個人レベルで手軽に操縦できるドローンは、その利便性から驚くべき速さでさまざまなビジネスでの活用が進められています。もともと、軍事用途が圧倒的なシェアを占めていましたが、今後は産業(ビジネス)分野のシェアが拡大すると見られており、その動向に期待がかけられています。
本記事では、ドローンのビジネス活用事例として、7つの業種の例を紹介し、今後どう活用されていくかという点も解説していきましょう。
空撮だけじゃない!農業からITまで、ドローンビジネス活用の幅
「空の産業革命」と呼ばれるドローンは、ビジネス面での活用が非常にさかんです。
ドローンを活用したビジネスで代表的なものとして、ドローンの開発・販売や空撮でのCM活用が挙げられます。しかし、実はドローンはさまざまな業種で活用が進められており、産業分野の市場規模は年々増してきています。
具体的には、以下のような分野です。実際に実用化されて活躍しているものから、現在実用化に向けて開発・研究が進められている分野の両方を含みます。
・農業
・物流
・監視
・点検・整備
・汚染検査
・測量
面白いのは、ドローンビジネス全体の活用シェアでは、メインとなりそうな空撮業務より、これらの分野のほうが高い需要を持つという点です。以下で詳しく解説していきましょう。
農業
実は、日本国内では世界に先駆けて、農業分野でのドローンのビジネス活用が進められています。ドローンといっても、現在主流となっているクアッドコプターではなく無人ヘリコプターですが、年間200~300台を売り上げるシェアを誇っていました。
現在では、ドローンによる農薬散布や水田の地質解析、農作物の生育管理など、ドローンによる労力削減、収穫量増加への実用化が本格化しています。
物流
日本国内では、来春にもドローンによる荷物配送を実現すべく、目視できない範囲での飛行や第三者・私有地上空の飛行に関する規制の改訂が進められています。さらに、米Amazonではコスト削減や迅速な配達を目的としたドローン配送サービス「Prime Air」のテスト飛行が完了しています。
飛行可能時間の改善や盗難、悪天候時の対応など、向き合っていくべき課題は多そうですが、技術レベルでの実用化は着実に進化している分野です。
監視
セコムでは、2015年に監視用ドローン「セコムドローン」の実用化を開始しました。敷地内に侵入した人や車をレーザーセンサーで捉え、自律飛行で対象に接近、ナンバープレートや顔を最適な方向から撮影するといったものです。
従来の監視カメラでは捉えきれなかった、ナンバープレートなどの情報をより正確かつ高精度で送信できるなど、ドローンの有用性が非常に高くなっています。2017年には、大規模施設向けの「巡回監視サービス」の実証実験も開始され、ますます監視用としての実用化が本格化しています。
点検・整備
高所など、危険を伴うことが多い点検作業は、安全面からみてもドローンが活躍すべき現場です。ドローンであればあっという間に橋や電気設備など、要所をチェックできるために、作業の効率化という面でも大変役に立ちます。
汚染検査
原子力発電所など、そもそも人が立ち入りにくい場所ではドローンの目が役立つでしょう。検査用の器具を積んだドローンによる汚染検査は、実際に活用されている分野です。
測量
今、もっともドローンのビジネス活用の需要が高まっているのが測量分野ではないでしょうか。実際、Web上のドローンパイロットの求人では、建設業における測量業務が大半を占めています。これまでのレーザー測量や航空測量などと違い、非常に低コストで、迅速に測量が完了するためです。
現在の性能だと、3Dデータ化するのに申し分ない情報量での撮影も可能なため、ドローンのビジネス活用として、今後ますますドローン測量の需要は高まっていくことが予想されます。
産業以外にもドローンを活用したビジネスは幅広い!
先ほどまでご紹介してきた産業以外にも、ドローンが活躍する分野は数多くあります。
・生態調査
人間が入りこめないような地域でも遠隔操作のできるドローンであれば調査が可能です。無人であるドローンなら、野生動物の普段の姿なども調査できます。
・災害救助
一刻も早い救助が必要な場面でも、災害地の状況によってはすぐに人が入り込めないことがあります。ドローンであれば、被害状況の確認、被災者の捜索を空中から行えるため、迅速な災害救助が行えます。
・報道
事故や災害の報道映像の撮影には、報道ヘリにカメラマンが乗り込む必要がありました。しかし、ドローンであれば小型の機体にその2つの役割を任せることができます。ヘリが入れないような状況の現場でも、ドローンなら撮影が可能です。
・広告
ドローンにポスターを貼り付けて飛行させて宣伝する活用方法があります。実際に海外では、同様の方法でランチタイムの宣伝を行っているレストランもあるようです。
・レースバトル
ドローンの産業活用とともに普及しているのがドローンレースです。一般的にレース用のスピードが出るドローンが用いられます。FPV飛行で、リアルな映像とともにスピーディなレースを楽しめます。世界大会も多く開催されており、高額な優勝賞金が用意されている場合もあるので、一攫千金を狙えるかもしれません。
・スポーツ
スポーツ分析において、ドローンの活用が期待されています。事例としてはアメフトの練習が挙げられます。フォーメーションを上空からドローンで撮影し、確認・分析するのです。ドローンは細やかにアングルを調整できるので、様々なアングルから選手を観察することができます。アメフトに限らず、テニス選手のフォーム確認などにも用いられています。
実際のドローン活用事例
このようにドローンは様々なビジネスの場での活躍が期待されています。もちろん、これは机上の推論ではありせん。これまで行われたことのある実際の活用例をいくつか見てみましょう。
・点検
自動車メーカーFord社での活用事例では、自動車工場内にある高さ40mを超える設備点検にドローンが用いられました。これまで足場を組んで行っていたため、一区画の点検に12時間かかっていたところ、ドローンで点検を行った場合、12分へと短縮されました。
・測量
土木業界では、空中からのレーザードローンを用いた測量が行われています。樹木に覆われている地表でも、レーザー照射によって地形の様子を記録できます。従来の1/6の時間で測量できるだけでなく、データ精度の向上、費用の削減も可能にしています。
・配送
国内でもいくつかの事業でドローンによる配送が進められてきています。日本郵便は福島県内の2か所の郵便局間でのドローン輸送を始め、目視外の場所への荷物の輸送を始めるとしています。
その他、楽天、ゼンリンの取り組みの元、ドローンが飛行するための「ドローンハイウェイ」を作る計画が行われています。実際に埼玉県秩父市でのドローンハイウェイにて、楽天ドローンによるお弁当の空輸を成功させています。
なお、海外でのドローン配送はより進んでおり、有名なものでは、Amazonの提供するAmazon Prime Airが挙げられます。他にも、物流大手のDHLは、タンザニアでのドローンによる医薬品輸送を始め、すでにドローン配送を実用化しています。
ドローンのビジネス活用に関する今後の課題点
それぞれの分野ごとにドローンのビジネス活用によるメリットがありますが、多くの分野で共通するメリットが「効率化」です。
有人で行なうには準備を含め時間がかかっていた作業でも、ドローンであれば時間を短縮できます。少ない人員で行えるため、人件費の削減にもなります。その分、これまで作業にかかっていた時間や人員を他の作業に回すことができるため、効率的に業務を進めることにもつながるのです。
もちろん、ドローンをビジネス活用することにはデメリットも生じます。業務でドローンを使用するなら、万全な安全対策が欠かせません。万が一、落下事故、接触事故、器物破損が起きた場合、企業として対処することになるため、個人が趣味でドローンを飛ばす時以上に気を付けなければいけないでしょう。
そのため、機体が手に入り次第、すぐにでもドローンをビジネスに活用できるわけではありません。ドローンの作業エリアの安全装置を始め、作業に関わる従業員のドローン関する安全知識を高めること、信頼できるドローン操縦士の確保をしていく必要があります。
また、ドローンのビジネス活用への課題点は「法整備」です。現在、ドローンには様々な規制があります。代表的なものが改正航空法です。改正航空法では、特定の空域や飛行方法をするためには、事前の許可申請が求められています。災害時を除き、ビジネス活用する際にもこの規制が適用されます。
そのため、ビジネス活用できる場があってもドローンの運用を制限されてしまうのです。もちろん、法規制は安全のためなので、不用意に解除するべきではありません。しかし、ドローンのビジネス活用を念頭に置いた法整備が行われれば、ドローン活用の世界はより広がっていくでしょう。
実際、2019年9月にはドローン活用のため、人口集中地区での飛行許可手続きの簡素化する基本方針が取りまとめられました。このように法整備が整い、よりいっそう活用されることが期待されています。
まとめ:ビジネスで特に需要が高まっているのが「測量」「点検」
「農業」「物流」「監視」「点検・整備」「汚染検査」「測量」のほかに、スポーツや在庫管理、地質解析など、これら以外でも非常に幅広い業務をドローンが担っていくことができます。
産業革命の名に恥じない、ドローンのビジネス面での幅広い活用が期待できそうです。
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