ドローンによる農薬散布の規制緩和の内容を徹底解説!

更新日: 2021.11.24 公開日: 2020.02.05
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目次

ドローンによる農薬散布のための飛行許可や承認申請の手続きが簡素化

2019年7月に廃止された「空中散布等による無人航空機利用技術指導指針」は農林水産省が定めた指針で、もともとは農薬散布用の無人ヘリコプターを対象としていました。

やがて産業用ドローンが農薬散布にも導入されると、無人ヘリコプターを対象とした指針が同じようにドローンにも適用されることになりました。

実はこの指針、自動操縦や緊急時に自動で帰還するなど、様々なアシスト機能が付いているドローンの長所を規制するものでもあったのです。

運用するにあたっては、航空法の許可と承認に加えて農林水産省登録の民間機関による代行申請、国や都道府県に農薬散布の計画を提出することなど、ほかの産業用ドローンに比べて手続きが複雑化していました。

今回の技術指導指針廃止で、国土交通省による承認に一元化されるので、ドローンによる農薬散布のための飛行許可や承認申請の手続きが簡素化されています。

 

農薬散布におけるドローンオペレーターの免許も不要になった

ドローンを操縦するのに免許は必要ありませんが、農薬散布の場合は一般社団法人農林水産航空協会が発行するドローンオペレーターの免許が必要でした。

今回の規制緩和で、航空法の要件を満たせば免許なしで農薬散布ができるようになりました。

航空法の要件は、10時間以上の飛行経験と5回以上の散布経験ですが、練習場所を確保し、水などを使った散布練習によってクリアすることができます。

ドローンには自動操縦などのアシスト機能が付いていて、誰でも簡単に操縦することができるのが本来の特徴です。

数十万円をかけて教習所に通う必要がなくなったので、すでにドローン操縦を行っている人にとってはうれしいニュースです。

 

補助者を配置する義務が不要になったのも規制緩和の大きなポイント

今回の規制緩和では、「緩衝区域」を設定することにより、補助者を配置する義務がなくなりました。

「緩衝区域」とは立ち入り管理区画のことで、農薬散布範囲の外側に設定し、人や車両に注意を促すものです。

安全対策のために、ドローンが制御不能になって落下するまでの距離(メーカーが保証する数値または飛行マニュアルに記載されている数値を参考にする)を計算に入れて管理区域を設定し、入り口に看板を立てて注意喚起をする必要があります。

しかし、補助者の配置が不要になれば、人員削減によるコストダウンにつながります。

目視外飛行や夜間飛行も可能になった

「国土交通省航空局標準マニュアル(空中散布)」によると、双眼鏡を持った補助者のもと、目視外飛行を実施することができます。

また、「機体の向きを視認できる灯火が装備された機体」を使用して夜間飛行を行うことも可能です。

大区画農地や傾斜地などにおける補助者なしの要件の見直しも進められており、今後さらなる改正が加えられると考えることができます。

ドローンの自動操縦により広大な農地を昼夜問わず短時間で農薬散布することが可能になれば、農家にとって大きなメリットになるといえるでしょう。

 

規制緩和により農業におけるドローンの普及が加速!ドローン技術の飛躍に注目

「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」はドローンを使った農薬散布を導入する際に、航空法とのダブル規制になっており複雑でわかりにくいという欠点がありました。

今回の規制緩和で、農薬散布にドローンを導入しようと考える農家が増加することが期待できます。

農業従事者の高齢化が進む日本において、ドローンのニーズはどんどんと高まっています。

これに伴い、センチメートル単位で機体制御ができ、自動飛行も可能なドローン「T-19」をナイルワークスが発表しました。

500万円ほどの価格も、30ヘクタール以上の農地を持つ農家であれば購入への大きなハードルにはならないとしています。

ナイルワークスと住友商事が連携し、大量に必要とするバッテリーを貸出する施設を主要ポイントに設置するなど、ドローン導入に向けて実際的な取り組みを進めています。

2019年の東京モーターショーでは、ダイハツがドローン基地機能を持つトラックを発表するなど、これから農業におけるドローンの普及が加速する動きとなっています。

農業用ドローンは農薬散布だけでなく、人工授粉、収穫物運搬、肥料散布、センシング、播種、鳥獣被害対策などの分野でのさらなる活躍が期待されています。

ドローン技術のさらなる飛躍に注目しましょう!

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