「密猟者を見つけ次第射殺する」
これは以前タンザニアで行われた密猟者掃討作戦です。
密猟はいま世界中で大きな問題になっており、絶滅寸前の動物もいます。
そこで、この問題を解決する手段として、ドローンに注目が集まっています。
いま世界中で問題になっている密猟
私たちが日本で平穏に暮らしている間にも、世界では様々な問題が起きています。その一つが「密猟」です。
世界自然保護基金(WWF)は、「2012年、密猟はアフリカとアジア地域を中心に増加しており、
象牙やサイの角、トラの骨などの取引水準が最悪のレベルに達している」と発表しています。
そして、現在も密猟者の数は一向に減る気配はありません。
なぜ、密猟は減らないのでしょうか。
それは、象牙やサイの角などはステータスシンボルとして、高額売買されているからです。
実際、タイでは違法に持ち込まれた象牙が顧客向けのブティックで普通に売買されている光景も目にします。
もちろんこれだけ密猟が問題になっているので、何も対策が取られていないというわけではありません。
たとえば、ケニアやアフリカのザボンなどでは、「違法取引の根源を断つ」という意志の元、
国内にある全ての象牙の在庫が焼却処分されました。
しかし、どれだけ対策をとったとしても高額取引は続いているため、
「密猟の数は減らず、動物たちは殺され続ける」という状況は変わっていません。
ドローンを活用して密猟者を捕まえる
そこでいま、密猟者たちからの動物保護を目的に「ドローンの活用」が進められています。
これまで密猟者を探す主な方法は、車を使ってのパトロールでした。
しかし、野生動物が暮らす場所は広大なため、目視で探すと非常に大変です。
また、ヘリコプターを使って密猟者を探す試みも行われました。
ですが、ヘリコプターでの監視は1回飛ばすと非常に費用がかかる上に、
機体音が大きいため密猟者に気づかれてしまう恐れもあります。
では、ドローンを使えばどうでしょうか。
高性能カメラを搭載した複数のドローンを常に上空に飛ばしておけば、
これまでよりも広い範囲で監視可能になり、密猟者への無言の抑止力としても役立ちます。
また、自動運転で飛行可能なため手間もかからず、コストも抑えることができます。
さらに、機体音もヘリコプターに比べると小さく、密猟者に気づかれにくいといったメリットもあるのです。
ドローンは動物たちにとってストレス?
ドローンを活用した密猟者の監視は、一見メリットがとても多いように感じられますが、問題点も指摘されています。
それは「ドローンが野生動物にストレスを与えるのではないか」という点です。
アメリカ・ミネソタ州では、「ドローンが動物に及ぼす影響」を調べるために、
プロペラを4つ搭載した大皿くらいのドローンを野生のクマの上で飛行させる実験が行われました。
その結果、「ドローンがクマの上空を飛ぶと、心拍数が急上昇する」ということがわかりました。
中には心拍数が一分間で39から162と400%以上増加したクマもいたのです。
この結果を受けて、「ドローンの飛行は動物の体に負担をかけ、ストレスになっている恐れがある」と指摘されました。
しかし、一方で「野生動物たちが普段耳にしない音を聞いたら心拍数が上がるのは自然な反応。
警戒の一種なのでストレスにはならない」といった意見も出ています。
ただしいずれにせよ、ドローンの飛行は動物たちに良い影響を与えていないことは確かなので、
今後は動物たちにストレスをなるべくかけない「静かで高性能なドローン」が求められています。
ドローンの活用は、密猟者対策には非常に有効ですが、
一方で動物たちにストレスがかかるという危険性も示唆されています。
動物たちにストレスをかけないで密猟者たちを監視していくためにも、
今後は小型で飛行音の小さいドローンが求められています。