5.7Ghzの無線電波を取り扱うのに必要な「陸上特殊無線技士」資格は、ドローンビジネスに携わるのであれば取得しておきたい資格といえます。とはいえ、国家資格というイメージが先行し「取得が難しい資格なのではないか?」と懸念を抱いている方も少なくありません。
そこで、本記事では第三級陸上特殊無線技士(三陸特)の試験内容や合格率をふまえ、果たしてどの程度取得しやすいのか、第三級陸上特殊無線技士の難易度を解説していきます。
第三級陸上特殊無線技士の難易度は?合格率は7~8割
第三級陸上特殊無線技士(三陸特)の難易度の目安として、合格率は7~8割です。ほとんどの人がイチから勉強して試験に臨んでいることを鑑みると、取得しやすい資格といえます。
公式の第三級陸上特殊無線技士の難易度も、3級・2級ともに「中学程度」とされており、中学生でも勉強すれば合格できる程度に設定されています。特に、合格の定員が設定されているわけでもありませんので、勉強すれば誰でも合格することができます。
第三級陸上特殊無線技士は難易度としては決して難しくはない資格ですが、取得にかかる勉強時間はだいたいどの程度なのか、3級と2級の難易度はどう違うのかを解説していきましょう。
1ヶ月あれば資格取得可能!第三級陸上特殊無線技士の難易度は高くない
では、だいたいどの程度勉強すれば合格するのかという点ですが、これに関しては「独学なら数週間、講習会で学べば1日」で取れます。独学の場合、1日1時間程度、過去問を3回繰り返し解けば、試験に合格するだけの知識は定着するでしょう。
また、講習会に参加すればもっと早く取得することができます。日本無線協会や各企業が主催する「陸上特殊無線技士講習会」では、だいたい朝から夕方まで、1日で講義から修了試験までを行います。その日のうちに勉強から試験取得までを済ませることが可能なのです。
3級と2級の難易度はあまり変わらず、合格率もほぼ同じ
さらに補足として、陸上特殊無線技士の3級・2級の難易度はあまり変わりません。詳細は後述しますが、陸上特殊無線技士の試験内容は「無線工学」と「法規」で分けられており、無線工学は計算問題が出題されます。
2級では、この計算問題が多少複雑になる程度で、覚える公式が数個変わってくるといったものなので、実は2級も合格率は7割をキープしているのです。それでは、この試験内容について、少々深掘りしていきましょう。
陸上特殊無線技士は1級から3級まであり、それぞれの級には以下のような違いがあります。
・第一級陸上無線技術士
空中線電力500W以下の多重無線設備、30MHz以上の周波数の電波を発しているものを扱う資格です。テレビやラジオの放送局が当てはまります。
・第二級陸上特殊無線技士
空中線電力10W以下の無線設備、1605.5KHzから4000KHzの電波を発しているものを扱う資格です。気象レーダー、スピード違反取締のレーダーなどが当てはまります。
第三級陸上特殊無線技士
1級、2級よりも周波数の範囲が限られている無線設備を扱う資格です。タクシーや消防などの無線基地局での操作が当てはまります。
業務活用や空撮動画配信をするなら第三陸上特殊無線技士は必須
ドローンを飛ばす際には、無線免許が必要になるケースがあります。具体的には、5.8GHz帯の電波を用いて、レースドローンでのFPV映像や、大型ドローンでのカメラ映像をモニターなどに送信する場合です。
2.4GHz帯の機器であれば、無線免許は必要ありませんが、5.8GHzよりも遅延があるため、多くのFPV撮影機器が5.8GHz帯を使用する仕様になっています。
このようなケースでは、アマチュア無線技士を取得することが多いですが、これは個人で利用するための資格とされています。
もしも、YouTubeなどでFPV飛行をした映像をアップロード・収益化することを目的としているのであれば、「第三陸上無線技士」を取得しておく方が良いでしょう。
なぜなら、個人用であるアマチュア無線の映像では、収益を得てはいけないことになっているからです。
YouTubeを始めとしたネットの動画公開には広告が貼り付けられることがあり、収益が発生するため、陸上無線技士を持っておく方が良いのです。これ以外にも、商用目的で使うのであれば、陸上無線技士は持っていなければならないので、十分に注意しましょう。
第三陸上特殊無線技士の受験方法
陸上無線技士の取得方法の1つは国家試験の受験です。公益財団法人日本無線協会が開催しており、法規12問と無線工学12問からなる4択のマークシート方式で行われます。試験は年3回あり、令和元年度では、6月、10月、2月の開催です。
受験したい場合は、まず試験申請書の提出を行います。申請書の提出方法は、希望する試験地を管轄する日本無線協会の事務所へ郵送、窓口への持ち込み、もしくはインターネットからの3種類となっています。
試験会場は東京、札幌、仙台。長野、金沢、名古屋、大阪、広島、松山、熊本、那覇の日本各地に用意されています。受験手数料は5,163円ですが、申請用紙代120円が別途かかります。
試験の詳細については、日本無線協会のホームページで確認できるので、国家試験の受験で陸上無線技士を習得しようとしている方は、必ず確認しておきましょう。
陸上特殊無線技士の養成課程で資格を取得する方法もある
独学で国家試験を受けて取得する方法は、時間やお金がかからないというメリットがありますが、その分、前もって勉強しておかなければいけません。きちんと自主勉強を行う場合は、養成課程を受けて取得する方法が良いでしょう。
養成課程での取得方法では、1日かけて陸上特殊無線技士に関する講習を受け、最後に修了試験を受けて取得します。修了試験は国家試験と同じく、法規と無線工学からなっています。必要な知識をみっちりと詰め込んで、同日に試験をするので、まじめに受講していれば合格できるでしょう。養成課程の費用相場は2万円前後です。
なお、日本無線協会本部が行っている養成課程は、月に2回を目安に開講されており、税込22,270円の受講料がかかります。
※2019年10月以降は消費税10%となるため22,650円になります。
申し込み方法は以下のような流れです。
1.受講する講習日程の2か月前から10日前までに、郵送もしくは窓口へ申込書と必要書類を提出
2.講習10日前までに受験料を振り込み
3.講習開始時刻の8時30分までに会場に行き、法規4時間、無線工学2時間の講習と修了試験を受ける
養成課程は日本無線協会だけでなく、委託法人、団体も開講しています。養成課程を行っている団体のうち、2つを紹介します。
・トライアロー
開催場所:東京都港区芝5丁目29番19号 旭ビルディング5F トライアロー株式会社セミナールーム
受講料:税込19,440円 免許申請用収入印紙1,750円
1日かけて無線のプロフェッショナルが必要な知識を教えてくれます。さらに、受講者は別日程で行われるドローン講座に、無料で招待されます。ドローンでの活用を目的として、陸上特殊無線技士の取得を考えている方にとっては嬉しい特典です。
講習は9時から始まり、最初に4時間の法規講習を受けます。その後、2時間の無線工学を学び、最後に各科目45分ずつの試験が行われます。合否は同日に発表され、不合格になってしまった場合、翌日に補習と追試を受けることが可能です。
・株式会社QCQ Planning
開催場所:日本各地にて受講できます。
受講料(免許申請手数料1,750円を含む):
2019年10月1日以降
一般 税込20,200円
20歳未満 税込14,750円
株式会社QCQ Planningは、総合通信局認定で無線に関する講習会を行っている会社です。東北、関東、信越、北陸、東海、近畿。中国、九州の各エリアに様々な試験地があり、養成課程を受けられます。居住地に関わりなく、希望の講習地を選べるので、仕事などの予定に合わせて講習地を決めることも可能です。
第三級陸上特殊無線技士の試験内容は?
先ほど、三陸特の試験内容は「無線工学」と「法規」に分けられていることを解説しました。これらが具体的にどのような知識であり、問題としてどのように出題されるのかを解説していきましょう。
無線工学
無線工学は、電子工学の一分野として、知識と公式に基づいた計算を行うジャンルです。最初に基礎知識の問題が出題され、そのあと計算問題という流れになっていますが、三陸特の出題範囲では、計算問題よりも基礎分野(暗記問題)の割合が多いので、文系の方でも困ることはないでしょう。
法規
続いて「法規」ですが、独学の場合、参考書に類する書籍があまり出版されていませんので、下記の解説付き過去問を繰り返し解くとよいでしょう。特に、法規に関しては過去問とほぼ同じ問題が出題される傾向にあるので、過去問を利用するのは一番の近道です。
https://www.amazon.co.jp/dp/441671744X/
いずれは1級も見据えており、基礎から勉強したいという方であれば、試験対策のテキストだけではなく、下記のような教科書で学ぶのもおすすめです。
https://www.amazon.co.jp/dp/4807608177/
https://www.amazon.co.jp/dp/4807608126/
上記は、「日本無線協会」主催の講習会と同じテキストですので、内容も試験対策としても問題ない仕上がりになっています。
試験対策だけでなく、もっと無線工学を本格的に勉強したいという場合でも、いきなり専門書を読み始めるのではなく、まずは試験対策をして合格してからのほうがよいでしょう。
まとめ
第三級陸上特殊無線技士(三陸特)の取得難易度は7~8割です。ほとんどが、無線系知識がなく、ゼロから勉強した受験者であることを鑑みると、非常に取得しやすい資格といえます。ドローンに活かすことを目的として受験するとしても、1ヶ月で取れるというのは嬉しい要素ではないでしょうか。
さらに、陸上特殊無線技士の2級・3級とそこまで難易度に違いはなく、無線系資格というのはこの情報時代において何かと役に立ちます。ぜひ、興味があれば2級、1級にも挑戦してみるとよいでしょう。
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