<アメリカ>教育現場に持ち込まれる「ドローン」

更新日: 2017.08.31 公開日: 2017.08.31
img

ケンタッキー(Kentucky)州南東部の21の学校区において教育制度改善を支援する非営利団体であるケンタッキーバレー教育組合(KVEC)は、科学者や起業家やがドローン関連の発明・事業をブラッシュアップし、また学生たちの開発会社への就職支援を行い、航空宇宙産業を新たなステージに押し上げるため、同州ハザードに2500万ドル相当のドローン試験場を建設することを目標としています。

旧来ケンタッキー州は石炭産業により栄えてきましたが、安価な代替品である天然ガスの台頭と工場操業費の高止まりの影響を受け、2016年には同州の石炭生産は1934年以来最低の水準となりました。

長らくこの地域を支えてきた産業の衰退に直面し、KVECの試みは石炭産業の失速を支えるものとして注目されています。

また同時に、今後数年間でドローン関連の雇用が経済にもたらす影響が非常に大きくなることが予見されているため、KVECのようなビジネス創生プログラムはアメリカ各地に勃興しています。

ニュージャージーシティ大学の教育技術科教授であり、近著に『教育におけるドローン(Drones in Education)』を持つローラ・ジーグラー(Laura Ziegler)氏もまた、各種の教育機関でドローン関連技術が授業に統合される実験が始まっていることについて言及しており、アトランタの学校ではロボット工学カリキュラムの一部にドローン競技が含まれているなど、その方法は多岐に渡っているとも述べています。

KVECに立ち戻ると、KVECでは約2年前に航空学演習の改革を始め、9つの学校区の高等学校に航空宇宙学コースを開発し、飛行シミュレータとドローンキットを提供しました。

たとえば、とある航空宇宙学のクラスでは、生徒は木製の厚い板で風洞を作り、それを使って気流がどのようにドローンを支えているかを実験しました。

さらに生徒たちは飛行機の実際の挙動を見るために地元の空港へ赴くなど、体験を通して航空学の知識を確かなものにしたのです。

こうした授業をこれまでの学年度に受講した生徒の数は約150人にも上り、彼らが認可された商用ドローンオペレータとして就業するための連邦航空局のテスト合格に必要な知識を持って卒業できるよう、ゆくゆくは航空宇宙学カリキュラムを4年間にまで拡大したいと考えています。

さらに、より大きいスケールでKVECが準備を進めているものが、3,500フィートの滑走路と室内実験教室を備えた施設として設計されている『USAドローン空港』です。

計画実現のため、用地としてはいまは使われていない僻地の炭鉱を使用する見込みですが、プロジェクトは完了するまでに約2年かかり、KVECは資金の調達と助成金によって推定2500万$(約27億円)の費用を賄う見込みです。

しかし、ジーグラー氏は、教育の現場にドローンを組み入れるためにはいくつかの課題があることも示唆しています。

たとえば、ドローンを屋内で使用する際にはしかるべき保険に加入するためのコストが必要となり、また必要な知識を持っている教師の数が必ずしも十分ではないことも多いようです。

教室でドローンを飛ばすこと自体には商用のライセンスは必要ありませんが、実際にはいくつもの技術的ノウハウが求められることになります。

 

アメリカにおいてドローンは、不動産プロモーション用の空中映像を撮影し、農業のためのデータを収集し、捜索・救助活動をサポートし、建築家や建設会社の3Dマップを作成するなどすでに幅広い用途で活躍しています。

そしてUAEや中国など世界のどこかで、あるいはAmazonのような巨大な通販会社によって、消費者に製品を届けるための運搬手段としてもドローンが用いられるようになっています。

 

今後、ドローン利用を伴う経済効果はアメリカ国内だけでも数十億ドル規模となる見通しで様々な団体が動き始めており、次代にリードするため教育分野への投資も増加する傾向にあると言えそうです。

 

本記事はリンク先の記事を参考に作成されました 参考:https://www.theatlantic.com/education/archive/2017/08/the-value-of-bringing-drones-to-the-classroom/537150/』

利用目的からドローンに
ついて知る