物流業界におけるドローンの活用と課題について

更新日: 2021.11.19 公開日: 2017.12.06
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ドローンはすでに各分野において試験的な、あるいは本格的な導入・運用が始まっていますが、今回はその中のドローンにおける「物流」にフォーカスして、現状と課題を探ってみたいと思います。

目次

日本における物流業界の課題

個人宅への配送や企業間での荷物の受け渡しなど、物流は私たちの生活や企業活動になくてはならない産業の一つです。

近年ではネットショップなどの普及によって小口の物流量が増えたこともあり、現在日本の物流業界の市場はおよそ24兆円規模と言われています。

まさに国を成り立たせるためには欠かせない産業と言えるのですが、物流量の増加に反比例するかのように慢性的なドライバー不足となり、また現役ドライバーの高齢化なども重なり、「労働力の確保」が大きな課題となっています。

 

ドローンを活用した物流の実証実験やサービス

イギリスではAmazonがドローンを使った宅配の実証実験を行ったり、アメリカではセブンイレブンがドローンによる宅配サービスの実証実験を行ったりと、世界各国で物流におけるドローンの様々な活用方法が検証されています。

これら各実験は揃って結果を出しており、1日も早い物流業界へのドローン導入が期待されているのですが、まだまだ技術的な問題、法的な問題など課題は多く、本格的な導入には至っていないのが現状です。

また、日本国内においても楽天株式会社が、自身が保有するゴルフ場の敷地内において、スマホから注文したドリンクなどを指定の場所までドローンが届ける、といったサービスをすでに提供しています。

「敷地内」であることからも法的な制約を受けにくいといため実現可能となった訳ですが、やはり広く運用していくためには技術的、法的な課題が山積です。

 

千葉県千葉市で行われたドローンの物流における実証実験

国家戦略特区の一つである千葉県千葉市では、ドローン宅配に関する次のような実証実験が行われました。

・ショッピングモールの屋上から150メートル先の公園にワインボトルを届ける

・公園から120メートル離れた高層マンションに市販薬を届ける

・配送地点から海上飛行を経て700メートル先へ荷物を配送する

第三者の上空を飛行する際の安全性の確保、受け取りの認証方法、ドローンポートや各戸への配達方法など様々な課題が残されておりますが、大きな一歩を踏み出したと言えそうです。

次の段階では10kmの長距離飛行を目標としていますが、そうなると「目視外飛行」「第三者上空飛行」などの問題をどうクリアしていくのかが課題になってきます。

ドローンによる物流の実証実験で得た結果から課題を割り出し、一つずつクリアしていかなければなりませんので、本格的な導入にはしばらく時間がかかるでしょう。

 

ドローンで物流業界に参入するための課題

現在様々な実証実験こそ行われていますが、ドローンで物流業界に参入するためには、乗り越えなければならない課題がいくつもあります。

たとえば通常のドローンの操縦機は、物流を目的に造られていませんので出力が弱く、電波が届く範囲も広いもので数百メートル程度と物流を行うには不十分です。

かといって出力の大きい操縦機を使うとなると、今度は電波法により無線免許、基地局の開設などが必要になります。

ほかにも、

・強風下でも安定した飛行が可能か

・電波干渉を回避できるか

・荷物が落下した場合の安全性の確保はどうするか

・荷物を破損してしまった場合の顧客への補償をどうするか

といった飛行に関する課題から、人件費の問題もあります。

ドローン1体につき操縦者が1人となると効率が悪すぎてビジネスとしては現実的ではありませんし、操縦者が増えればその分人件費がかさむことになりますので、顧客に安い料金でサービスを提供できず、普及に至らない可能性もあるのです。

人件費の問題を解消するにはドローンの自律飛行を可能にし、かつ荷物の受け渡し時に人を介さなくて済むようなシステムを開発することが望ましいとされていますが、そのためにはドローン自体の開発以外に、荷物の積載や引き渡しに関するシステムならびに機器を開発する必要が出てきます。

ドローンが物流業界に本格的に参入するには技術的、法的な問題に加えて、こうした課題をクリアしなければならず、自社のみならず他の様々な分野の企業や団体と連携を取りながら開発を進めていくことが求められます。

 

配送が可能なドローンに求められる物流に有効な仕様とは

最後に、ドローン配送時に求められる物流に有効なドローンの仕様について確認しておきましょう。

長時間運航

現在市販されているドローンの飛行時間は長くても30分程度で、それよりも長く飛ばすためにはバッテリーを交換する必要があります。物流には適さないため、長時間運航可能な大型バッテリーと、それを動かすエンジンが求められます。

耐候性

一般的なドローンの多くは風速5メートルが飛ばすか飛ばさないかの基準とされています。しかし風速5メートルを超える日は頻繁にあり、突風なども日常的に起きています。雨の日や雪の日など天候も様々です。これらに耐えることができるドローンである必要があります。

積載重量

積載可能重量が少なければ少ないほど、配送拠点と配送先の往復回数が増えますので、ビジネスとしては非常に効率が悪くなります。長時間運航と併せて積載重量の向上も求められます。

監視システム

完全自動化にするのか人為なのかによっても変わりますが、運航状況、天候、荷物の受け渡し、事故や故障時の対応などは常に監視し、有事の際には遠方からでも対応できるシステムを構築する必要があります。

 

1日も早い導入を

ドローンが物流業界に参入するにはクリアしなければならない課題が山ほどあります。

しかし、冒頭でもお伝えしたように、日本における物流業界の課題として、

・ドライバー不足

・現役ドライバーの高齢化

があります。また少子化による人口減少に伴い、労働人口もこの先減少していくことは確実とされていますので、現役ドライバーが引退してしまったら人手不足はより深刻な問題となってくるでしょう。

国をはじめ複数の民間企業や地方公共団体などが連携し、1日も早く物流業界へのドローン導入を可能にすることが望まれます。

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