日本における農業の課題は深刻で、問題の解決が急務になっています。今回は日本の農業の問題の背景と、農業用のドローンの開発と研究がどのような影響を与えるかを考察していきます。
ドローン市場では農業利用が圧倒的に多い
ドローンの農業利用率は非常に高くなっています。最近では他の市場での普及も広がり始めましたが、2015年度はおよそ8割が農業での利用でした。
農薬散布目的でドローンを使うことから始まり、ドローンの開発が進むにつれて土壌を分析したり種をまくなどの使い方もできるようになっています。
日本でも農林水産省が「スマート農業」として、ロボット技術やICTを活用した農業の実現のための取り組みを始めています。
スマート農業の中でもドローンの利用は推奨されており、スマート農業が浸透していくにつれてますますドローンの利用率が高まることが予想されます。
日本における農業ビジネスの課題と背景
現在の日本の農業の事態は深刻です。農林水産省の農村の現状に関する報告によれば、65歳以上の高齢者が農家人口に占める割合はおよそ4割となっています。
平均年齢も66.8歳と高く、農業は高齢者によって支えられている姿が浮き彫りとなっています。若い世代の新規参入はまだまだ少ないのが現状です。農業の新規参入問題と人手不足への対応が急務となっています。
若者が農業を目指さない理由は、敷居の高さと人生観の変化にあるでしょう。実家が農家である場合を除いて、ゼロから農業を始めるための壁が高すぎるのです。
農業には莫大な資金が必要です。農業を始めるまでに農機具や倉庫等の設備を一式揃えて農地を借りるだけで、何百万、何千万円とかかります。ビジネスとして軌道に乗るまでの間の生活費も必要です。資金がなければ新規参入は困難でしょう。
また、実家の農家を子どもが継ぐとは限りません。若い世代は大学全入時代になっており、実家の農家を継ぐ人ですら大学へ進学することが当たり前になってきています。
大学で様々な価値観に触れて、農家を継ぐ以外の道に進むことを決める人もいるでしょう。個人が尊重されるような時代ですから、必ずしも家が農家だから農家にならなくてはいけない、という時代ではなくなったのです。
逆に実家が農家でなくても農業というビジネスに興味がある人もいるはずです。がしかし、経済的な理由で新規参入までに至らないのです。
ドローンの活用で農業の活発化が期待される
ドローンを農業の中で活用していくと、経済面の負担軽減と従来の農業のイメージを変えることができるかもしれません。
農薬散布の他、土壌の分析や種まき、成長・健康状態のチェックなど、工数のかかる仕事をドローンに任せるようになってきています。今後はもっと有用な活用方法が開発されていくことでしょう。
2016年9月には農業用として小型で低価格なドローンも開発されました。普及に向けて低価格のドローンが増えてくとすれば、活用方法が増えるに従い大幅に設備投資にかける資金を抑えることができ、新規参入の敷居が下がることが予想されます。
また設備投資の資金が減るだけではなく、肉体労働が減るのに反比例して生産性も上がるようになります。
力がなくても農業ができるようになれば、女性や若者でも積極的に参入しやすくなるでしょう。農業に興味はあっても重労働は避けたいという層を、ドンドンと取り込むことができるようになるということです。
2020年は農業の大転換期ともいわれています。ドローンなど活用により農業がデジタル化することで、若い世代の新規参入と生産性向上による人手不足の解消が期待できるようになるでしょう。今後の農業用ドローンの更なる開発と研究が期待されます。
日本の農業の課題である新規参入と人手不足の問題は、農業用ドローンの開発に伴って解決していくかもしれません。農業のデジタル化は経済的、肉体的な負担減少と生産性の向上に繋がっていくでしょう。