ドローン測量が土木工事にも活用されるようになった理由
ドローン測量が建設業界や土木業界に取り入れられることになったいきさつには、国土交通省が2015年に発表した施策「i-Construction」が大きく関係しています。
「i-Construction」が目指すものの中に、生産性の向上、安全性の向上、より創造的な業務への転換などが挙げられていて、目標達成のためにドローンの活躍が期待されています。
建設・土木業界はもともと職人気質が強くアナログの世界ですが、このままだと生産性や賃金が上がることもなく、人手不足という課題に直面します。
3K(きつい、汚い、危険)という現場につきまとう悪いイメージも人手不足を助長しています。
建設・土木業界にIT化が進めば、今後は新3K(給与、休暇、希望)という新たな目標の達成に近づくことができ、その目玉となるのがドローンの活用だと考えられています。
ドローン測量の方法とメリット
ドローン測量はどうやって行うのか
そもそもドローン測量はどのように行われるのでしょうか?ドローン測量の流れを簡潔にまとめてみましょう。
- 事前計画
計測する範囲に合わせて、ドローンの発着位置や飛行ルート、標定点などの計画を立てます。ドローンの自動飛行には専用ソフトを使いますが、計画に合わせた設定を行います。
- 標定点の設置
現場に行って標定点に対空標識(GCP)を設置します。基準点の測量はトータルステーションやGNSS測量器を使用します。
- ドローン飛行・撮影
ドローン飛行士によるドローンの飛行と撮影を行います。事前計画通りに自動飛行させることになりますが、必要に応じてドローン飛行士が高度や速度の調整を行います。
- データ処理
撮影された連続写真は専用ソフトを使って処理します。点群データをもとにオルソ画像や3Dモデルなどを作成します。
ドローン測量を土木業界に導入させることのメリット
2018年に行われた愛知県の某道路建設現場で、ドローンを使った測量による土量計算が行われ、その結果をドローンスクールの「FDDI」がまとめています。
FDDIが作成した資料によると、ドローンを使った作業時間は従来のトータルステーションを使った作業に比べて6分の1だったのことです。
この点ではテラドローン株式会社も、ドローン測量により従来の方法での測量の10分の1の時間短縮を実現したと報告しています。
作業時間が短縮されると人件費も低減されることになるので、コスト削減にもつながります。
ドローン測量の精度に関しても、テラドローン株式会社は「土木測量において最低±5cmという精密な計測値を実現」しています。
このように、作業時間の短縮、コスト削減、従来の方法に劣らぬ精度によって土木作業の生産性を向上させることができるのです。
さらにドローン操縦は男女問わず行うことができるので、土木業界が課題とする人手不足を解決することが可能です。
また、足場の悪い現場を歩くことによって発生する作業員の怪我のリスクをなくし、「危険」を含む3Kの悪いイメージをなくす効果も期待できるでしょう。
土木業界におけるドローン測量の今後について
土木業界にドローン測量を導入するには、ドローン機体の購入、ドローン操縦士の養成、データ処理専用ソフトなどの費用が発生します。
初期費用がかかるというコスト面の課題がありますが、「i-Construction」推進の流れや数々のメリットを考慮すると、今後土木業界におけるドローン測量導入が加速していくと考えることができます。
実際に2017年に日本測量協会が実施したアンケート調査によると、土木業界の57.4%がすでにドローン測量を導入していることが分かりました。
「導入を検討している」、または「導入予定である」という回答も含めると、92.3%にも達しました。
土木業界でのドローンの利用は急速に増加していて、今後はドローン測量が一般的になると考えることができます。
ドローン機体そのものの技術進歩もドローン測量導入の流れを後押ししています。
注目されているのがRTK(リアルタイムキネマティック)で、GPSよりもさらに高い精度の位置情報データが取れるようになりました。
さらに、標定点(GCP)の数を減らしても高い精度を保つことができるので、設置時間の短縮によって作業時間をさらに短縮させることができます。
土木業界におけるドローン測量の導入は新たなビジネスチャンスを生むことでしょうし、それにともなうドローン技術の目覚ましい進歩からも目が離せません。
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