ドローンによる農薬散布で使用できる農薬や散布量について徹底解説

更新日: 2021.11.22 公開日: 2020.04.15
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スマート農業の導入によってドローンを利用した農作業が注目されています。今回はその中からドローンによる農薬散布について解説します。そもそも農薬を使用する必要があるのか、ドローンで使用可能な農薬や量について、ドローンによる農薬散布の今後の展望について見てみましょう。

目次

農薬散布の必要性とドローンの利用について

そもそも農薬とは何かと言う点ですが、「殺虫剤」「殺菌剤」「除草剤」「植物成長調整剤」など、農作物にとって害となる病害虫の駆除に用いられる薬剤のことを指します。病虫害にとっての「天敵」も農薬とみなされています。

「無農薬野菜」が好まれることから、農薬の使用は体に良くないと思う人もいるかもしれません。しかし「農薬取締法」と言うのがあって、農薬であれば何でも使って良いというわけではありません。さらに使用者は定められた使用基準を守りながら農薬を使う必要があります。

1993年に行われた「農薬を使用しないで栽培した場合の病害虫等の被害に関する調査」によると、一般的な栽培において農薬を使用しないと、収穫量の減少により利益が得られないとことが分かりました。平均減収率や平均減益率を見ると、リンゴ、桃、レタスなどは農薬なしでほとんど育たないことが分かります。

農家にとって農薬散布は必要不可欠な作業ですが、広い農地に農薬を散布する作業は決して簡単ではありません。それに加えて慢性的な人手不足や農業者の高齢化などの問題が農家を直撃しているのが現状です。

そこで注目されるようになったのがドローンを使った農薬散布です。ドローン機体そのもののグレードアップ、規制緩和、スマート農業の導入などが後押しし、ドローンによる農薬散布をすでに行っている農家もたくさんあります。

 

ドローンによる農薬散布で使用できる農薬とは?散布量は決まってる?

ドローンによる農薬散布で使用できる農薬は、「使用方法」の欄に「無人ヘリコプターによる散布」と記載されているものでしたが、2017年12月25日からはただ単に「散布」と記されているものも使用できるようになりました。「散布」が使用方法の殺菌殺虫剤がほとんどなので、ドローンによる農薬散布の可能性が広がったことが分かります。

それに加えて「対象作物」「適用病害」「希釈倍率」「使用時期」「総使用回数」を守って使用する必要があるので、農薬のラベルをしっかりと確認しなければなりません。

「散布」が使用方法になっている農薬の場合は希釈倍率が1,000~2,000倍と非常に高く、高濃度の農薬を効率よく散布できるのが持ち味のドローンには向いていないという懸念もあります。この点は今後さらに改善されていくことが期待されています。

「対象作物」についてですが、「産業用無人航空機用農薬」(http://mujin-heri.jp/index3.html)のホームページから最新の農薬登録情報や作物と病害虫ごとに適した農薬の検索などを行うことができます。農薬のラベル情報も確認することができとても便利です。

 

ドローンによる農薬散布の注意点や今後の展望

ドローンによる農薬散布の際には、農薬のラベルをきちんと確認してから使用する必要があります。それに加えて、使用するドローンの性能確認がされているかも大切なポイントです。

農薬の散布ムラは目視で確認することができません。性能に疑いのあるドローンを使用すると、農薬が定められた量を超えて付着してしまうことがあります。2006年5月29日から、基準値を超えた農薬の残留が認められると作物の流通が禁止されることになっています。

農薬の残留値がオーバーになると農家にとっては大打撃です。さらに、周囲の作物に農薬が飛散してしまう可能性もあり、複数の農作物をダメにしてしまうことがあります。

農林水産航空認定機は農薬散布の均一性テストをクリアしているので、安心して利用することができます。多少高額になりますが、リスクを最小限に減らすことができるので安心です。

農林水産航空認定機以外のドローンを使用して農薬散布をすることも許可されていますが、性能確認がされていないためのトラブルは自己責任になります。ただ安いからという理由でドローンを選ぶのはリスクが高すぎます。

農薬の希釈倍数や散布量によってはドローンを使うことのメリットがないこともあるので、作物や使用する農薬のラベルを確認して、ドローンによる農薬散布に適しているかどうかを考慮する必要があります。

スマート農業は国が推し進めているプロジェクトで、規制緩和などによって高濃度少量散布可能な農薬も増えてきています。農薬散布のためのドローンの普及や改良が進んで、農薬散布の効率や効果がさらに向上しています。

課題があるとはいえ、スマート農業の顔ともいえるドローンを使った作業は今後もさらに需要が増えることが期待できます。

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