実はあまり知られていない?軍事用ドローンの直面している課題や問題点とは

更新日: 2021.11.19 公開日: 2019.09.05
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ドローンの用途はもともと軍事用だったって本当?

歴史を確認してみると、ドローンのような無人航空機という発想は第一次世界大戦中からありました。その後、第二次世界大戦時から研究が本格化しています。実際にドローンを軍事利用することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。

軍事目的でのドローン

実際に、過去に勃発したイラク戦争などではドローンを爆撃用に使用しています。最近では、画像やセンサー技術の進歩により、偵察目的として使われることが多くなりました。ただし、一般で使われている小型機ではなく、燃料などの関係で飛行機型が多くなっています。

軍事利用するメリット

それでは、どうしてドローンを軍事利用するのでしょうか。理由は簡単で、人命を危険に晒すことなく、敵地の偵察や爆撃ができるからです。敵にドローンを撃墜されてしまうというリスクはあるものの、人命が失われないことを考えると、そのメリットは計り知れません。

 

ドローンを軍事用として利用した場合の問題点

あまり知りたくない事実ですが、現代の戦争においてドローンは必要不可欠な存在です。軍事目的としても非常に利便性の高いドローンですが、一方でさまざまな問題点が浮き彫りになっています。実際に現場で挙がっている問題を確認してみましょう。

パイロット不足の問題

基本的にドローンは遠隔操作で戦地へと向かいます。ドローンパイロットはコンピュータスクリーン画像を監視し、敵を発見すれば攻撃します。そして、その仕事を終えると日常の生活へと戻るのですが、独特な精神的苦痛があるため、パイロット不足に陥っています。

一般人に向けての誤爆

まだ自国にとって危険な相手と戦うのであれば、大義はあると言えるのかもしれません。しかしながら、過去にはドローン攻撃によって罪なき市民に被害をもたらしてしまうという事例も出ています。ドローンによる攻撃の精度は決して完璧ではないのです。

 

軍事用ドローンによる攻撃が頻繁に起こっている実際に使用した近年のニュース

アルメニア軍の輸送トラックがドローンによって攻撃されて兵士が7人死亡

2016年4月にナゴルノ・カラバフ共和国でアルメニア軍の輸送トラックがドローンによって攻撃されました。ナゴルノ・カラバフ共和国はアルメニアとアゼルバイジャンの領土紛争の舞台となっており、アゼルバイジャンの国境付近を走っていたアルメニア軍の輸送トラックが自爆ドローンの標的となりました。

この攻撃で使用されたのは、イスラエル製のハロップです。現場上空をゆっくりと旋回し、攻撃のタイミングを見計らっていました。「神風ドローン」または「自爆ドローン」とも呼ばれる徘徊型兵器の餌食になったのは、アルメニアの兵士7人で、何が起こったのかわからないまま命を失うことになりました。

イエメン最大の軍事基地がドローン攻撃を受けて6人が死亡

2019年1月10日にイエメン最大の軍事基地がドローン攻撃に遭いました。攻撃を受けたのはアルアナド空軍基地で、イエメン第二の都市アデンから約60㎞離れたラヒジュ県にあります。イエメンの反政府武装組織フーシ派が攻撃したことを発表しました。

国連の仲介によって、内戦の終結に向けた和平協議が行われようとしていた矢先の出来事でした。この攻撃により、政権側の兵士6人が死亡、報道関係者も含む12人が負傷して病院に運ばれました。

サウジアラビアのアブハ国際空港がドローン攻撃されて9人が負傷

2019年7月2日にサウジアラビアのアブハ国際空港がドローン攻撃されました。同空港は同年6月にもミサイル攻撃を受けており、26人が負傷しました。今回のドローン攻撃によりサウジ人8人、インド人1人の合計9人が負傷しました。

攻撃をしたのはイエメンの反政府武装組織フーシ派で、自ら攻撃に関与した声明を出しています。フーシ派はドローンを使った攻撃を多用することでも知られており、今後も高性能のドローンを入手して、軍事目的に使用することが考えられています。今回のように、民間人が標的になることがあり、非難の声が上がっています。

 

軍事目的に使われるドローンにはどんなものがあるのか

一般的なドローンしか知らない人にとって、軍事用ドローンはどんなものなのか想像しにくいかもしれません。ここでは、軍事用ドローンにはどんなものがあるのか、さらに詳しく見ることにしましょう。

「シンガポール・エアショー2016」で披露された軍事用ドローン

2016年2月6日~11日に開催された「シンガポール・エアショー2016」で、イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(IAI)が開発した3種類の軍事用ドローンが披露されました。

「ロテムL」

偵察用のドローンで、最大10㎞離れたところからタブレット端子を使って操作することができます。最大1㎏の爆発物を取り付けて爆弾として使うこともできるとされています。

「ハーピーNG」

完全自律型の長距離爆弾ドローンで、赤外線カメラなどで敵のレーダーを検知し、目標物にぶつかって自爆します。

「グリーンドラゴン」

グリーンドラゴンは全長1.7mの滞空型爆弾ドローンで、滞空時間は1時間半あり、40㎞~50㎞の範囲で敵を捜索することができます。3㎏ほどの爆弾を搭載し、非常に高い精度で攻撃することが可能です。標的が見つからない場合は、回収して再利用することができるのが特徴となっています。

軍事用ドローンの製造はイスラエルを中心に各国で行われている

軍事用のドローン製造においてはイスラエルが業界をリードしていますが、イスラエル以外でも軍事用ドローンの開発に力を入れている国が多数存在します。アメリカやロシアも独自の軍事用ドローンの開発に取り組んでいますが、近年において成長が著しいのが中国です。

2019年5月6日~8日に開催された軍事技術見本市「北京国際軍民用装備展覧会」で最新の軍事車両が展示されました。見た目は普通の大型4輪駆動の軍用車両ですが、開閉式の天井から12の筒型発射装置が出てくるようになっています。

発射するのは軍事用ドローンで、攻撃用と偵察用のドローンが搭載されています。攻撃用のドローンには2㎏の爆弾が装着されており、時速180㎞で標的に向かって飛行することができます。偵察用のドローンは1時間以上連続で飛行することが可能です。

トップレベルの技術を誇りながら安価である中国製の軍事用ドローンは、サウジアラビアやアラブ首長国連邦、イラクなど中東の国々に輸出され、実際に戦地で利用されていると言われています。今後もさらなる改良がなされ、中国が軍事用ドローンの市場をにぎわせることは容易に想像することができるでしょう。

著しい普及率の裏側に多く残る軍事用ドローンの課題

こういった背景とは裏腹に、軍事用ドローンは普及の一途を辿っています。しかしながら、現実は厳しく、米空軍は年間で180人のドローンパイロットを訓練している一方で、それを上回る年間230人のパイロットが職場を去っているといいます。

これでは、軍事用ドローンを使った攻撃もできません。これから先、万が一の場合に備えて、パイロットを確保しておく必要があります。そこで米軍は5年間で12万5千ドル(約1,500万円)の特別ボーナス支給を決定するほど、大きな問題を抱えています。

米軍ではボーナス支給だけでなく、米軍の航空学校の卒業生の一部を自動的にドローン操縦任務に就かせることを決定しています。

空を飛ぶことで国を守ることができるという意味で人気があった米軍のパイロット職ですが、この夢を果たすことができないドローンパイロットの任務とのギャップを埋めるには時間が掛かりそうです。

 

まとめ

人命を危険に晒すことなく敵地を偵察、攻撃できる軍事用ドローンは、今後も改良がすすめられていくことでしょう。とはいえ、遠方から操縦して簡単に人の命を奪う殺人兵器を使用することに対する葛藤が兵士の中に存在するのも事実であり、ドローンパイロットのジレンマは、今後も続くことが考えられます。

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