NBCニュースが、アメリカ連邦航空局の予算案について報じました。本予算案が可決された場合、アメリカ政府は個人用ドローンを撃墜できるようになります。
同法案は、アメリカの国土安全保障省とFBIが連携し、脅威とみなされる民間のドローンを追跡、撃墜することを認めるものです。アメリカ政府によると、「金銭的、または物理的な被害を生むと思われる不審なドローンを識別し、捕獲、あるいは撃墜する」とのことです。
同法案に対し、一部では、脅威の範囲が曖昧かつ広範であり、当局に与えられる権限があまりに大きすぎる”との声が上がっています。
アメリカの電子フロンティア財団に所属する、立法アナリストであるIndia McKinney氏は、この件について「この法案によって、言論の自由を脅かされることが懸念されます。また、不当な逮捕や拘束が発生することも考えられます。というのも、この法案に基づくと、商用か民間用かに関わらず、政府がドローンを監視することになっています」と危惧しています。
また、「そのため、ドローンを持つすべての人が危険にさらされていると言えます。もちろん、密輸等に使われる恐れのあるドローンは監視されて然るべきです。しかし、それに留まらず、ジャーナリスト達が撮影に使用するドローンも同様に監視されるのです。例えば、身寄りのない子供たちがいる少年院や、抗議デモ等撮影までもが監視されるということです」と、今後の懸念を語りました。
McKinney氏の懸念に対し、アメリカ自由人権協会の最高法律顧問であるNeema Singh Guliani氏は、「この法案によって、令状もなしに民間を監視することが正当化されてはいけません。ましてや、言論の自由を妨げる手段として利用されるべきではないでしょう」と、意見を表明しました。
また、McKinney氏は、以下の様に付け加えました。
「司法省と国土安全保障省は、すべてのドローンによって収集された画像や通信記録を傍受することができるようになります。これは、ドローンとその操縦者との間の通信に関しても同様です。これによって脅威とみなした機体を追跡することが可能となります」
Kirstjen Nielsen秘書官は、国土安全保障委員会宛の書簡において、脅威と判断したドローンの追跡を許可するよう求めました。
書簡には「市場に流通しているドローンを、テロリストや犯罪組織は様々な用途に利用しています。例えば、爆発物の投下や、化学兵器の運搬、通信の妨害、あるいは違法な監視活動などが挙げられます」と記載されていたとのことです。
一方、法執行機関では、すでにドローンを利用した監視を実行していました。
アメリカ自由人権協会のKade Crockford氏は、2017年にボストン警察が行った監視活動について公表しています。氏の投稿によると、ボストン警察は主に低所得層の黒人を監視する目的で、3機のドローンを使用しました。これに費やされた費用は17,454ドルで、日本円にして190万円ほどだと言われています。
また、ルーシーパーソンズ研究所のFreddy Martinez氏は、イリノイ州の下院で通過した法案について、「同法案は警察がドローンを幅広い用途で使用できるようになるものです。具体的には、抗議デモなどの大規模な集会の監視などに利用されます。また、その際に使用されるドローンは、顔認識システムを搭載した武装ドローンです」と言及しました。
Martinez氏はこの件について、FBIに新たな権力が与えられるような決議は、慎重に議論されるべきだと述べました。また、今回提出された法案については、法執行機関が容易に強大な権力を手にするものであると指摘しました。
また、「市民がドローンを悪用した例よりも、国土安全保障省やFBIがドローンによって人権の侵害につながる行為を実施した例の方が多いだろう」と、法案への不満をあらわにしました。
問題となっている法案は、早ければ2018年9月26日には可決されるということです。