ドローンによる農薬散布には、オペレーター・機体の登録や許可が必要なのでしょうか?今回は、ドローンによる農薬散布の規制緩和や最新のルールについて解説します。
ドローン農薬散布にオペレーター登録が必要?
農林水産省は「農薬を散布する小型無人飛行機(ドローン)操作の認定制度」を2016年にスタートしています。これは、ドローンで農薬散布する人が、操縦技術・知識を習得し、安全に作業できるようにするための制度でした。この制度により、ドローンで農薬散布しようとする人は、オペレーターとして技能認定を受けて登録しなければならなくなりました。
この技能認定の登録には、農林水産省の登録認定機関である「農林水産航空協会」指定の教習施設で、操作実技教習や学科教習を受けなければなりませんでした。それには、15~18万円くらいの費用と3日~5日にわたる座学及び実技の受講が必要でした。このように、技能認定の登録には時間と費用がかかっていましたので、農薬散布用ドローンの普及を広めるという点では足かせとなっていた面があります。
また、農薬散布のためにドローンを飛ばすには、そのドローンの機体登録も必要でした。「農林水産航空協会」がそのドローンに必要な性能が備わっているかをチェックして、登録するという制度になっていたのです。しかし、「農林水産航空協会」がドローンの最新技術の評価にあまり積極的ではなかったため、国産メーカーの農薬散布用ドローンの技術開発のモチベーションを下げているという指摘もありました。
登録不要?ドローン農薬散布の最新ルールを解説
オペレーターの技能認定・登録や農薬散布用ドローンの機体登録の制度は、農林水産省が定めた「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」に基づいていました。しかし、この指針はそもそも農薬散布用の「無人ヘリコプター」についての指針をドローンに拡大適用したものであり、ドローンの特性を考慮に入れていない過度な規制となっているという指摘もあったようです。
こうした事情もあり、農林水産省は2019年7月にこの指針を廃止しています。これは、農薬散布のためのドローン使用の規制緩和につながりました。
指針の廃止により、農薬散布用のドローンを飛ばそうとする人が技能認定や登録を受ける必要はなくなりましたし、機体登録の制度もなくなりました。また、指針廃止前はドローンで農薬散布をする前に、国や都道府県に「散布計画書」を提出する必要がありましたが、それも不要になりました。
このように、時間や手間、お金がかかる登録制度や手続きがなくなったため、農薬散布用ドローンの導入のハードルは大分低くなりました。現在、農薬散布用のドローンを飛ばすために必要なのは、「航空法」に基づいて国土交通省の許可と承認を得ることだけです。なお、許可と承認を受けるための条件は「10時間以上の飛行経験」と「5回以上の農薬散布経験」となっています。
また、今回の規制緩和により、ドローンによる農薬散布で使用される農薬の種類が増えていくとも言われています。以前は、地上散布の場合とドローンの空中散布の場合とでは希釈倍率などが異なるため、改めて残留農薬の安全性等を確認する必要ありました。それが、既に登録されている地上散布用農薬の希釈倍率をドローンに適した濃度に見直す変更登録申請を行えば、残留農薬試験は不要ということになったのです。
農業用ドローンの今後の展望
今回は、ドローンによる農薬散布の登録制度などの規制緩和について見てきました。この規制緩和により、農薬散布用ドローンの活用がますます広がっていくことでしょう。しかし、農業においてドローンが活躍できる分野は農薬散布だけではありません。以下の分野でもドローンの利用が普及してくと考えられています。
・肥料散布
ドローンを使えば肥料をムラなく効率的に散布できます。
・種まき
種まき用のドローンが普及すれば、農家の負担が大幅に減るでしょう。
・受粉
まだ実験段階ですが、ドローンで花の近くに花粉を噴射することで受粉させる試みが行われています。
・収穫物の運搬
重量や長時間飛行に耐えられるドローンが開発されれば、収穫物の運搬もできるようになるでしょう。
・センシング
ドローンに搭載した高精細カメラで画像を撮影し、収穫時期の判断や害虫や病気の診断に役立てようという試みがあります。
・鳥獣被害対策
高性能の赤外線カメラを搭載したドローンで、田畑周辺の鳥獣の生息状況などを把握する技術の開発が進められています。
このように、農業のさまざまな分野でドローンの活用が進行しています。実用化や普及が進めば、農家の方々の負担が減っていくことでしょう。今後が楽しみです。
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