ドローンを使えば効率的に農薬散布ができる?自動飛行のドローンも登場

更新日: 2020.01.04 公開日: 2020.01.04
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農薬散布は大変な労力のかかる作業であり、農家にとって負担になっています。しかし、近年では農薬散布にドローンが活用されるようになり、状況が少しずつ変わりつつあります。今回は、ドローンを使った農薬散布のメリットや自動飛行技術の開発状況について解説します。

目次

ドローンによる農薬散布のメリットとは?

日本は高温多湿で生態系が豊富で、多くの虫や菌が発生します。このため、農家は1年にわたって防虫・防除・殺菌といった対策をする必要があります。主な対策は農薬散布ですが、従来は主に手作業で行っていたため非常に時間と労力がかかり、大きな負担となっていました。

そこで、農家の負担を軽減する新しい方法として注目を集めたのがドローンによる農薬散布です。技術の開発が進み、既に実用化されています。後ほどご説明しますが、自動飛行できる農薬散布用ドローンも登場しています。

農薬散布用のドローンは、機種にもよりますが、時速約15km、散布幅約4mで飛行でき、10アールを1分くらいで農薬散布可能で、作業効率が大幅にアップします。ドローンを使えば、人力散布の5分の1くらいの時間で作業を終えられるとも言われています。

 

自動飛行も可能に?ドローンによる農薬散布に規制緩和の流れ

農薬散布用ドローンを飛ばそうとする場合、他の産業用のドローンとは異なり、航空法上の許可、承認に加えて、農林水産省が定めた「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」にも従わなければなりませんでした。

その指針により、「農林水産航空協会」という外郭団体からオペレーターとしての技能認定を受けなければならないとされていました。その技能認定を受けるには同協会が指定する教習施設で受講する必要があり、お金と時間がかかっていたのです。また、使用するドローンを同協会に機体登録する必要がありましたし、農薬散布前に事業計画書を国や都道府県に提出しなければなりませんでした。

しかし、2019年7月に農林水産省が「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」を廃止にしたため、以上の規制がなくなっています。今後は、航空法に基づいて国土交通省に飛行許可と承認を申請するだけで、農薬散布目的でドローンを飛ばすことができるようになりました。

この規制緩和により、農家が農薬散布用ドローンを導入しやすくなり、今後ドローンの活用がさらに広まっていくことが期待されています。

前述の通り、規制緩和前は、使用するドローンを農林水産航空協会に登録しなければなりませんでした。このため、メーカーは同協会にドローンを持ち込んで一定の安全性能を備えているかの試験を行っていたのですが、同協会が最新技術の評価について消極的であったため、ドローン開発の意欲がそがれている状況にあったのです。

例えば、一般的な産業用ドローンは、バッテリー残量が少なくなったり、コントローラーとの接続が切断されたりすると、自動で離陸地点に戻る機能が付いています。しかし、農林水産航空協会はこうした自動機能の安全性を認めなかったので、その技術を生かすことができていませんでした。

しかし、今回の規制緩和により、農薬散布用ドローンにさまざまなインテリジェント機能を付けることが可能になったので、開発競争が本格化し、自動飛行の技術が取り入れられていくことでしょう。

 

自動飛行の農薬散布用ドローンの開発状況

前の項目でご説明した通り、農薬散布用ドローンの技術開発が今後さらに進んでいくことが期待されていますが、既に完全自動飛行の性能を持つドローンが登場しています。

完全自動飛行の農薬散布用ドローンは、圃場の形をタブレットに登録すれば飛行経路を自動で生成してくれます。また、散布時にはタブレットの「開始ボタン」を押すだけで離陸から着陸まで完全自動で農薬散布をしてくれるという優れものです。

最近では、ドローンメーカーの「DJI JAPAN」と農薬メーカーの「シンジェンタジャパン」が協力し、茨城県龍ケ崎市の横田農場でドローン2機による自動航行での除草剤散布を実演しました。

実演では、オペレーター1人が見守る中、2機が飛び立ち、1機は田んぼの東南の角から、もう1機は東側中央から自動散布を開始しました。田んぼの北半分と南半分を2機で分担し、それぞれが自動飛行で4メートルの幅で除草剤を散布しながら往復しました。結果として、何と5分足らずで84アールの田んぼに散布することができました。

このように、複数台のドローンを完全自動飛行させる技術が既に開発されています。こうした自動飛行の技術が進歩して実用化が進めば、農薬散布の作業効率は格段にアップしていくことでしょう。