2018年9月5日水曜日、ウクライナの国境警備が密輸に使用されたと思われるドローンを発見しました。
場所はウクライナとルーマニアの国境付近のHorvibtsi村で、クアッドコプターが村の樹木に引っかかっているところを発見しました。調査の結果、このドローンは無人航空機体を利用する密輸業者のものであると断定されたとのことです。
ウクライナ政府はプレスリリースにおいて、「ドローン等の航空機は、国境を越えたテロ行為にも利用されています。タバコ製品や麻薬、武器、弾薬等の密輸はその一部です」とコメントしています。
また、同政府によると、ウクライナの国境警備隊が、このように不法に放棄された航空機を発見したのは初めてではないそうです。2017年以降、An-2航空機が1機、ハンググライダー1機、及び、今回発見されたものとは異なるクアッドコプター1機が発見されています。
アメリカの技術誌“Popular Mechanics”では、この件を「このドローンは、成人男性が二人がかりでようやく運べるほどの大きさであることから考えて、市場で販売されているものではないと考えられます。タバコの密輸に利用するために自分たちで作ったものでしょう」と述べています。
さらに、「このようなドローンによる密輸は、一見すると大した問題には思えないかもしれません。しかし、ウクライナからヨーロッパの周辺国に密輸することで、密輸業者が得ている収入は莫大です。その額は推定で年間20億ドル。日本円にして2,200億円ほどの利益を、関税を払わずに手にしているのです」とも言及しました。
ドローンなどを利用した無人の密輸行為は、世界的に多くの国で行われており、その規模は巨大なものです。当然ながら、多くの密輸は失敗に終わり、厳しく罰せられています。しかし、発見されるまでの間に、多額の富を得ているグループがあるのもまた事実です。
長年、ウクライナはロシアと西欧の苛烈な紛争に巻き込まれています。そういった状況において、密輸は流動資産を換金できる数少ない手法となっています。
例えば、今年の初めには、ウクライナの国境警備員が密輸ドローンを追跡したところ、3人の密輸グループを発見し、国境警備員が密輸グループをゴム弾で制圧、警察の応援を受けて逮捕した事件が起こっています。
ドローンを密輸に利用する場合、大型の飛行機と比べて、少なくとも2つの利点があります。
1つ目は、ドローンを安価に購入できるところです。これはコストの低下によって、比較的容易に、誰もが密輸をできるようになるということを意味します。
2つ目は、発見の難しさにあります。ドローンは一般的な航空機のレーダーに感知されにくく、上空の不審な動きを地上から監視するシステムの目をかいくぐることもできます。
このような事態を受け、ウクライナ政府は2018年4月から、“Spectator-Mドローン”を導入しました。主な目的は、背後にロシアが関係している武装勢力の監視ですが、密輸などの民間の犯罪行為の監視にも役立つ可能性を期待しているとのことです。