さまざまな分野で活用が進められるドローンですが、中でも屋根点検の分野で積極的な導入が進められています。
他の分野と比較して普及が進んでおり、比較的導入ハードルが低いことや、導入するメリットが大きい点が特徴として挙げられます。
今回はドローンによる屋根点検のメリット・デメリットを解説します。
ドローンで屋根点検を行う流れや費用など、気になるポイントも詳しくみていきましょう。
ドローンによる屋根点検とは?
ドローンによる屋根点検とは、ドローンを屋根の上で飛行させ、搭載したカメラで屋根を撮影することで、破損やひび割れ、劣化などの点検を行う作業のことです。
作業員が屋根に上って点検を行う必要がないため、足場を組む必要がなく、高所での危険な作業も避けられます。
従来の方法よりも効率性が高められ、作業員の安全性が確保できるため、ドローンで屋根点検を行う業者も増えています。
ドローンによる屋根点検の7つのメリット
ドローンによる屋根点検のメリットは以下の7点です。
- 短い時間で作業が完了する
- 細かい部分の点検が可能
- 屋根を傷める心配がない
- 安全に点検ができる
- 点検できる屋根に制限が少ない
- 業者と一緒に屋根の状態を確認できる
- 赤外線カメラを使えば蓄熱状態もチェックできる
では、1つずつ詳しくみていきましょう。
①短い時間で作業が完了する
従来の屋根点検では、建物の構造に応じて足場を組む必要がありました。
ドローンを使えば、そのような必要もなく、屋根の上を飛行してカメラで撮影するだけで済むため、今までよりも短時間で作業が完了します。
一般的な住宅であれば、30分程度で作業が完了するため、スケジュールも組みやすいでしょう。
②細かい部分の点検が可能
ドローンに搭載された高性能なカメラを使えば、気になる箇所をズームして、細かい部分の点検もできます。
小回りの効く飛行ができるため、広範囲に渡る点検も可能です。
③屋根を傷める心配がない
従来の屋根点検では、作業員が屋根の上で作業をするため、屋根が傷む可能性がありました。
ドローンであれば、屋根との接触もなく点検ができ、屋根を傷める心配もありません。
④安全に点検ができる
ドローンによる屋根点検では、作業員は地上でドローンを操縦するのみなので、安全に作業が行えます。
従来の方法だと、屋根の上で作業をするため、転落などのリスクがありました。
ドローンを導入すれば、作業員の安全性を高め、効率的な作業が可能になります。
⑤点検できる屋根に制限が少ない
建物の構造的に作業員が上れなかったり、屋根の勾配が急すぎたりする場合でも、ドローンであれば難なく点検が可能です。
従来の方法では、作業員が屋根に上る必要があり、建物の構造によって制約があったのですが、ドローンであれば建物に起因する制限はありません。
⑥業者と一緒に屋根の状態を確認できる
ドローンで点検をしている最中は、作業員の手元のモニターに状況が映し出されているため、一緒に屋根の状況を確認できます。
作業員の説明を受けながら、屋根のチェックができるため、具体的な状態を理解しやすくなるでしょう。
⑦赤外線カメラを使えば蓄熱状態もチェックできる
ドローンに赤外線カメラを搭載すれば、屋根の蓄熱状態もチェックできます。
例えば、屋根に太陽光パネルを設置している場合、故障などで異常な発熱をしていても、ドローンに搭載した赤外線カメラを使えば検知が可能です。
ドローンによる屋根点検の5つのデメリット
ドローンによる屋根点検のデメリットは以下の4点です。
- 騒音で近所迷惑になる
- ドローンを飛ばせない可能性がある
- 天候に左右される
- 触診による点検はできない
- 破損があっても応急処置はできない
デメリットもあるので、事前に把握した上で作業をしなければなりません。
①騒音で近所迷惑になる
ドローンを飛ばすと、それなりの駆動音がするため、騒音による近所迷惑に注意しなければなりません。
屋根点検を行う前に近所の方に挨拶をして、了承を得なければなりませんし、作業は必要最小限の時間で済ませる必要があります。
②ドローンを飛ばせない可能性がある
建物の立地によっては法規制に引っかかってドローンが飛ばせないケースがあります。
航空法や小型無人機等飛行禁止法に該当すると、飛行の前に許可申請を行う必要がありますし、近所の方の了承が得られなければ飛行はできません。
その他にも、雨や強風といった悪天候でもドローンが飛ばせない場合もあります。
③触診による点検はできない
ドローンによる屋根点検はあくまでカメラを通して目視による確認しかできません。
実際に屋根を触って、ガタ付きや劣化状況のチェックはできないため、屋根の状態に応じて使い分けが必要です。
④破損があっても応急処置はできない
屋根の点検を行って破損箇所があった場合でも、その場で応急処置ができるわけではありません。
ドローンでできるのは破損などの発見のみで、必要な措置は別途行う必要があります。
ドローンによる屋根点検の流れ
ドローンによる屋根点検を行う流れを解説します。
大まかな流れは以下の通りです。
では、それぞれの手順を詳しくみていきましょう。
①点検業者に依頼をする
まずはドローンによる屋根点検を行っている業者に問い合わせをします。
業者が提供する作業内容や費用を確認して、見積もりなどを受けてから依頼を出してください。
②点検業者が周辺の調査を行う
屋根点検を行う前に業者による周辺調査が行われます。
点検を行う立地によって、法規制で飛行が禁止されている場合もあるため、調査をした上で必要な許可申請を行います。
③作業スケジュールを決める
ドローンによる屋根点検が可能であれば、具体的な作業のスケジュール決めを行います。
作業当日が悪天候だった場合、ドローンが飛ばせない可能性もあるため、予め予備日を設けておくといいでしょう。
また、作業当日は立ち会いが必要になるため、自分の予定も開けておきましょう。
④点検作業を行う
業者が自宅を訪れてドローンを飛ばし、点検作業を開始します。
作業の際は、ドローンが撮影した映像をモニターを通じて確認できます。
⑤点検の結果を受け取る
作業が終了したら、点検の結果を受け取ります。
破損や劣化などが見つかった場合には、別途修理・修繕の見積もりを作成してもらうこともできます。
自分でドローンを飛ばして屋根点検をする方法
ドローンを所有している方であれば、自分で屋根点検を行うこともできます。
自宅の上でドローンを飛ばして、カメラで撮影をするだけなので、操縦に慣れている方であれば手軽にできます。
ここでは、自分でドローンを飛ばして屋根点検をする方法を解説します。
①用意するもの
ドローンによる屋根点検で必要なものは以下の通りです。
- ドローン本体
- モニター(タブレットなど)
ドローン本体はホビー向けのドローンでも十分です。
ただ、一定のカメラ性能が必要になるため、DJIの「Miniシリーズ」や「Airシリーズ」程度の機種を使いましょう。
②資格は必要?
ドローンによる屋根点検を行うのに特別な資格は不要です。
資格は不要ですが、操縦技術がないと落下や衝突などの事故を招くので、しっかりと練習を行ってください。
③作業の流れ
作業を行う際には、まず最初に法規制に引っかかってないかを確認します。
機体重量が100g以上の場合、航空法で定める以下の飛行は規制されているため、許可申請が必要になります。
【航空法で特定飛行に該当するもの】
飛行する空域 | ・空港などの周辺 ・人口集中地区の上空 ・150以上の上空 ・緊急用無空域 |
飛行の方法 | ・夜間での飛行 ・目視外での飛行 ・人または物件との距離を確保できない飛行 ・催し場所上空での飛行 ・危険物の輸送 ・物件の投下 |
法規制の確認が終わったら、近所の方に挨拶をして、ドローンを飛ばす際の騒音に関する了承を得るようにしましょう。
準備が終わったら、ドローンを屋根の上で飛行させて、点検を行っていきます。
周辺の安全を確認しながら、慎重に点検を完了させてください。
ドローンによる屋根点検にかかる費用は?
ドローンによる屋根点検を依頼する費用は1〜2万円程度です。
建物の構造や屋根の面積によっても費用は異なりますが、足場などを組む必要もないため、従来の方法よりも安価で依頼できます。
ドローンによる屋根点検の3つの注意点
ドローンによる屋根点検を行う際は以下の3点に注意してください。
- 目視や触診の方が適している場合も多い
- ドローンの屋根点検を謳った詐欺に気を付ける
- 落下や衝突で近所に迷惑をかける可能性もある
注意点を確認した上で、ドローンを使うかどうかを決めてください。
①目視や触診の方が適している場合も多い
屋根の状態によっては、ドローンよりも目視や触診による点検の方が適している場合があります。
実際に触って点検を行えば、屋根のガタ付きなども調べられるのですが、カメラで上空から撮影するだけでは判別できません。
屋根の表面の破損や劣化であればドローンでも点検できますが、屋根材の内部の劣化やガタ付きなど、より近くで調べたり、触ったりしなければ分からない場合は、従来の方法で点検を行ってください。
②ドローンの屋根点検を謳った詐欺に気を付ける
最近では、ドローンによる屋根点検を謳った詐欺も横行しているので注意が必要です。
よくある手口では、いきなり自宅を訪れて「屋根の無料点検をさせてください」と言って、点検を行った後に「修理が必要です」と不安を煽るやり方があります。
従来の屋根点検でも、このような手口は横行していましたが、ドローンというワードを出して食いつかせてくるケースもあるので注意が必要です。
③落下や衝突で近所に迷惑をかける可能性もある
ドローンで屋根点検をする際には、落下や衝突による事故に注意しなければなりません。
近所の外壁に衝突したり、人がいる場所に落下したりすると、損害賠償に発展する可能性もあります。
屋根点検をする際は、必ず近所の了承を得た上で、周辺の安全に配慮しなければなりません。
ドローンによる屋根点検に関するよくある質問
ドローンによる屋根点検に関するよくある質問をまとめました。
ドローンによる屋根点検の頻度はどれぐらいが良い?
屋根の定期点検は5年に1回を目安に受けるのがおすすめです。
5年に1回が難しい場合でも、10年に1回は必ず点検を受けるようにしましょう。
屋根は日常的に見ることがない上に、雨風に晒されて少しずつ劣化が進んでいきます。
知らず知らずのうちに破損が進んでいる可能性もあるので、必ず定期的な点検を受けてください。
ドローンによる屋根点検でかかる時間はどれぐらい?
ドローンによる屋根点検は30分程度で完了します。
足場などを組む時間が不要な分、通常の屋根点検よりも短時間で作業が終えられます。
ドローンによる屋根点検をするのに資格は必要?
ドローンによる屋根点検をする上で資格を取得する必要はありません。
作業自体に資格は不要なのですが、例えば、ドローンの国家資格を取得していると、飛行許可の申請手続きが省略できるなど、業務をスムーズに進められます。
国家資格だけでなく、民間資格を取得すれば、顧客に対してスキルや専門知識の証明になるため、初対面でも信頼が得られるでしょう。
また、ドローンスクールによっては、屋根点検の講座やカリキュラムを展開しているスクールもありますので、屋根点検に特化した知識と技術を身につけることができます。
ドローンで屋根点検をすると何が分かる?
ドローンで屋根点検を行うと、以下のようなことが分かります。
- 瓦屋根の破損やひび割れ
- 屋根の穴あき
- 棟の剥がれや錆
- 屋根表面の劣化
ドローンを使うと、屋根の表面的な劣化や破損が調べられます。
一方で、目視や触診をして初めて分かることについては、ドローンで調べられません。
例えば、屋根材のガタ付きや雨漏り箇所を調べるなどは、ドローンだと対応できないため、別途作業をする必要があります。
9.まとめ
ドローンによる屋根点検について解説しました。
主なメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | ①短い時間で作業が完了する ②細かい部分の点検が可能 ③屋根を傷める心配がない ④安全に点検ができる ⑤点検できる屋根に制限が少ない ⑥業者と一緒に屋根の状態を確認できる ⑦赤外線カメラを使えば蓄熱状態もチェックできる |
デメリット | ①騒音で近所迷惑になる ②ドローンを飛ばせない可能性がある ③天候に左右される ④触診による点検はできない ⑤破損があっても応急処置はできない |
ドローンを使って屋根点検をすれば、作業員の安全性を確保しながら、効率的な作業が可能になります。
しかし、一方でドローンでは点検できない部分もあるため、従来の方法と使い分けながら活用するのがいいでしょう。