インフラ分野におけるドローンの活用状況と課題

高速道路、ダム、トンネル、港湾など国内における経済活動には欠かすことができないインフラですが、その多くは老朽化が進み、メンテナンスや設備点検が各地で進められています。インフラ分野においてドローンはどのように活用されているのでしょうか。

日本のインフラは老朽化が進んでいる

現在、日本各地に存在する高速道路、トンネル、ダムなど大規模なインフラの多くは1954年~1973年のいわゆる「高度経済成長期」に建設され整備されたもので、40年~60年以上が経過し老朽化が著しく進んでいます。

平成24年12月2日に発生した「中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故」などは皆さんの記憶にもまだ新しいのではないでしょうか。

多数の犠牲者を出したこの事故を国は重大事故と捉え、再発防止のための委員会を発足して対策が進められた結果、設計、工事に使われた材料、施工管理など複数の要因があったことが明らかになりました。

それに加えて、天井板を支えるための天頂部接着系ボルトにおいては近接での目視検査、打音検査が12年間未実施だったなど、点検方法や点検実施方法にも問題があったことが指摘されています。

これを経て平成26年7月1日よりトンネルや2メートル以上の道路橋などを5年に1回点検することが義務付けられ、その点検方法も規定が設けられました。

しかしながら高所での作業となり、危険が伴うほか、作業にかかる費用も高額なものとなるため、ドローンの活用が大きく注目され始めたのです。

 

インフラ点検におけるドローンの活用方法とは

インフラ点検での主なドローンの活用方法としては橋梁の「損傷箇所の撮影」と「打音検査」が考えられます。

橋梁の点検は、鋼材やコンクリートの亀裂等がないか隅々まで確認する必要があり、吊足場などを仮設して近接しての目視検査や、必要に応じて打音検査を行うことが定められています。

・数百万円程度の高額な特殊設備

・専門的な技術と高所作業に対する安全性

が求められ、これらの課題をクリアするためにドローンに期待が寄せられているのです。

あるいは、民間における設備点検でもドローンはすでに活用され始めています。

たとえば、太陽光発電システムのパネル点検では物体の温度を視覚化するサーモグラフィカメラを用いるのですが、そのカメラをドローンに装着して上空から撮影することで、広範囲に渡るパネルを短時間で点検することが可能になりました。

また、高所作業による危険を伴うためコストが高くなり点検スパンが長くなってしまいがちな工場の屋根の点検などにもドローンが活用されています。ドローンで点検することによって安全性が確保されるほか、上空から撮影した映像の方が損傷箇所を発見しやすいなどのメリットが得られるようになりました。

 

ドローンを使ったインフラメンテナンスの実証実験

平成28年3月、国土交通省は「次世代社会インフラ用ロボット現場検証・評価の結果」という報告書を発表しましたが、この中にドローンを使ったインフラ実証実験の結果も報告されています。

先にご紹介した橋梁点検のほか、一部ではトンネル点検におけるドローン活用のインフラ実証実験も行われています。

もちろんドローン以外にも自走式ロボットなどを活用した技術の導入が検討されてはいますが、やはり移動範囲の広さ、移動時の自由度の高さなどを考慮した時に、ドローンの方が、インフラ点検に関しては優位性が高いと考えられています。

ほかにも、たとえば高所作業車が必要な点検時でもドローンを使えば容易に作業できるうえ、作業に携わる人たちの安全性も高くなるという点が高く評価されているようです。

その一方、ドローンは飛ばしながら作業を行うことになるため、難易度は高くなります。打音検査では安定性を保ったまま同じ強さで点検箇所を叩くための制御技術が必要となり、画像撮影ではミリ単位の亀裂も見逃さない鮮明な撮影が求められるのも事実です。

 

砂防堰堤調査におけるドローンの活用事例

高知県ではドローンを活用したインフラ点検の事例として、砂防堰堤調査が行われています。

大雨の時に土石流による災害を防ぐために作られる堤防を砂防堰堤と言いますが、この砂防堰堤の異常確認にドローンが用いられているのです。

砂防堰堤は山の中に作られていることが多く、メンテナンス等を考慮して作られているものがほとんどないため、「計測用の器具を抱えて急斜面をロープで昇降する」という大がかりかつ大変な危険性を伴う作業でした。

高知県は平成27年度からこの調査にドローンを導入したことによって作業時間を3分の2に短縮することに成功し、危険を伴う作業の大幅な低減に至りました。

とはいえ、インフラ点検においてドローンを活用するうえでの課題もあります。

雨や風、雪の日などはドローンを飛ばすことができませんので、天候に左右されてしまうのです。

しかし、高知県が行っている砂防堰堤などは大雨の時にこそ点検が必要ですので、従来のように人の手で点検を行わなければなりません。

また、点検等に用いられるドローンは1機数十万円という高額機体ですので、十分な操縦技術を持たない職員は積極的に飛ばしたがらないことが目立ったため、職員のドローンに対する知識や操縦技術の向上も課題となっています。

 

ダムの巡視におけるドローンの活用事例

青森県黒石市に建設された浅瀬石川ダムでも、平成27年11月30日からドローンを活用したダムの点検が始まっています。平成28年には40回にもおよぶ点検を実施するなど、定期点検のほか、大雨の後の臨時点検など幅広く貢献していることが分かります。

ダムの法面(ダムのコンクリートで固められた斜面)に近づくことは大きな危険が伴うため、従来は遠方からの双眼鏡等を使用した点検にとどまっていましたが、ドローンを導入したことによって法面の崩れ等の有無はもちろん、上空からの俯瞰撮影によって危険箇所も一目で確認することができるようになったと言います。

作業にかかるコストの低減、作業時間の効率化に加えて作業にあたる人の危険性が大きく低減され、またこれまで人の目が行き届かなかった部分の点検が可能になるなど、ドローンを活用することによってインフラ点検は大きく変わろうとしています。

冒頭でも触れたように、日本のインフラは老朽化が進んでいます。

天候に左右されてしまうという課題をクリアし、インフラ点検におけるドローンの導入が普及することを期待しましょう。

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