ドローンによる農薬散布の普及を後押し!農業用ドローン規制緩和のポイント

更新日: 2021.11.22 公開日: 2020.01.04
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ドローンによる農薬散布は広く知られるようになり、今後の農業発展のために必要なものとして注目されています。そのため2019年には農薬散布に関するドローンの規制の見直しが行われ、国を挙げての普及計画が進められています。

その際の見直しでは、どういった緩和が行われたのでしょうか。農薬散布ドローンに関する規制についてまとめてみました。

目次

農薬散布をドローンで行うことにはメリットがある

 

 農薬散布は農作業の中でも時間や労力がかかる重労働です。そのため無人ヘリによる農薬散が行われてきましたが、無人ヘリは1000万円以上する高価なため個人農家が所有するのは難しいものです。無人ヘリによる農薬散布を外注するにも農薬散布は年数回行うこともあるため費用がかさみます。

一方、農薬散布用ドローンは機体価格が100万円から300万円なので、数年使用すれば外注費用よりも安くなります。作物の成長や天候に合わせていつでも農薬散布を行なえるほか、小型なので持ち運びも簡単です。

手作業で30分かかっていた範囲も10分ほどで散布ができ、作業効率が上がります。農薬散布に割いていた労働力、時間、コストを削減し、他の作業に回せるので生産性の向上も図れるのです。

多くの農家では高齢化、労働力不足といった課題を抱えています。農業用ドローンはその課題をカバーできるとして、今後の農業に欠かせないものとなるでしょう。

 

ドローンで農薬散布をするなら知っておきたい規制「航空法」

農薬散布用ドローンであっても前提にあるのは航空法によるドローン規制です。航空法に基づいて特定の空域や飛行方法が規制されています。

規制されているケースは、以下の通りです。

・空港周辺の空域

・人口集中地区の上空

・150m以上の高さの空域

・日没後、日の出前の飛行

・目視外飛行

・人や物との距離が30m未満での飛行

・催し物会場での飛行

・危険物の輸送

・物の投下

農薬散布の場合、農薬を搭載するので「危険物の輸送」、また散布するので「物の投下」に当てはまります。そのため農薬散布をするなら、この2つの飛行方法をするための許可承認を国土交通省から得なければいけません。

農地の範囲、農薬散布の作業時間によっては「日没後、日の出前の飛行」「目視外飛行」に当てはまる場合もあるでしょう。

 

規制緩和を目指し、2019年7月末付で農林水産省による技術指導指針が廃止

2019年7月、国土交通省、農林水産省によって農薬散布ドローンの規制緩和がされることになりました。

これまでドローンで農薬散布をする際は、航空法の規制に加え、農林水産省による「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」に従う必要がありました。

指針の中では、一般社団法人農林水産航空協会が発行する農薬散布オペレータードローン免許の取得や、指定業者による定期点検が定められています。また事前に散布計画を提出しなければいけませんでした。

2019年7月末日付けで指針が廃止され、新たに新設されたのが「空中散布ガイドライン」です。空中散布ガイドラインによって、農薬散布ドローンオペレーター免許、指定業者による定期点検は不要となりました。ドローンの整備は各操縦者の責任となり、操縦技術があるかどうかは航空法の許可申請の際に審査されます。

これまで農水協が代行で行っていた危険物輸送、物の投下に対する航空法の許可申請は各自が行わなければいけません。しかしドローンで農薬散布をするまでの手続きが国土交通省の承認に一本化されることで、手続きがシンプルになったというメリットがあります。

他にも散布区域周辺に情報提供を行うことで散布計画の提出が不要となり、事故発生時の報告先として農薬に関する事故は農林水産省、航空安全に関する事故は国土交通省とすることが明記されている、といった変更点があります。

 

ドローンによる農薬散布時の「補助者の配置」「目視外・夜間飛行」に関する規制が緩和

ドローンによる農薬散布安全確保に関しては「空中散布を目的とした飛行のマニュアル」が新設されました。これには航空法の許可承認を受けて農薬散布用ドローンを飛行させる際に必要な手順が記載されています。

このマニュアルの大きな特徴は、「補助者配置義務を不要する要件」「目視外の要件」が含まれていることです。

・補助者配置義務が不要とする要件

人や車両が入らない「立入禁止区域」を設けた上で、補助者の配置義務がなくなります。メーカーが明示する位置精度や制御不能に陥った場合の落下距離を元に、農薬散布区域の外側に設定します。この緩衝区域を設けて、万が一ドローンが落下した際の衝突リスクを回避していなければいけません。

目視外、夜間飛行の際には自動操縦による飛行で、飛行範囲の制限やトラブル時に危険回避機能が作動するよう設定して飛行させる必要があります。

・目視外飛行の要件

目視内農地と接続する農地の範囲で行い、第三者が立ち入る公道や住宅によって隔たれている飛び地では実施できません。

これまで農薬散布に関する指針は手続きを複雑にし、免許取得代、指定業者のメンテナンス代など導入コストがかかるものでした。指針はもともと無人ヘリを念頭に置いたものだったため、農薬散布用ドローンに当てはめると不要な規制も多かったのです。

今回の規制緩和は農薬散布用ドローンに関するもので、無人ヘリでの散布に関しては現行通りの規制もあります。ドローンに関する不要な規制を緩和することで、これまで農薬散布用ドローンの導入の障害となっていた導入コストや手続きの複雑さの改善を見込んでいます。

この規制緩和は今後のドローンによる農薬散布の普及を広げる第一歩となり、これから農薬散布用ドローンの活躍が増すことが期待されています。

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