ドローン農薬散布のビジネス市場の現況
高温多湿な日本は、病害虫が発生しやすい環境にあります。そのため、農家は年間を通して病害虫の防除対策をしなければなりませんが、人力で農薬散布をするのはかなり大変な作業です。このため、無人航空機で農薬散布をするという需要は常に存在してきました。
平成22年度~ 28年度までの空中防除の実績データを見ると、その大半が稲作を対象にしています。その散布面積は毎年約90万ヘクタール前後で推移していて、ほとんど変化はありません。各農作物の合計で見た場合も、毎年105万ヘクタール前後で安定しています。このことからも、無人航空機による農薬散布の需要は続いていくと考えられます。
今までは、無人航空機の農薬散布と言えば、無人ヘリコプターでした。しかし、無人ヘリコプターの価格は1,000万円以上する上、機体が重いので取り扱いに3、4人が必要です。このため、無人ヘリコプターによる農薬散布は業者に外注するというのが多くの農家にとって現実的な方法となっています。
しかし、農薬散布用のドローンは100~300万円くらいの価格で手に入ります。また、重量が軽いので、操縦士と合図マンのみで足ります。操縦は無人ヘリコプターよりはるかに簡単ですし、音が静かなので朝に飛行させることもできます。
このような理由で、無人ヘリコプターに代わる手段として、農薬散布用ドローンの需要は年々高まっています。事実、農薬散布用ドローンの登録機体数とオペレーター認定数は増加を続けています。
ドローン農薬散布ビジネスの今後の展望
2019年7月に「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」(以下「指針」)というドローン農薬散布に規制を加えていたものが廃止になりました。これは、簡単に言えば規制緩和であり、以前よりドローン農薬散布がしやすくなりました。
例えば、以前は農薬散布用ドローンを飛ばすには、「農林水産航空協会」からオペレーター認定を受ける必要があるうえ、農薬散布用のドローンを購入した際には同協会に機体登録しなければなりませんでした。しかし、規制緩和によりそれが不要になりました。
今後は、「航空法」に基づいて国土交通省から許可と承認を得るだけで農薬散布用のドローンを飛ばすことができます。このため、ドローンを購入する農家は今後さらに増加することが予想され、農薬散布用ドローン販売は今後伸びていくビジネスとして期待されています。
また、「指針」の下では、インテリジェント機能を搭載したドローンは安全性の観点から利用できない状況にありました。しかし「指針」が廃止されたことで、インテリジェント機能が解禁となり、今後ドローンの開発競争が過熱していくことが予想されています。
ちなみに、外注という形で農家から依頼を受けてドローンを飛ばすビジネスもありますが、自分でドローンを購入して飛ばす農家が増えたり、自動運転機能があるドローンが広まったりすれば、そのビジネスは逆に縮小していくかもしれません。
ドローン農薬散布ビジネスの今後の課題
ドローンの農薬積載量や飛行できる時間には限界がありますので、大規模な田畑での農薬散布には不向きとみなされている状況もあります。
このため、今後研究や改良を進めて、積載できる農薬の量や持続して飛行できる時間が増やすことが、ドローン農薬散布ビジネスの課題として言われています。ただし、年々ドローンの技術は高まっていますので、この課題は乗り換えていくことでしょう。
農薬散布以外のドローンビジネスをご紹介!
最後に、農薬散布以外の可能性のあるドローンビジネスをご紹介します。
・建築ビジネス
測量や出来形管理、検査業務などでドローンがすでに活用され始めています。建築用のドローン販売のビジネスは今後伸びていくことでしょう。
・配送ビジネス
日本でドローンによる配送が実用化されるのはまだ先かもしれませんが、すでに「日本郵便」や「楽天」がドローンを使った配送実験を行っています。
・防犯ビジネス
警備会社の「セコム」が、2015年から民間防犯用の「セコムドローン」を業務に使用しています。セコムドローンは、侵入者に近づき侵入者の外見や車のナンバーなどを撮影してコントロールセンターに送信することができます。
・スクールビジネス
ドローンの活用が広まると、操縦者の需要が増えます。このため、ドローン操縦者を育成するためのスクールビジネスも伸びていくことが予想されます。
このように、ドローンビジネスにはさまざまな分野で可能性があります。今後の動向に注目していきましょう。
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