農薬散布でドローンを飛行させるには許可が必要
農薬散布でドローンを使用する際には、国土交通省の地方航空局長に許可を得る必要があります。使用するための許可を得るには「個別申請」や「包括申請」などがありますが、ドローンで農薬散布を行う際には、「包括申請」がおすすめです。
「個別申請」の許可は、飛行を行う日時や経路を決めて申請の手続きをする必要があります。ドローンが落下したりなどの、事故につながる恐れがある雨の日や風が強い日は飛行ができないため、申請を出した日に農薬散布ができなければ、改めて申請の手続きをしなければなりません。
一方「包括申請」の許可は、申請者が決められた期間内に繰り返し飛行ができます。また、複数の圃場で散布をする必要があるときでも包括申請を出して、許可を得ることができます。
包括申請で許可を得ると、原則3カ月以内であれば飛行が可能になり、断続的に使用するのであれば最長1年間の申請ができます。
ドローン農薬散布において許可申請以外で承認が必要なもの
ドローンで行う農薬散布では、許可申請以外にもさまざまな承認を得る必要があります。
ドローン農薬散布で必ず承認が必要となるものは「危険物の輸送」と「物件投下」です。
散布であっても農薬は危険物にあたるので、関連法令等に従い安全に飛行させなければなりません。
ドローンからの農薬散布は「物件投下」にあたるので、訓練をする必要があります。
物件投下の訓練を5回以上することや、ドローンを安定させ姿勢制御ができるようにならなければなりません。
「危険物の輸送」や「物件投下」以外にも、「目視外飛行」「夜間飛行」「人や建物との距離が30メートル未満での飛行」を行う際にも承認が必要になるので詳しく説明します。
・目視外飛行
目視外で行う際には承認を得なければなりません。承認を得た場合でも、目視内で確認できる農地と隣接した農地の範囲のみの飛行と決められています。
・夜間飛行
承認が得られると夜間(日没から日の出)での飛行が可能です。しかし、夜間飛行中に目視外で行うことはできません。また、機体が確認できるようにドローンに灯火をつける必要があります。
・人や建物との距離が30メートル未満での飛行
人や建物との距離が30メートル未満での飛行を行う際にも、申請をして承認を得なければなりません。また、飛行させる場合は、プロペラガードの装着が必要です。
この他にも、ドローンで農薬散布を行う際には補助者を必要とします。ただし、下記のことを条件に補助者を配置しなくてもドローン農薬散布を行うことができます。
飛行を予定する範囲内に人などが接近する可能性がある場合は、注意喚起のための看板設置や、実施区域やその周辺へ事前に周知をする必要があります。
飛行する高度は、農薬を散布する対象の農作物上4メートル以下と決められています。
目視外や夜間に飛行を行う際に、補助者を配置しない場合には、自動操縦により飛行させなければなりません。飛行する範囲を制限する機能や、不具合が発生したときには危機回避機能が動くように設定する必要があります。
申請をして承認を得るだけでなく、マニュアルに沿って安全に飛行することが大切です。
ドローン農薬散布を行う際の許可・承認の申請先と必要な期間
2019年7月に「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」が廃止されました。
これまで、「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」では、事業計画書は都道府県協議会に、航空法に基づく許可や承認は国土交通省になどと、複数の場所に申請をする必要がありましたが、これらの手続きが国土交通省への申請手続きに一元化されています。
※ただし、空港等の周辺や地上から150メートル以上の高さを飛行する際には、空港事務局長に申請が必要です。
手続きは、直接窓口で行うほかに、郵送やオンラインでもでき、飛行を予定している10日前(土日祝日を除く)までに申請をします。受理されてから10日必要であるため、郵送で申請の手続きを行う場合は、余裕をもって送りましょう。
申請では氏名や住所のほかに、使用するドローンの製造者、名称、重量、飛行日時、飛行経路などの記入があるので事前に確認しておいてください。
飛行する日時や経路は、前述のとおり農薬散布では指定するのが難しいので、予定している期間と時間帯、想定される範囲を記入します。
期間は最長1年間ですが、更新申請の提出でドローンでの農薬散布を続けて行うことができます。決められた期間の40日前(土日祝日を除く)から10日前までに更新申請が必要なので、期間が過ぎないように気をつけましょう。
時間削減や経費削減など、さまざまなメリットがあるドローン農薬散布ですが、一つ間違うと重大な事故につながる可能性があります。
安全に飛行するためにも、ドローンの操縦技術を高めることはもちろんですが、ドローン農薬散布を行う際の知識を深め、許可や承認の申請も確実に行いましょう。
「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」の廃止や、そのあとに制定された「無人航空機飛行マニュアル」により、ドローンの利活用が急速に進んでいます。農薬散布においても、ドローンで散布できる農薬が増えつつあり、さらにドローンを使った農薬散布の普及が期待できます。
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