廃止前は、国や都道府県に散布計画書を提出する必要がありましたが、それも不要になりました。さらに、指針の中では、ドローンに衝撃が加わった場合にその都度点検を受けるほか、指定業者での年1回の定期点検が義務として記されていました。しかし、指針の廃止により、このコストのかかる義務からも解放されたのです。

今後、農薬散布用のドローンを飛ばすための要件は、「航空法」に基づいて国土交通省の許可と承認を得ることだけになります。許可と承認を受けるための条件は10時間以上の飛行経験と5回以上の散布経験です。

手続きが全く不要になったわけではありませんが、以前と比べて農薬散布用のドローンを使用するハードルはかなり低くなり、今後普及が進んでいくことが期待されています。

 

今後の農業用ドローンの普及計画

農林水産省がドローンの活用を広めようとしているのは、農薬散布だけではありません。農薬散布以外にも、以下の6つの分野で普及を進めようとしています。

1.肥料散布

肥料をムラなく効率的に散布するのにドローンが役立ちます。

2.種まき

ドローンによる種まきが普及すれば、農家の負担がさらに減ります。

3.受粉

まだ実験段階のようですが、ドローンを使って花の近くに花粉を噴射することで受粉をさせるというアイデアです。

4.収穫物の運搬

これも農家の労力の大幅減につながります。しかし、実用化のためには重さや長時間の飛行に耐えられるドローンの開発が必要です。

5.センシング

これは、ドローンに搭載した高精細カメラで撮影した画像を使って、収穫時期の判断や害虫や病気の診断などに役立てようという試みです。

6.鳥獣被害対策

まだ研究段階ですが、高性能な赤外線カメラを搭載したドローンで、田畑周辺の鳥獣の生息状況などを把握するという技術です。

このように、農林水産省が農業のさまざまな分野でドローンの活用を進めようとしています。今後の普及が楽しみですね。

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