測量の現場にドローンの使用を推し進める「i-Construction」とは何か
2015年11月に国土交通省が概要を発表して一躍話題になった「i-Construction」は、ICT(Information and Communication Technology)を取り入れて建設業界に大きな変化を与えることが期待されています。
建設現場の一般的なイメージに「3K」と呼ばれるものがありますが、「きつい、汚い、危険」がいつまでも続くようですと、建設業界の将来は明るくありません。
ICTを取り入れることによって、建設現場での生産性を向上させ、人手によって行っていた重労働や危険な作業をロボット化させようというのがこのプロジェクトの目的のひとつです。
新しいイメージとして目指している新3K(給料、休日、希望)の実現によって建設現場が魅力的なものになると、慢性的な人材不足という問題の解決にもつながります。
ドローン測量によって作成できる3Dデータも「i-Construction」の目玉であり、測量現場におけるドローンの導入が進められています。
「測量にドローンを投入」発言とドローン使用の義務化について
首相官邸のホームページには2016年9月12日に開催された第1回未来投資会議での安倍首相の発言が掲載されています。
「建設業の未来投資と課題」についての議論の際に、「建設現場の生産性を2025年までに20%向上させるよう目指し」そのために「橋やトンネル、ダムなどの公共工事の現場で、測量にドローンなどを投入し、施工、検査に至る建設プロセス全体を3次元データでつなぐ、新たな建設手法を導入します」と発言しました。
「測量にドローンを投入」するという首相の発言からもわかるように、ドローンを使った測量は国を挙げたプロジェクトの一環であり、ICT建機とともにドローンの活用を義務化するという国土交通省の方針が明らかになりました。
ドローン測量はどのように行われるのか
一般的なドローン測量の流れは次の通りです。
踏査
現地を実際に歩いて、計測対象物や周辺にある障害物などの確認作業を行い、ドローンの離着陸地点を決めます。
飛行ルートの計画
専用ソフトを使ってドローンの飛行ルートを計画します。飛行高度、シャッター速度、撮影間隔など、撮影のための様々な設定を行います。
GCPの設置
TS(トータルステーション)やGNSS測量器を使って、現地にGCP(地表基準点)を設置します。ドローン搭載カメラの3次元位置を測定することが可能になります。
飛行・撮影
飛行ルートに従ってドローンの自動飛行・撮影を行います。設定どおりに飛行させますが、必要に応じて操縦士が調整を行います。
データ作成
専用の画像解析ソフトを使って撮影した写真の解析を行います。解析したデータから3Dモデルや点群データを作成します。
ドローン測量が義務化されることによるメリット
ICT建機やドローンの利用が義務付けされることによって、建設業界に様々なメリットがもたらされることを期待できます。
ドローン測量の導入によって得られる大きなメリットのひとつは作業時間の大幅な短縮ができるということです。
「i-Construction」の工事事例集を見てみると、石川県で行われた道路測量業務においてドローンによる写真測量を行ったところ、「作業日数が通常のTSでの測量と比べて外業が2日から0.5日、内業が2日から0.5日になるなど、短縮できた」と報告されています。
大幅な時間短縮に加えて、作業人員の削減も可能になります。上記のドローンによる写真測量では「通常のTS等で外業4人、内業2人かかる作業を外業3人、内業0.5人でできるなど少人数で対応可能であった」としています。
作業日数や人員を削減できればそれだけコストダウンを行うこともできますから、ドローン測量には大きなメリットがあることが分かります。
さらに「経験の浅い技術者でも約3日間の講習で対応可能」だったという報告があり、その他の事例での「若い技術者や女性技術者でも対応可能となった」との報告も合わせると、建設業界における慢性的な人材不足という課題に対する答えが見えてきます。
ドローン測量の導入は事前準備や作業時間の軽減、少人化、コストダウンはもちろん、危険な場所への立ち入りも減るなど様々なメリットをもたらし、建設業界に大きな変化を与えることが分かります。
バッテリー容量の関係で飛行時間が短いことや、天候に左右されやすいなど課題もありますが、今後さらにドローンのスペックが高くなり、測量業務を含めた様々な業務で活躍することが期待できます。
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