農業の現場でドローンによる農薬散布が広まっていますが、どんな農薬でも散布していいというわけではありません。例えば、キャベツの防虫にはどんな農薬を使用できるのでしょうか?
ドローン散布でキャベツに使用できる農薬は?
ドローン散布でキャベツの防虫に使用できる農薬は「ノーモルト乳剤」のみとなっています。この農薬は、キャベツにとっての害虫である「コナガ」を防除してくれます。
ノーモルト乳剤は、脱皮阻害作用により高い殺虫効果を示しますので、幼虫期に成るべく早めに散布することが大切です。従来の殺虫剤に感受性の低下した害虫にも優れた効果を発揮します。また、耐雨性・残効性に優れており、天敵や授粉昆虫に対して影響が少ないというメリットもあります。植物上での浸透移行性がないため、キャベツの葉裏にも十分にかかるように散布しなければなりません。
ノーモルト乳剤は、キャベツにとっての別の害虫である「アブラムシ」の防除はできませんので、別の対策を施さなくてはなりません。
ドローンによる空中散布では、地上での散布よりも高濃度の農薬を使用しなければ十分な効果を得られないため、生で直接口に入れる可能性があるキャベツなどの野菜に使える農薬はまだ限られているのが現状となっています。
ドローン散布で使用できる農薬の確認方法
前の見出しで、ドローン散布でキャベツの防虫に使える農薬について見ました。では、キャベツ以外の作物に使える農薬を確認するにはどうしたらいいのでしょうか?2つの確認方法があります。
1.農薬の製品ラベルを見る
農薬には製品ラベルが付いていますが、その中の「使用方法」の部分に「湛水」、「無人ヘリコプター散布」、「散布」など、それぞれの農薬に適した方法が記載されています。そこに、「無人ヘリコプター散布」、「散布」と記載されていれば、ドローンでも使用できます。
ただし、「無人ヘリコプター散布」と書かれた農薬と、「散布」と記載された農薬では希釈倍率が異なりますので、注意しましょう。「無人ヘリコプター散布」では希釈倍率が8~16倍くらいとなっていますが、「散布」では希釈倍率が1,000~2,000倍くらいになっています。「散布」とのみ記載されている農薬を8倍や16倍などの高濃度で散布するのは、農薬取締法違反となります。
2.WEBサイトで確認する
「農林水産航空協会」が提供している「産業用無人航空機用農薬」というサイトからも、ドローン散布で使用できる農薬を確認することができます。作物名や病害虫名、薬剤の種類などを入力して検索をかけると、使用できる農薬の一覧が表示され、使いたい農薬をクリックすると、製品ラベルに記載されている内容を閲覧できるようになっています。
サイトには、新しく登録された農薬についての最新情報や、産業用無人航空機に関連する情報も掲載されています。
ドローンで農薬散布をする際の注意点
地上での散布であろうと空中からの散布であろうと、対象となる作物以外に農薬を散布することは禁止されています。キャベツならキャベツだけに農薬をかけなければならないのです。
この点、ドローンで農薬を散布する場合、地上で行う散布よりも風の影響を受けやすいため、対象作物以外に農薬がかかってしまう可能性があります。このため、ドローンで農薬を散布する際には、風の強さや風向きなどをよく見極めて、安全に作業を行うことが重要です。
ドローン農薬散布の今後
現在、日本の農業は深刻な人手不足問題に直面しています。このため、作業の効率化が求められていますが、その上で大いに役立つのがドローンです。大変な労力のかかる農薬散布にドローンを活用すれば、作業の効率化、低コスト化をはかることができます。小規模な農地であれば、なおさらです。
ドローンの登場前から無人ヘリコプターなどによって空中農薬散布が行われていましたが、それを購入するには1台1,000万円以上かかってしまいます。一方、農業散布用ドローンであれば、100~300万円くらいで買うことができます。安いとは言えませんが、無人ヘリコプターと比較すると大幅なコスト削減になります。
また、ドローンは無人ヘリコプターよりも至近距離から農薬を散布できますので、少ない農薬でも効果を得ることができます。これにより、農薬代も削減できます。
このように、ドローン農薬散布には大きなメリットがありますので、今後も普及が進んでいくでしょう。現在、米や麦類と比べると、キャベツなどの野菜や果樹に使える農薬は少ないのですが、規制緩和なども行われましたので、今後ドローン散布で使用できる農薬の種類は増えていくことでしょう。
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