2022年12月に施行された改正航空法では、ある飛行を実施する際の「飛行日誌の作成」を義務づけています。
作成を怠ると罰金が科せられるおそれもあるため、対象者の方は注意が必要です。
そこで今回は、ドローンにおける飛行日誌とは何か?誰が・どんなとき・何を書けば良いのか?どんな記載項目があるのか?などについて、分かりやすく解説いたします。
ドローン飛行日誌とは
ドローンの飛行日誌とは、ドローンを飛行させる人が飛行・整備・改造などに関する情報を記載する日誌のことです。
飛行中にトラブルが起きたとき、その原因特定や再発防止に活用できるようにするため、対象者に作成が義務付けられています。
作成方法としては紙に黒または青のボールペンで記載するか電子データを作成するかの2通りで、どこかに提出する必要はありません。
ドローン飛行日誌の制度詳細
ドローンの飛行日誌は航空法で定められた制度であり、どんな人が・何を書けば良いのかについて理解しておく必要があります。
飛行日誌の作成が義務付けられる対象者
ドローンの飛行日誌が義務付けられているのは、航空法で「特定飛行」とされている飛行方法を実施する人です。
特定飛行とは、航空法で規制されている以下4つの場所・6つの方法でドローンを飛ばすことを指します。
【飛行場所】
- 150m以上の高さの上空
- 空港周辺
- 人口集中地区(DID地区)上空
- 緊急用務空域
【飛行方法】
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 人・物・車などから30m未満の距離での飛行
- 催し場所での飛行
- 危険物輸送
- 物件投下
なお、対象者が飛行日誌の作成を怠ると航空法に基づき10万円以下の罰金が科せられます。
記録すべき内容
大きく分けて「飛行記録」「日常点検記録」「点検整備記録」という3つの記録から成り立っています。
各項目の具体的な記載内容は、以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
飛行記録 | ・ドローンの登録記号 ・飛行年月日 ・飛行させた人の氏名 ・飛行概要 ・離着陸の場所と時刻 ・飛行時間 ・安全に影響があった事項 など |
日常点検記録 | ・ドローンの登録記号 ・各項目を点検した結果 ・日常点検に関する補足事項(備考) ・日常点検時に発見した不具合 など |
点検整備記録 | ・ドローンの登録記号 ・点検整備を実施した年月日 ・総飛行時間 ・点検、修理、改造などの内容 ・実施理由 ・実施場所と実施者 など |
ドローン飛行日誌の保管義務
ドローンの機体情報を国土交通省に登録している場合、飛行日誌の記録と保管を続けることも義務付けられています。
もしもドローンを他の人へ譲り渡す場合は、新しい所有者・使用者が飛行日誌の記録と保管ができるように、元の所有者・使用者から以下の情報も渡しておく必要があります。
- 総飛行時間に関する情報
- 日常点検記録のすべて
- 点検整備記録のすべて
また、作成した飛行日誌は3種類すべての記録を常に携行する必要があります。
携行していない場合も罰金の対象となるため、注意しましょう。
ドローン飛行日誌の書き方
ドローンの飛行日誌には書くべき項目が決まっていますが、作成方法は基本的に自由です。
国土交通省が公開しているフォーマットを印刷して直接書き込んだり、作成アプリで電子データとして作成したりするといった方法があります。
ここでは、ドローンの飛行日誌の具体的な書き方について解説いたします。
飛行日誌の共通ルール
飛行日誌は、作成方法にかかわらず飛行記録・日常点検記録・点検整備記録に含まれる各項目の記載が必要です。
また、それぞれの記録に記載するタイミングも以下の通り異なります。
- 飛行記録:ドローンの飛行後
- 日常点検記録:ドローンの飛行前後に行う点検のとき
- 点検整備記録:メーカーが定めている点検推奨期間(なければ20時間の飛行ごと)
各記録はドローン1台につき1部ずつ作成する必要があり、例えば2台のドローンを飛行させる場合は合計で6部の記録簿に記載することになります。
次項より、国土交通省で公開されているフォーマットをもとに各記録の書き方をご紹介いたします。
飛行記録の書き方
飛行記録は、ドローンを飛行させるたびに記載が必要なものです。
先述した各記録に含まれる必要項目の記載箇所と記載内容は、以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
①無人航空機の登録記号 | 国土交通省への機体登録時に交付された「JU」から始まる記号 |
②飛行年月日 | 飛行した年月日(西暦) |
③飛行させた者の氏名 | ドローンの操縦者の氏名 ※ドローンの操縦資格を持っている場合は技能証明番号も記載 |
④飛行概要 | 飛行させた目的やどんな特定飛行を行ったのかなど |
⑤離陸場所と時刻・着陸場所と時刻 | 場所は離陸地点と着陸地点の経度と緯度か、正確に位置を把握できる地名や固有名称などの情報を記載 |
⑥飛行時間 | 離陸から着陸までにかかった時間(分単位) |
⑦総飛行時間 | これまでの飛行時間の合計(1分単位) |
⑧飛行の安全に影響のあった事項 | 飛行の安全に影響が出た場合や出るおそれがあった場合、その内容やそれにかかわる飛行前後の状況などを記載 |
⑨記事 | 飛行に関して不具合が発生した場合、その内容と処置について記載 ・発生年月日:不具合が発生した年月日(西暦) ・不具合事項:不具合の内容 ・処置その他:発生した不具合に対して実施した処置の内容 ・確認者:不具合に対する処置を行った人の氏名 |
日常点検記録の書き方
日常点検記録は、飛行する前と飛行した後に必ず記載します。
メーカーからフォーマットが指定されている場合は、それを使用しましょう。
日常点検記録の記載箇所と記載すべき内容は、以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
①無人航空機の登録記号 | 国土交通省への機体登録時に交付された「JU」から始まる記号 |
②結果 | 左側の点検項目欄にある各箇所の点検を実施した結果を記載(異常がなければ「正常」、異常があれば「異常」といった書き方) |
③備考 | 点検に関する補足事項を記載 |
④特記事項 | 日常点検で見つけた不具合の内容、飛行後点検の結果など記載 |
⑤実施場所・年月日・実施者 | 日常点検を実施した場所・年月日(西暦)・実施した人の氏名を記載 |
なお、日常点検でチェックすべき項目の詳細は機種によって変わる場合がありますが、メーカーから指定がなければ国土交通省が公開している「航空局標準飛行マニュアル」を参考にすれば問題ありません。
ただし参考にすべき航空局標準飛行マニュアルは飛行場所・用途によって異なります。
点検整備記録の書き方
点検整備記録は、日常点検とは別にメーカーから推奨されたタイミングまたは20時間の飛行ごとに行う必要があるメンテナンスの際に記載するものです。
記載が必要な箇所とそれぞれの内容は、以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
①無人航空機の登録記号 | 国土交通省への機体登録時に交付された「JU」から始まる記号 |
②実施年月日 | 点検作業を開始した年月日(西暦) |
③総飛行時間 | 【機体認証を受けている場合】 前回の機体認証に係る検査を受検する際に実施した点検整備以降の総飛行時間 【機体認証を受けていない婆】 点検整備作業を実施した時点での総飛行時間 |
④点検、修理、改造及び整備の内容 | 点検整備作業の内容(交換した装備品の名称と部位、定期点検の実施記録、カメラなど後付け装置の取り付け・取外し など) |
⑤実施理由 | 点検整備を実施した理由 |
⑥実施場所・実施者 | 点検整備を実施した場所と実施した人の氏名 |
⑦備考 | 次回実施予定の点検整備の期限に関する補足事項 |
ドローン飛行日誌に関するよくある質問
最後に、ドローンの飛行日誌に関してよくある質問を回答と一緒にまとめました。
ドローンの飛行日誌は必要ですか?
ドローンの飛行日誌は、航空法で「特定飛行」と定められた飛行形態を実施する場合に必要なものです。
飛行記録・日常点検記録・点検整備記録をドローン1台につき1部ずつ作成のうえ、保管・携行しなければなりません。
ドローンの点検記録など飛行日誌のアプリはありますか?
iOS・Android共に、スマホから簡単に飛行日誌を作成できるアプリもあります。
【iPad・iPhone向け】
ドローンノート-UAV(無人航空機)飛行日誌の簡単作成アプリ
【Android向け】
ドローンノート-UAV(無人航空機)飛行日誌の簡単作成アプリ
また、JUIDA会員なら飛行ログとの自動同期機能や掲載項目のカスタマイズ機能がある、会員向けサービス「BLUE SKY」もおすすめです。
ドローンの飛行日誌のテンプレートはありますか?
ドローンの飛行日誌のテンプレートは、国土交通省がPDF形式で公開しています。
また、一般社団法人DRC協会でもExcel形式のフォーマットが配布されているため、パソコンで作成したい場合は活用すると良いでしょう。
まとめ
航空法で規制されている場所・方法(特定飛行)でドローンを飛ばす場合、航空法に従い「飛行日誌」を作成のうえ保管・携行する必要があります。
飛行日誌は3種類の記録で構成されており、それぞれの適切なタイミングで必要事項に記載します。
媒体に関する細かな取り決めはないため、紙に直接記載したりアプリを活用して電子データとして作成したり、自分にとって書きやすい方法で作成してください。
作成方法については国土交通省のホームページにも明記されているため、併せて確認しておきましょう。