陸上最大の生物・アフリカゾウが怖れるのは、ライオンでも、人間でも、ネズミでもありません。意外な事に、彼らが怖れるのは「ハチ」なのです。
ゾウはミツバチの羽音を聞くと、集団で逃げ出す事が確認されており、アフリカではゾウがハチを怖れる習性を利用して、「ゾウ対策」を実施する農家があるほどなのです。
アフリカでは、象牙の取引が公に禁止されてから、ゾウの個体数は増えています。それに伴って、農家の畑がゾウに荒らされるなどの被害件数も増加しており、生産者によっては「ハチのフェンス」を利用してゾウ対策をする事もあります。
ノースカロライナ州にあるデューク大学の研究者たちは、ゾウがドローンの音に反応するかを確かめるために、西アフリカのガボン共和国にある国立公園で実験を行いました。
ドローンによってゾウを監視し始めると、ゾウたちは鼻で糞を投げたりして、いかにも不満そうな態度を示しました。
実は、アフリカゾウがドローンに拒否反応を示したのは偶然ではなく、ドローンをハチの群れと勘違いしたためです。これにより、ゾウはハチとドローンを明確に区別する事ができないということが実験から分かりました。
デューク大学の研究者らは、論文の中で「野生のゾウたちの近くにドローンを飛ばしたところ、一部のゾウが反応を示し、ダスティングと呼ばれる、自己の汚物を鼻で投げつける行為を確認できた。
またその場所を移動したりして、ドローンから逃れようとする行為も見られた。ゾウはドローンを視覚的に認識しているのではなく、ドローンの音のみを聞いてそれを回避しているように見受けられた」と述べました。
ドローンを使用してゾウの生態を研究したい学者たちにとって、この研究結果は憂慮すべき事実です。一方、農業従事者などのゾウの被害から作物を保護したい生産者にとっては、朗報と言えるでしょう。
最もハチの羽音に似ているドローンはDJIのPhantomシリーズで、最も似ていないのが3DRのIRIS+という事が分かっています。
デューク大学の研究者らが今回の実験で検証したドローンの種類はごく一部であるため、どのドローンの音をゾウが最も嫌うかという点については、議論の余地があります。
人間が不快に感じる音に関しては、イギリスの神経科学者らによって、いくらかの研究がなされていますが、ゾウを撃退させる作用のあるドローンは、人間にとっても心地よい音とは言えないでしょう。