ドローン農薬散布をおこなうには、ドローンの操縦ができるだけではなく、電波法や航空法、農薬取締法といった法律の知識が必要です。農薬取締法に関しては、従来の方法で農薬散布を行ってきた方であっても、ドローン農薬散布とでは法律規制が異なるため改めて確認が必要です。ここでは、ドローン農薬散布を行うにあたって知っておかなければならない法律を徹底解説します。
ドローン農薬散布を始める前に知っておくべきこと
ドローン農薬散布で使用されるドローンは、一般的に趣味などで使用されるドローンとは異なり、産業用ドローンを使用することになります。
産業用ドローンを使用する場合、一般的なドローンを飛行させる際の法律以外にも知っておかなければならない法律があるのをご存じでしょうか。
一口にドローンと言っても、ドローンの種類によっては免許が必要なものが存在します。
一般的なドローンは、2.4GHz帯のドローンとなり、飛行させる際の免許は必要ありません。しかしながら、農薬散布で用いられる産業用ドローンは5.7GHz帯のドローンであり、無線局の免許が必要となります。2.4GHz帯のドローンでは、飛行させるのに免許は必要ありませんが、農薬散布で用いられる5.7GHz帯のドローンでは無線局の免許が必要です。
この無線局の免許は、「電波法」という法律で定めれられているものです。
「電波法」では、2.4GHz帯のドローンは、機体に「技適マーク」がついていれば免許が飛行させることができます。一方、5.7GHz帯の農薬散布で用いられるドローンでは、無線局の開局と併せて「第三級陸上特殊無線技士」の資格が必要です。
無線局の開局は総務省に申請することで得られます。、「第三級陸上特殊無線技士」は、公益財団法人日本無線協会が実施する国家試験に合格するか、養成課程講習を修了することで取得できます。
なお、申請や資格の取得には一定の期間を必要とするため、余裕をもって準備をしましょう。
ドローン農薬散布の際に、もし無線局の免許を持たずにドローンを飛行させると法律違反になり、1年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科せられます。
ドローン農薬散布に関する法律規制とは
前項では、一般的なドローンと産業用ドローンの違いによって定められている法律について触れましたが、どちらのドローンであっても必ず知っておかなければならない「航空法」、そして、農薬散布に関する法律「農薬取締法」についても把握しておかなければなりません。
ドローン農薬散布で知っておくべき法律「航空法」
航空法では、「許可が必要な飛行空域」と「承認が必要な飛行方法」などが定められています。
許可を必要とする空域
・航空機の航行に影響を及ぼすおそれのある地域
・人又は家屋の密集している地域の上空
承認が必要となる飛行方法
・夜間飛行
・目視外飛行
・人や建物との間が30m未満の飛行
・イベント上空飛行
・危険物輸送
・物件投下
ドローンで農薬散布をする場合は、農薬が危険物にあたるので「危険物輸送」、空中から散布するため「物件投下」があてはまります。そのため、必ず国土交通大臣の承認が必要です。
上記の内容にあてはまる飛行をさせる場合は、承認申請を忘れないように気を付ける必要があります。仮に航空法に違反した場合は、50万円以下の罰金が科されます。
さらに、2019年9月には「飲酒時の飛行禁止」も追加され、1年以下の懲役、または30万円以下の罰金が科されるようになっています。
ドローン農薬散布で知っておくべき法律「農薬取締法」
農薬取締法に関して、従来の農薬散布に関する法律であれば、理解していることと思います。しかし、ドローンで農薬散布を行う場合は、従来と異なる法律規制もあるので、改めて確認する必要があります。
ドローンで農薬散布をする際、ドローンでは使用が禁止されている農薬や、間違った希釈倍率の農薬を散布した場合には農薬取締法違反となります。
そのため、ドローン農薬散布を行う場合は、農薬に貼付されている製品ラベルの散布方法に「無人ヘリコプター散布」または「散布」と記載されているものを使用します。ただし、ドローンで使用できる農薬であっても、希釈倍率が異なる場合があるので注意が必要です。
農薬取締法違反をした場合、3年以下の懲役、100万円以下の罰金が科されます。
ドローン農薬散布における法律や規制に対する許可・承認方法
前述したように、航空法では国土交通省大臣の許可や承認が必要です。
許可や承認は、飛行を予定する場所を管轄する空港事務所や地方航空局で申請しましょう。
申請期限は、飛行を開始する予定日の閉庁日を除く10日前までとなっています。
申請の際に必要となるものは、「申請書」「ドローン・操縦者・体制について安全確保のための基準に適していることが分かる書類や資料」です。
「安全確保のための基準に適していることが分かる書類や資料」とは、下記のものがあります。
・農薬散布に使うドローンの機能・性能を記載した書類
・ドローンの操縦者に関する飛行経歴などの確認書類
・飛行経路の地図やドローンの仕様などが記載されている資料
詳細については、国土交通省の「無人航空機の飛行に関する許可申請申請書の記載方法について」に記載されていますので、事前に確認しておきましょう。
申請に必要な書類の「操縦者に関する飛行経歴」は、ドローン農薬散布では、航空法の承認を得るために10時間以上の飛行経歴が必要など、ある程度の操縦技術や知識が求められます。
ドローンの基本的な知識や操縦技術に関しては、ドローンスクールに通うことで、短時間での習得が可能です。
国土交通省が認定しているドローンスクールであれば、受講後の試験を合格することで、技能認定証を取得できます。技能認定証を持っていると、ドローン農薬散布の際の許可や承認の手続きが一部省略できるので、通常より簡単に申請を行えるでしょう。
手作業での農薬散布は重労働なため、これまで農家がおこなう仕事のなかでも負担が大きい作業となっていました。ドローンで農薬散布をおこなうことで、負担が軽減されるので多くの農家がドローン農薬散布を取り入れています。
その一方で、ドローンに関する事故が多くなっていることも事実です。
農薬散布にドローンを使用する上で得られるメリットはたくさんありますが、正しい法律の知識を得たうえで、ドローンを飛行させるようにしてください。
この記事と一緒によく読まれている記事
-
ドローンショーの仕組みを解説!演出や操縦はどうやっている?
-
ドローンを使ったスマート農業を解説!農業用ドローンの主な用途とは?
-
ドローンの免許(国家資格)の取得には年齢制限がある?何歳から取得できる
-
水中ドローンの操縦に免許は必要?水中ドローンに関する資格を解説
-
ドローンの操縦に無線技士の資格は必要?必要なケースや資格の取得方法を解説!
-
ドローン測量管理士とは?新しく登場したドローン測量の資格を取得する方法を解説!
-
海でドローンを飛ばす際の規制や必要な許可申請は?海で飛ばす時のルールを解説
-
ドローン国家資格の取り方を解説!取るまでの手順や取得期間はどれぐらい?
-
ドローン国家資格の難易度は高い?試験の合格率や勉強時間はどれぐらい?
-
ドローンを使った橋梁点検とは?メリット・デメリットや橋梁点検で使用される新技術を解説!
-
ドローンの目視外飛行は飛行許可が必要?目視外飛行を行う条件や練習方法を解説!
-
100g未満のドローンを飛ばせる場所を解説!チェックすべき法律や飛行ルールは?