ドローンによる農薬散布のメリット
農業において農薬散布は重要でありながら、重労働です。農作物の成長過程に合わせて、広大な農地に農薬をまかなければいけません。時間と労力がかかります。
そこで活躍するのがドローンです。
農薬を入れたタンクを積んだドローンを使えば上空から簡単に農薬散布ができます。機体の性能にもよりますが、10haの土地を約10分で散布できるので作業時間が大幅に短縮されます。
労力がかからず、操縦者1名で行なうことも可能です。また農業用ヘリでの農薬散布と比べ、扱いやすく低価格なこともメリットといえるでしょう。
農薬散布という作業の効率を上げて、時間、コストを削減する点で農薬散布用ドローンは大きく貢献しています。
自動航行で農薬散布ができるドローンがある
農業でのドローン活用が広まるにつれて、多くの農薬散布用のドローンが開発されてきました。安全かつスピーディに農薬散布をするための様々な機能が付けられいますが、その中で注目されているのが自動航行による農薬散布です。
自動航行システムを搭載している機体であれば、農薬散布範囲から設定された飛行ルートに従って、自動で航行します。操縦技術に関係なく農地全体にもれなく散布できるため、作業の質を上げることが可能です。
実際に自動航行を備えた農薬散布用のドローン開発は行なわれています。2018年に発表された「AGRAS MG-1P RTK」は農薬散布用ドローンDJI AGRASシリーズの改良モデルで、これまでのAGRAS MG-15をベースに自動航行による散布機能を搭載した機体です。
10Lまでの農薬を積めるタンクを搭載し、10分の連続散布が可能です。衝突回避レーダーや防塵、防滴仕様、3方向の高度検知レーダーで安全性にも考慮しています。
AGRAS MG-1P RTKの自動航行は、高精度の位置測定システムのRTK方式を利用したものです。現場に電子基準点を設置し、RTKシステムで機体の位置情報を常に把握しながら設定された飛行ルートを航行します。
自動航行での農薬散布ができるAGRAS MG-1P RTKはこれからの農薬散布でのドローン活用をいっそう便利なものにすることが期待されています。
自動航行ドローンで農薬散布を行なう際に必要な手続きは?
特別な免許や資格がなくても自動航行ドローンでの農薬散布を行なうことは可能です。農薬散布用として販売されている機体であれば、使用できる機体に制限はないので自動航行機能を持っていても問題ありません。
ただしどんな機体であってもドローンで農薬散布をするのに必要な許可申請があります。ドローンでの農薬散布は航空法で規制されている「危険物輸送」と「物の投下」に該当するため飛行前に承認を受けなければいけません。
承認申請はオンラインからでも簡単にできますが、申請条件として一定時間の飛行実績や技能を持っていることが求められてます。まったくの初心者ではドローンの農薬散布はできないことを覚えておきましょう。飛行実績や技能はドローンスクールで身に着けることができ、農業でのドローン活用のための講習を設けているスクールも多くあります。
また2019年7月30日にドローンでの農薬散布の規定であった「技術指導指針」が廃止され、それまで行われていた農林水産航空協会による機体、操縦者の認定を受けなくてもよくなりました。代わるものとして空中散布ガイドラインが出され、手続きの簡易化、明確化が図られています。
自動航空によるドローン農薬散布は農業の課題を解決する足掛かりに!
2019年6月にはDJI がAGRAS MG-1P RTKを使用した自動航行での農薬散布デモンストレーションを行いました。
自動航行のための流れとして、まず測定用のドローンとしてPHANTOM4 RTKを飛行させ、散布範囲の形状を把握します。そのデータをもとに散布ルートが作られます。
散布幅、速度、高度などを設定すれば、あとはAGRAS MG-1P RTKの自動航行で散布が可能です。
デモンストレーションでは2機での同時飛行での散布を行ない、風が強い中でも安定した飛行で2機が整然と農薬散布をしていたことが評価されています。2機同時散布では0.8haの水田を5分未満で撒き終え、効率の良さを示しました。
近年、農業は高齢化、人手不足といった課題を抱えています。辛くて大変な作業というイメージから農業離れが進み、深刻な問題です。
ドローンによる農薬散布は高齢化、人手不足の状態でも作業を効率よく行う助けになります。ドローンを活用することで作業の負担が軽くなり、農業の「重労働」というイメージを打ち消すこともできます。
自動航行での農薬散布がもっと身近なものになれば、ドローンの操縦にハードルの高さを感じていた人でも導入しやすくなります。農薬散布用ドローンの発展は、今度の農業の未来を明るくすることにつながるでしょう。
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