大型ドローンの用途や価格相場とは?人気機種も一覧で紹介!

更新日: 2023.05.31 公開日: 2023.01.31
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現在流通しているドローンは100g未満の小型で軽量な機種もあれば、1kgをはるかに超える大型な機種もあり、用途に適したものを選ぶ必要があります。

小型ドローンは趣味目的の空撮や操縦練習に適している一方、大型ドローンはどんな用途に適しているのでしょうか?

今回は大型ドローンについて、主な用途や価格相場と共に詳しく解説いたします。

人気の大型ドローン機種もご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

大型ドローンとは

一口に「ドローン」と言っても、その形状やサイズ、重量は機種によって様々です。

サイズとしては小型・中型・大型の3種類に分けることができますが、その明確な定義は決まっていません。

しかし一般的には100g未満~200g程度で手のひらに収まるサイズ感の機体を「小型ドローン」、200~500g程度で小さすぎずとも持ち運びやすさが保たれたサイズ感の機体を「中型ドローン」と呼ぶことが多いです。

どちらも趣味目的の空撮に適している他、中型は高性能なモデルが多く映像制作や点検などの業務にも十分活用することができます。

一方で大型ドローンとは、主に1kg以上かつ産業目的で開発された高性能な機体のことを指します。

映画の撮影・配送・農薬散布などにおける業務活用を前提としており、用途に応じてカメラや農薬タンクなどを積載することが可能です。

小型・中型ドローンよりも飛行は安定していますが、機敏な動きを苦手とするため狭所での飛行には向いていません。

中には最大積載200kgの超大型ドローンも

多様な産業分野での活躍が期待されている大型ドローンは日々進化を遂げており、重い荷物も積載できるよう耐久性やパワーに優れた機体の数々が登場しています。

その中でも大きな話題となったのが、ドイツのベンチャー企業Volocopter社と世界最大級の農機メーカーDeere社が開発した「VoloDrone」です。

VoloDroneは最大200kgの積載が可能な農業用大型ドローンで、最大飛行距離40km・最高時速110kmと圧倒的な動力性能を誇ります。

農業用の薬剤タンクだけでなく、コンテナや災害救助に使う道具などの運搬も望めるため幅広い分野での活用が見込まれます。

大型ドローンには人が乗ることができる有人ドローンも

ドローンと言えば無人航空機というイメージが強いですが、実は人員輸送が可能な機体も存在します。

「自動操縦装置を備えた電動式の機体」という点が特徴で、乗員を必要としない次世代モビリティとして世界各国で開発が進んでいるのです。

国内でも政府と企業が一体となって有人ドローンの社会実装に向けて積極的に取り組んでおり、2023年度には有人ドローンを活用した事業の開始が目標となっています。

有人ドローンの詳細や機種などについてはこちらの記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

大型ドローンの主な用途

大型ドローンは、具体的にどのような分野で活用されているのでしょうか。

ここでは大型ドローンの主な用途をご紹介いたします。

空撮

ドローンによる空撮であれば、機体にカメラが備わった中型モデルでも十分なスペックを備えています。

しかし一眼レフカメラやシネマカメラなど、大きく重量があるカメラでの撮影が必要な場合は大型ドローンに積載するケースもあります。

特に映画やテレビCM、プロモーションムービーなど高いクオリティが求められる映像制作の際に大型ドローンが使われることが多いです。

その一方で、基本的にはカメラ機材の知識や撮影技術を身に付けたプロ仕様となっているため、個人的な趣味で行う空撮に活用することは適していません。

災害救助

ドローンは遠隔操作や自動操縦による飛行が可能なため、災害現場に人が立ち入らなくても被害状況を調査することが可能です。

具体的には機体に搭載したカメラで現場の状況を撮影のうえリアルタイムで映像を伝送し、調査員がモニターから状況を把握することができます。

他にも機体に消火剤を搭載して火災現場の消火活動を進めたり、赤外線カメラを搭載して災害現場から逃げ遅れた被災者を捜索したりなどの活用が可能です。

また、大型ドローンなら大型の物資を運搬することもできるため、陸路が遮断された被災地へ救援物資を運べるというメリットがあります。

物流分野

インターネット通販の需要が高まる近年、物流業界は人員不足や交通渋滞の慢性化、さらに再配達に伴う時間・労力の消費という問題を抱えています。

しかし多くの労働力を確保したところで、輸送トラックの往来が増えればCO2排出に伴う環境負荷への負担が懸念されます。

上記のような問題を解決するべく、物流の分野でもドローンが導入されつつあるのです。

ドローンは電動かつ上空を移動するため、交通渋滞の影響を受けず地球環境への負荷も抑えることが可能です。

自動操縦による運用も可能なので、人手不足をカバーできるというメリットもあります。

国内では、すでに数多くの企業が物流ドローンの開発やサービスの実証実験に取り組んでいます。

しかしその一方で、法規制や人や荷物の損害リスクを防ぐ環境整備などの課題が立ちはだかり、物流分野におけるドローンの本格的な実装はまだ時間がかかると考えられます。

農業

農業分野では、すでにドローンを活用する手法が広がりつつあります。

代表的な活用方法としては農薬散布で、ドローンを飛ばしながら機体に搭載したタンクから薬剤をミスト状に散布します。

従来は無人ヘリコプターや噴射器による農薬散布が一般的でしたが、無人ヘリコプターは運用コストが高く、噴射器は背負って使う必要があるため体に負担がかかることが難点です。

一方、ドローンであればヘリコプターよりも比較的低コストでの運用が可能かつ、操縦者は遠隔操作で体に負担をかけず農薬を散布することができます。

また、今後の技術開発における進化しだいでは肥料散布や播種、圃場・作物のモニタリングといった業務の活躍も可能です。

農業従事者の高齢化が進む日本の農業分野において、作業に伴う肉体的負担の軽減につながるドローンは需要が高まり続けることが見込まれます。

エンターテイメント

大型ドローンの存在は産業分野だけでなく、エンターテイメントの分野でも浸透し始めています。

2022年8月には、大型ドローンを使ったエンタメ企画を考えるアイデアソンが開催されていました。

空撮や点検など産業分野を中心に活躍している大型ドローンの可能性が、今後もさらに広がることでしょう。

他にも、近年はサッカー・ラグビー・スノーボード・スノーモービルなど様々なスポーツ中継にドローンが活用されています。

スピード感があり人の手による撮影ではカメラが追いつかないスポーツでも、上空を飛ぶドローンであれば選手全員の様子をカメラに収めることが可能です。

軍事

ドローンは軍事利用を目的に開発された機体もあり、海外の紛争地域では敵地の偵察や攻撃にドローンが使われている事例も存在します。

ドローンには人が乗って操縦する戦闘機とは違い、操縦者の命を危険にさらすことなく戦場での活動が可能になるという点が最大のメリットです。

また、戦闘機よりも目立ちにくく、防衛システムから探知されずに攻撃対象の施設へ侵入することもできます。

しかしその一方で戦闘とは無関係の民間人に向けて誤爆し、複数の死傷者を出してしまった事例も存在します。

操縦者にとって安全かつ低コストでの運用が可能な軍事用ドローンは、今後も世界各国で開発が続くことでしょう。

せめてもの対策として、無関係な人々を傷つけない機体を開発できるよう技術の進歩を望むばかりです。

大型ドローンを購入することはできる?価格はどれくらい?

小型・中型ドローンについては、ドローン専門店だけでなく通販サイトや家電量販店などで誰でも気軽に購入が可能です。

一方で大型ドローンを購入する場合、どのようにして買い求めれば良いのでしょうか。

ここでは大型ドローンの購入について、価格相場と共に解説いたします。

大型ドローンは個人でも購入することはできる

先述の通り大型ドローンは産業用途の機体として開発されたものが多く、操縦には一般的な小型・中型ドローンよりもはるかに高い技術レベルが求められます。

そのため個人が使用するケースは非常に少ないですが、購入すること自体は不可能ではありません。

ただし高額なドローンが多い

大型ドローンは特定の用途に支障をきたすことがないよう、高性能な仕様となっている機種がほとんどです。

そのため価格も相対的に高く、一般的な小型・中型ドローンよりも購入は難しいと言えます。

ただし、長期的に使用しない場合は「ドローンレンタル」を利用するという手もあります。

ドローンレンタルとはその名の通り決められた日数だけドローンをレンタルできるというサービスで、購入よりも低コストでドローンを導入することが可能です。

なお、レンタル業者によってはレンタル可能なドローンの機種が変わるだけでなく、法人向けなのか個人向けなのか、どちらも利用可能なのか…なども異なります。

個人で大型ドローンをレンタルしたい場合、事前にレンタル業者のホームページを確認したり問い合わせてみることをおすすめします。

業務用大型ドローンの価格相場

全体としては50万~300万円前後が相場となっており、通常販売ではなくメーカー見積もりのうえ購入というケースがほとんどです。

高額ではありますが、基本的にドローンの機体性能は価格と比例します。

つまり、価格の安さだけを重視して機体を導入すると効率よく運用することが困難となり、かえってコストパフォーマンスが悪くなりかねないということです。

ただし機能性に優れたドローンを導入すれば、他の航空機よりも比較的低コストでの運用が可能です。

総合的なランニングコストを考えると、ある程度の初期費用をかけて機能性・安全性ともに優れたドローンを購入した方が賢明と言えます。

運搬用大型ドローンの価格は車1台分くらいの価格になることも

産業用大型ドローンの具体的な価格は、どんな業務に適した性能かによって異なります。

例えば重量物の運搬が可能な大型ドローンは相応の耐久性と機能性を兼ね備える必要があるため、価格は高くても300万円程度かかります。

高性能なドローンほど高額になりやすく、機種によっては軽自動車と同等の価格がつくこともあるのです。

大型ドローンの中で人気・注目のドローン

ドローンについて産業分野における需要の高まりと合わせて、大型ドローンも多くの機種が登場しています。

ここでは、特に人気度・注目度が高い大型ドローンの機種をご紹介いたします。

DJI Matrice 600 Pro

DJIの産業用ドローンシリーズ「Matrice600」の上位グレードにあたる機種です。

Matrice600は6つのローターを搭載したヘキサコプター型のドローンであり、最大で6kgまでの撮影機材などが積載可能です。

同じくDJIが販売している大型3軸ジンバル「Ronin-MX」の装着に対応しており、DJIアプリとの連携が可能なことに加え、カメラの安定性をより向上させることができます。

また、GPSが届かない場所でも安定感のある飛行をサポートする「A3フライトコントローラー」を採用していることも特徴です。

産業用の大型ドローンとして、思わぬ墜落事故を防ぐための安全対策も抜かりなく施されています。

そんなMatrice600の機能をすべて継承しつつ、さらに飛行性能を向上させたモデルがMatrice600 Proです。

フライトコントローラーは「A3 Proフライトコントローラー」に変更となり、より精密な制御で飛行の安定性が向上しています。

冗長構成IMUには防振ボールが加わり、振動とノイズを低減する性能も強化されました。

機体にはアームとアンテナがあらかじめ組み込まれており、セットアップ時間が短縮したことに加え追加モジュールの取り付けも容易です。

Sony Airpeak S1

日本の大手総合電機メーカーであるSonyが開発したドローンとして、大きな話題となったプロ向け大型空撮ドローンです。

同じくSony製で8K撮影が可能な一眼レフカメラ「aシリーズ」を搭載しており、ダイナミックな撮影表現ができます。

プロペラは低回転で浮力を得るための空力特性を重要視し、Airpeak S1専用に開発。

ペイロード・障害物ブレーキ機能無効時で最高時速90kmに及ぶ優れた飛行性能も備えています。

また、クイックリリース機構を採用しているため簡単に着脱が可能です。

他にも小型・軽量・高トルクなブラシレスモーターや飛行制御システムも独自開発し、他の空撮ドローンを圧倒するエネルギー効率や耐風性能も兼ね備えています。

ALIGN RM48001XT M480L

有名なラジコンヘリメーカーであるALIGNにおいて、代表的な空撮ドローンです。

独自に開発された折りたたみ式のプロペラは、パワフルな飛行を可能とする大きさですがノイズが小さいという特徴があります。

ペイロードが大きいため、カメラをはじめ搭載可能な撮影機材が幅広いという点も魅力です。

GPS機能を搭載しており、飛行中に通信が途絶えた場合は自動的にホームポイントへ帰還する安心設計となっています。

GRIFF 135

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000028572.html

株式会社Drone Future Aviationより販売されている、世界最大級とも言われている大型ドローンです。

ノルウェーの大手ドローンメーカーGRIFFが製造している機体で、約30kgの圧倒的なペイロードを誇ります。

機体は密閉されたアルミニウム構造で、バッテリーが接続されてない場合にもホコリや水しぶきなどから電気部品を保護していることも特徴です。

衝撃吸収機能を内蔵した着陸装置も搭載されており、硬い路地で着陸しても機体に傷が付くことを防ぎます。

ペイロードを活かして建築・土木・災害現場における資材輸送の用途を想定して開発されましたが、アタッチメントを装着すれば農薬散布ドローンとしての活用も可能です。

DJI Inspire 2

DJIにおけるプロ仕様の空撮ドローンとして人気なシリーズ、「Inspire」の現行モデルです。

カメラは内蔵されていないため、高性能な撮影機材を搭載して空撮に臨むことができます。

搭載に対応しているカメラは「ZENMUSE X4S」「ZENMUSE X5S」「ZENMUSE X7」の3種類で、最大6K画質での撮影が可能です。

停止状態から5秒で時速80kmの加速が可能かつ最高時速は94km、連続飛行可能時間は最大27分と驚異的な動力性能を誇ります。

Inspire 1と比べてバッテリーがアップグレードされており、冬山など気温が著しく低い場所でも自己発熱型システムにより性能を最適化できる点も強みです。

デュアルバッテリーなため、片方のバッテリーに不具合が生じた場合はもう片方のバッテリーで飛行を維持しつつ、安全に着陸します。

また、「フライトオートノミー」という障害物センサーを搭載しており、前方なら最大30m先の障害物を検知することが可能です。(最大時速54kmまで対応)

上部の赤外線センサーは5mまで障害物の検知が可能で、狭所でも安全に飛行させることができます。

YOROI 12D1750F

出典:https://saitotec.com/products/katana/katana-12d1750f/

サイトテック株式会社が開発した、大型産業用ドローンです。

最大ペイロードは50kgと業界トップクラスの積載量でありながら、機体はカーボンシェル採用で軽量かつ優れた防水性・防塵性を兼ね備えています。

アーム部分は折りたたみが可能なので、収納や持ち運びも容易な点が魅力です。

また、2つの送信機による操縦に対応しており、片方のオペレーターから接続を切り替えれば別の場所に配置されたオペレーターと操縦を交代できることも大きな特徴です。

山間部など通信・電波状況が悪い場所で万が一制御不能になっても、片方のオペレーターと送信機で迅速に対応することができます。

運搬用リールとボックス・レーザー測量機・特殊カメラ・農薬散布機など多種多様なアタッチメントが用意されており、幅広い業務に導入可能です。

大型ドローンを飛行させるにあたり知っておきたいこと

様々な分野での活躍に期待されている大型ドローンですが、導入する前にドローンに関する法規制を理解しておくことが大切です。

飛行場所・飛行方法の規制

ドローンは主に「航空法」や「小型無人機等飛行禁止法」という法律で、以下の場所・方法での飛行が禁止されています。

飛行場所(航空法)

・空港の敷地内や周辺
・150m以上の上空
・人口密集地・緊急用務空域

飛行場所(小型無人機等飛行禁止法)

・国の重要施設の敷地や区域の上空
・国の重要施設の周囲おおむね300mの上空

飛行方法(航空法)

・夜間の飛行
・目視外の飛行
・人や建物などに対し30m以上近づきながらの飛行
・催し場所での飛行
・危険物(火薬類や毒物類など)を輸送する飛行
・ドローンから物件を投下する行為

なお、航空法で禁止されている場所・方法に該当する飛行は、国土交通大臣へ許可申請を行えば許容されます。

小型無人機等飛行禁止法の規制も施設の管理者や所有者本人やその人から許可を得た場合は適用されませんが、いずれにしても都道府県公安委員会等への通報が必要です。

上記の法律以外にも、飛行場所や飛行方法によっては河川法・民法・道路交通法・市区町村条例などに抵触する恐れがあるため、事前確認は必ず行いましょう。

大型ドローンは機体登録が必要

航空法では、重量が100g以上のドローンを飛行させる場合「機体登録」が必要です。

ドローンの所有者に関する情報や機体情報を国土交通省に申請し、個別IDが交付されたら登録完了となります。

もしも登録していない機体を飛行させた場合、50万円以下の罰金または1年以下の懲役が科されます。

重量が100g未満の大型ドローンは存在しないため、機体登録が絶対に必要になることは覚えておきましょう。

大型ドローンの免許について

基本的に、ドローンは機種に関わらず無免許での操縦が可能です。

ただし2022年12月5日よりドローンの国家資格制度が新設され、資格取得者は「第3者がいる上空での飛行」や「目視外での飛行」が国土交通大臣の許可申なしでもできるようになりました。

業務で大型ドローンを活用する予定の方は、許可申請の手間を削減するためにも受験を検討しておくと良いでしょう。

試験は2023年1月に予定されており、国から認定を受けた講習機関(ドローンスクール)に受講のうえ受験するか、独学で受験するかを選ぶことが可能です。

しかしドローンの飛行には法規制や機体の仕組みといった座学だけでなく、安全に操縦するための技術も求められます。

基礎知識・技術をしっかりと身に付けて試験に臨むなら、あらかじめドローンスクールに受講しておくことをおすすめします。

まとめ

「大型ドローン」の明確な定義はありませんが、一般的に重量が1kgかつ産業用に開発された高性能なドローンのことを指す場合が多いです。

空撮だけでなく災害救助・物流・農業・エンターテイメントなど幅広い分野で活用されており、様々な企業から分野ごとに特化した大型ドローンの新機種が販売されています。

業務の効率化や人手不足の補填といったメリットがある大型ドローンですが、実際に導入する際は法規制について十分に理解を深める必要があります。

基礎知識・技術ともに独学では身に付けることが難しいため、きたる国家試験実施の時期を見据えてドローンスクールを受講しておくと良いでしょう。

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