ここ1、2年の間に、日本でもドローン飛行場がオープンしたり、ドローンレース大会が開かれたり、ドローンを使った宅配が実施されたりと私たちの生活の中に随分とドローンが浸透してきました。そんなドローンは農家でも注目されており、特にドローンを使った農薬散布では大幅なコストダウンが見込めるといわれています。ここでは、ドローンで農薬散布をした場合、どれほどの費用削減につながるのか、農薬散布以外の使い道はあるのかなどをご紹介します。
ドローンで農薬散布をすると生産コストが大幅ダウンする?
近年、ドローンが私たちの生活に普及すると同時に、農業用ドローンの開発や販売も増えています。
一見、農業とドローンは接点がないように思われがちですが、農業におけるドローンの活用は幅広く、さまざまなメリットを得ることができます。
その中でも特に注目されているのが、ドローンを活用して農薬散布に使用することです。
これまで農薬を散布する方法は、重いタンクを抱えて広大な敷地を手作業で行うか、無人ヘリコプターを導入するしかありませんでした。特に、無人ヘリコプターは1台あたり1,000万円を超えるものが多く、簡単に手を出せるものではありません。
一方、ドローンを使って農薬散布をする場合、ドローン1台あたりの購入金額は100万円~200万円前後と無人ヘリコプターに比べて大幅なコストダウンが見込めます。そのうえ、無人ヘリコプターでは対応しにくかった小規模面積の田畑であっても、小回りが利くドローンであれば問題なく農薬散布をすることが可能です。
また、ドローンを使って農薬散布を行えば広大な敷地であっても少人数かつ短時間で作業を終わらせることができます。つまり、人件費の削減にもつながるのです。
ただし、ドローンで農薬散布をする際は申請が必要!
ドローンを農薬散布に活用することで大幅なコストダウンというメリットを得られますが、ドローンを飛行させるためには事前に申請が必要であることを把握しておかなければなりません。
ドローンを活用し農薬散布するために必要な申請は「危険物輸送」と「物件投下」の2件です。
農家の方からすれば、農薬は日常的に取り扱うものであり危険物という認識は低いと思います。しかし、一般的にみると農薬は劇薬=危険物です。その危険物を散布(散布といっても投下することに違いありません)するため、危険物輸送と物件投下の申請は必ず行いましょう。
なお、物件投下の場合は、これまでにその飛行経験が5回以上なければ投下ができないことになっています。ドローンを使って農薬散布を検討している方は、まずはドローンの飛行操縦訓練を受けることが必須です。これに関しては現在、農林水産航空協会で「農薬を散布する小型無人飛行機(ドローン)操作の認定制度」という認定資格を取得できます。
※講習期間は3~5日、取得費用は約15~18万円
そのほか、ドローンを使用するうえでの最低限のマナーやルールも覚えておきましょう。
おすすめの農薬散布用ドローン2選
農薬散布として使用できるドローンは、日々、高性能なものが開発され、数多くのメーカーが参入しています。
ここでは、農薬散布ができるドローンを厳選してご紹介します。
(1) DJI製農薬散布用ドローン「AGRAS(アグラス)MG-1」
世界最大ドローンメーカーのDJI社が発売するドローンです。
価格:180万円前後
重さ:9.5kg
機体幅:150cm
特徴:10Lの薬剤タンク搭載しており、約10分で1ヘクタールの散布が可能です。また、操作がしやすいため、ドローン初心者にも向いています。
(2) TEAD 農薬散布用ドローン「DAX04」
日本企業のTEADから販売されているドローンで、農林水産航空協会から農薬散布ができるドローンとして国内で初めて認定を受けた機体です。
価格:255万円前後
重さ:16.6kg
機体幅:163cm
特徴:8~10分程で1ヘクタールに農薬を散布することが可能です。飛行中のモーター音も静かなため、騒音対策もしっかりとされています。
できるだけ値段を抑えたい方は、オークションを利用するのも良いでしょう。
なお、国または地方公共団体などから農薬散布用ドローン購入の補助金がもらえる可能性があります。農薬散布用ドローンの購入を考えている方は、一度、役場や市役所に相談してみてください。
コストダウンするほかにもメリットがある!
ドローンで農薬散布をした場合、大幅なコストダウンに繋がることがわかりました。しかし、ドローンは農薬散布だけに役立つものではありません。ここでは、その他のメリットをご紹介します。
(1) 作業の効率化
農薬散布用のドローンはカメラも搭載されています。そのため、どれだけ広大な田畑であっても農薬散布が必要な場所をすぐに把握することが可能です。また、一度に広い範囲を見渡すことができるので、農作物の成長具合を管理することにも役立ちます。
(2) 鳥獣被害対策
ドローンに赤外線カメラを搭載して茂みに隠れた動物を追跡したり、音や光を発したりすることで鳥獣被害対策になるのではないかと研究が進められています。活用できるようになれば、田畑が荒らされることが軽減され、最大限の収穫が望めることでしょう。実際に、徳島県ではドローンを利用して、狩猟犬の位置を特定する実験が行われています。
このように、ドローンは農薬散布のコスト軽減だけでなく、そのほかにも大きなメリットをもたらします。低迷気味だった農業にもドローンによって新しい光が差し込み、活性化していくことが期待できそうです。
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